仏壇じまいとは?を改めておさらい。
正しい手順や費用相場、供養の選択肢について解説

「仏壇じまい」という言葉を耳にする機会が増えてきました。
少子高齢化や核家族化が進む中、実家のお仏壇を引き継ぐ人がいない、あるいは住宅事情から置き場所がないといった理由で、お仏壇を手放すことを検討する方が年々増えています。
しかしながら、長年ご先祖様を祀ってきたお仏壇を処分するというのは、気持ちの面でも手続きの面でもなかなか簡単にはいかないものです。
「どんな供養をすればいいのか」「費用はどのくらいかかるのか」と不安を感じている方も多いかもしれません。
ただ、正しい手順を踏めば、心穏やかにお仏壇を手放すことは十分に可能です。
ここでは、仏壇じまいの基本的な考え方から、具体的な手順、費用の相場、供養の方法、そして気をつけておきたい注意点まで、ひと通り見ていきたいと思います。
そもそも「仏壇じまい」とは?
仏壇じまいとは、自宅に安置していたお仏壇に対して閉眼供養(へいがんくよう)という儀式を行い、その後お仏壇を処分することを指します。
簡単に言えば、「お仏壇のある暮らしを終了する」ということです。
「墓じまい」という言葉はすでに広く知られていますが、仏壇じまいもそれと同じような流れで近年使われるようになった言葉と言えます。
お仏壇の買い替え時に古い仏壇を処分するケースとは異なり、新しいお仏壇を用意せず「お仏壇そのものを手放す」という点が大きな特徴です。
なお、閉眼供養やお焚き上げなど、買い替え時の処分方法については別の記事で詳しく解説しています。
ここでは「仏壇を手放す」と決めた方に向けて、判断から完了までの全体像をお伝えしていきます。
なぜ仏壇じまいが増えているのか
仏壇じまいが増えている背景には、いくつかの社会的な変化があります。
まず大きいのは、後継者の問題です。
かつては3世代同居が当たり前で、お仏壇は家の中心にあり、自然と次の世代へ引き継がれていきました。
ところが現在、3世代同居の割合は10%を下回るまでに減少しています。
子ども世代がマンション暮らしでお仏壇を置くスペースがない、そもそもお仏壇を引き継ぐ意思がないというケースも少なくありません。
空き家の増加も大きな要因です。
総務省の調査では空き家率は約13.8%にのぼっており、実家を売却・解体する際にお仏壇の処分が必要になるケースが増えています。
また、業界の調査によると、仏壇の保有率そのものが大きく下がっています。
2000年頃には約60%あった家庭の仏壇保有率が、2020年代には30〜35%程度にまで落ち込んでいるとされています。
こうした数字を見ても、仏壇じまいが「特別なこと」ではなくなりつつある時代の流れが見えてきます。
仏壇じまいを考えるきっかけ
仏壇じまいを検討する方には、いくつか共通するきっかけがあります。
- 実家を売却・解体することになった
- 親が施設に入所し、お仏壇を管理する人がいなくなった
- 親が亡くなった後、子ども世代の誰も引き取れない
- 引越し先にお仏壇を置くスペースがない
- 高齢になり、日々のお供えや掃除が負担になってきた
- 兄弟姉妹のあいだで引き取り手が決まらない
こうした事情を抱えた方が、やむを得ず仏壇じまいを選択するというのが実情です。
ただし、仏壇じまいを決断する前に検討していただきたいこともあります。
たとえば、コンパクトなモダン仏壇やミニ仏壇に買い替えるという方法もありますし、お位牌だけを手元に残して供養を続けるという選択肢もあります。
「お仏壇を完全に手放す」以外にも道があるということは、一度立ち止まって考えてみても良いかもしれません。
モダン仏壇やミニ仏壇については別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご覧いただければと思います。
仏壇じまいの手順
仏壇じまいは、おおまかに6つのステップで進めていきます。
ステップ1:家族・親族に相談する
仏壇じまいで最も大切な最初の一歩は、家族や親族との話し合いです。
ご自身の中で「もう手放すしかない」と思っていても、兄弟姉妹や親戚が同じ気持ちとは限りません。
実際に、長男が独断でお仏壇を処分したことで他の兄弟から強い反発を受けたという話は珍しくありません。
遠方に住んでいて日常的にはお参りしていない親族ほど、「処分は忍びない」という気持ちが強い場合もあります。
話し合いの際は、「処分する」という言い方よりも「供養の形を変える」という伝え方を心がけると、受け入れてもらいやすくなります。
位牌の扱いや、仏壇じまい後にどのような形で供養を続けるかも含めて話し合っておきましょう。
なお、お仏壇の継承や相続にまつわる問題については別の記事で詳しく解説しています。
ステップ2:菩提寺や僧侶に相談する
菩提寺(ぼだいじ)がある場合は、仏壇じまいの意向を早めに伝えておくことが大切です。
閉眼供養の日程調整だけでなく、位牌や御本尊の取り扱い、永代供養の可否など、お寺に確認すべきことはいくつもあります。
菩提寺に無断で仏壇じまいを進めてしまうと、お寺との関係が悪化する原因にもなりかねません。
長年お世話になってきたお寺ですから、きちんと筋を通しておくことをおすすめします。
菩提寺がない場合は、僧侶派遣サービスを利用する方法があります。
インターネットで「僧侶派遣」「お坊さん便」などと検索すると、定額で閉眼供養を依頼できるサービスが見つかります。
ステップ3:仏壇の中身を整理する
お仏壇の中には、位牌、御本尊(仏像や掛け軸)、遺影、過去帳、各種仏具など、さまざまなものが納められています。
これらを「手元に残すもの」と「供養して処分するもの」に仕分けする作業が必要です。
特に位牌については、お仏壇を処分した後も手元に残して供養を続けるという方が多くいらっしゃいます。
位牌の安置場所や置き方については別の記事で詳しく解説していますので、参考にしてみてください。
また、意外と見落としがちなのが、お仏壇の引き出しや奥のスペースに入っている書類や貴重品です。
古いお仏壇には隠し収納のようなスペースがあることもありますので、処分の前にすべての引き出しや棚を丁寧に確認しておきましょう。
ステップ4:閉眼供養を行う
仏壇じまいにおいて、宗教的に最も大切な工程が閉眼供養(魂抜き・お性根抜き)です。
閉眼供養とは、お仏壇や位牌に宿っている魂を抜き、「ただの家具・もの」の状態に戻す儀式のことです。
開眼供養(魂入れ)の逆の手順と考えていただければ分かりやすいかもしれません。
僧侶に自宅まで来てもらい、お仏壇の前でお経を読んでいただくのが一般的な流れです。
所要時間は30分から1時間程度で、特別な準備は基本的には不要ですが、ロウソクやお線香、お花、お供え物を用意しておくと良いとされています。
閉眼供養を済ませれば、宗教的にはお仏壇は「もの」の状態に戻ったことになります。
そのため、供養後のお仏壇は自治体の粗大ゴミとして出すことも含め、さまざまな方法で処分することが可能です。
閉眼供養は、気持ちの区切りをつけるためにも大切な儀式と言えます。
後になって「きちんと供養しておけばよかった」と後悔される方も実際にいらっしゃいますので、可能な限り行っておくことをおすすめします。
浄土真宗の場合は呼び名が異なる
ここで一つ補足しておきたいのが、宗派による違いです。
浄土真宗では「魂」という概念を用いないため、「閉眼供養」「魂抜き」とは呼ばず、「遷仏法要(せんぶつほうよう)」あるいは「遷座法要(せんざほうよう)」と呼びます。
「仏様に別の場所にお移りいただく」という意味合いで、儀式の流れ自体は他の宗派と大きくは変わりません。
また、浄土真宗では位牌ではなく法名軸や過去帳を用いるため、処分・整理の対象となるものが他の宗派とは若干異なります。
ご自身の宗派が分からない場合は、菩提寺に確認してみてください。
ステップ5:仏壇を処分する
閉眼供養が終わったら、いよいよお仏壇の処分です。
処分方法はいくつかありますので、後ほど詳しく解説します。
ステップ6:仏壇じまい後の供養方法を決める
お仏壇を手放した後も、供養を続ける方法はいくつもあります。
こちらについても後のセクションで詳しく見ていきます。
仏壇じまいの処分方法と費用の目安
仏壇の処分方法は、ざっくりと大きく分けると4つあります。
それぞれの特徴と費用の目安を見ていきましょう。
菩提寺に引き取ってもらう
菩提寺がお仏壇の引き取りに対応している場合、宗教的に最も安心感のある方法です。
お焚き上げまで行ってくれるお寺もあります。
ただし、すべてのお寺が引き取りに対応しているわけではありません。
また、お寺への搬入は自分で行う必要がある場合が多い点にも注意が必要になります。
費用はお布施として3万〜5万円程度が目安ですが、閉眼供養のお布施と合わせて対応してくれるケースもあります。
仏壇店に引き取りを依頼する
仏壇の搬出から処分まで一括で対応してくれる仏壇店も増えています。
閉眼供養を行う僧侶を紹介してくれるお店もあり、手続きがスムーズに進みやすいのがメリットです。
費用は仏壇のサイズにもよりますが、無料〜3万円程度が一つの目安です。
以前は「新しい仏壇の購入が条件」というお店が多かったのですが、最近は仏壇じまい専門の引き取りサービスを行う仏壇店も出てきています。
専門の処分業者や遺品整理業者に依頼する
搬出・運搬・処分をすべてお任せできるのが処分業者のメリットです。
閉眼供養の手配まで代行してくれる業者もあります。
費用は2万〜8万円程度で、お仏壇のサイズや搬出条件(階段の有無、エレベーターの有無など)によって変わってきます。
大型の金仏壇や搬出条件が複雑な場合には10万円以上になることもあります。
実家の片付けや遺品整理とあわせて依頼できる場合もあるため、実家じまいを同時に進めている方には便利な選択肢と言えます。
ただし、業者の質にはばらつきがあるのも事実です。
見積もりは必ず複数社から取り、料金の内訳が明確かどうかを確認しておきましょう。
自治体の粗大ゴミとして出す
閉眼供養を済ませたお仏壇は、宗教的には「もの」に戻った状態ですので、自治体の粗大ゴミとして出すことも可能です。
費用は500円〜数千円程度と最も安価です。
とはいえ、心理的な抵抗感がある方も多く、搬出は自力で行わなければなりません。
自治体によってはサイズの上限が設けられている場合もありますので、事前に確認が必要になります。
処分方法の比較
| 方法 | 費用の目安 | 搬出 | 供養の手配 |
|---|---|---|---|
| 菩提寺 | お布施3万〜5万円 | 自力 | お寺で対応 |
| 仏壇店 | 無料〜3万円 | 業者対応 | 紹介あり |
| 専門業者 | 2万〜8万円 | 業者対応 | 代行あり |
| 粗大ゴミ | 500円〜数千円 | 自力 | 別途必要 |
仏壇じまいの費用はトータルでいくらかかるか
仏壇じまいの総費用は、閉眼供養のお布施と処分費用の合計で決まります。
目安をまとめると、次のようになります。
- 費用を抑えたい場合:閉眼供養(1万〜3万円)+粗大ゴミ(500円〜数千円)で、合計1万5,000円〜3万5,000円程度
- 一般的な場合:閉眼供養(3万円前後)+仏壇店や業者への引き取り(2万〜5万円)で、合計5万〜8万円程度
- 永代供養も含める場合:上記に加えて永代供養料がかかり、合計10万円以上になることも
大型の金仏壇の場合は搬出や処分にかかる費用が高くなりやすく、処分費だけで10万円を超えることもあります。
なお、閉眼供養のお布施は3万円前後が相場とされていますが、これはあくまでも目安です。
菩提寺がある場合はお寺に「お布施の目安はおいくらでしょうか」と率直に聞いても失礼にはあたりません。
僧侶派遣サービスの場合は3万5,000円〜5万円程度の定額制が多く、自宅に来てもらう場合は別途お車代として5,000円〜1万円を包むのが一般的です。
仏壇じまい後の供養の選択肢
お仏壇を手放した後、供養をどうするかは多くの方が悩むところです。
実はいくつかの選択肢がありますので、ご自身の気持ちや生活環境に合った方法を選んでいただければと思います。
位牌のみを手元に残す
仏壇じまいをした方の中でも、位牌だけは手元に残すという選択をする方は多くいらっしゃいます。
小さな棚やステージの上にお位牌を安置し、日々手を合わせるという形です。
お仏壇がなくても位牌を祀ることは問題ありません。
位牌の安置場所や置き方については別の記事で詳しく解説していますので、あわせてご確認ください。
手元供養に切り替える
ミニ仏壇やフォトフレーム型の供養台、ミニ骨壺など、手元供養のための小さなアイテムを使って供養を続ける方法です。
リビングや寝室の一角に置けるコンパクトなもので、費用は数千円〜5万円程度で揃えられます。
手元供養については別の記事で詳しく解説していますので、興味のある方はそちらも参考にしてみてください。
永代供養をお寺に依頼する
お寺や霊園に位牌や遺骨の永代供養を依頼するという方法もあります。
お寺が代わりに供養を続けてくれるため、「自分の代で供養が途絶えてしまうのでは」という心配をされている方には安心できる選択肢と言えます。
費用は安置方法によって大きく変わってきます。
合祀(ごうし)の場合は3万〜10万円程度、個別安置の場合は10万〜50万円以上と幅がありますので、事前にお寺に確認しておくことをおすすめします。
位牌の永代供養に対応しているお寺も増えていますので、菩提寺に相談してみると良いかもしれません。
モダン仏壇やミニ仏壇に買い替える
厳密には「仏壇じまい」ではなく「仏壇のダウンサイズ」になりますが、大きなお仏壇を処分してコンパクトなモダン仏壇に切り替えるという方法もあります。
スペースの問題で仏壇じまいを検討しているのであれば、この方法で解決できる場合もあります。
モダン仏壇やミニ仏壇の特徴については別の記事で詳しく解説していますので、ぜひご覧ください。
仏壇じまいで気をつけたい注意点
仏壇じまいを進めるにあたって、いくつか注意しておきたいことがあります。
閉眼供養はできる限り行う
先ほども触れましたが、閉眼供養は気持ちの区切りをつけるための大切な儀式です。
後になって「きちんと供養しておけばよかった」と後悔される方もいらっしゃいますので、可能な限り行っておくことをおすすめします。
ご事情によっては難しい場合もあるかもしれませんが、僧侶派遣サービスなどを活用すれば、菩提寺がなくても依頼することが可能です。
家族の合意なく進めない
仏壇じまいは、祭祀財産(さいしざいさん)の処分にあたります。
法的には祭祀承継者(お仏壇を受け継いだ人)が判断できるとされていますが、家族や親族の感情は法律だけで割り切れるものではありません。
必ず事前に関係者全員に相談し、合意を得てから進めましょう。
お仏壇の相続や祭祀財産のトラブルについては別の記事で詳しく解説しています。
仏壇の中を必ず確認する
古いお仏壇には引き出しや隠し収納がついていることがあります。
預金通帳、保険証書、土地の権利証、古い写真など、重要な書類や貴重品が入ったままになっているケースも実際にあります。
処分する前に、すべての引き出しや棚、仏壇の裏側まで丁寧に確認しておきましょう。
処分前に写真を残しておく
お仏壇の写真を撮っておくと、後々の記録や思い出として残せます。
特に、仏具の配置や飾り方を記録しておくと、将来手元供養やミニ仏壇で祀り直す際に参考になることがあります。
処分業者の選定は慎重に
処分業者に依頼する場合は、見積もりを複数社から取ることをおすすめします。
料金の内訳が不明瞭な業者や、電話だけで即決を求める業者には注意が必要になります。
地元の仏壇店に相談するのが最も安心できる方法の一つです。
まとめ
仏壇じまいは、ご先祖様への感謝の気持ちを大切にしながら、供養の形を現代の暮らしに合わせて変えていくことだと言えます。
「お仏壇を手放す=供養をやめる」というわけではなく、位牌のみを残す、手元供養に切り替える、永代供養を依頼するなど、お仏壇がなくても供養を続ける方法はいくつもあります。
手順としては、家族との話し合い、菩提寺への相談、仏壇内の整理、閉眼供養、処分、そしてその後の供養方法の確立という流れで進めていきます。
費用は全体で5万〜8万円程度が一般的な目安ですが、処分方法や永代供養の有無によって幅がありますので、事前に情報を集めておくと安心です。
何より大切なのは、家族みんなが納得したうえで進めることかもしれません。
仏壇じまいは決して「後ろめたい」ことではなく、時代に合わせた供養の一つの形です。
迷いや不安があれば、まずは菩提寺や信頼できる仏壇店に相談してみてください。
きっと、ご自身とご家族にとって一番良い供養の形が見つかるはずです。
穏やかな気持ちで新しい供養の形を始められるよう、この記事が少しでもお役に立てれば嬉しく思います。
