お仏壇の御供えに重要な「餅」について。
形や色や個数などの飾り方や時期と注意点を解説

  • 2020.11.21
  • 2023.12.27

仏具 仏事などの解説

日本で暮らしている人にとっては馴染み深い「餅」ですが、それはご先祖様にとっても同様です。
現代でも折々でお仏壇に餅が飾られているのを目にすることがあります。

また、仏事には、その一つひとつに意味があるものですが、餅を飾ることも例外ではありません。

地域や宗派によって、餅の形・色・個数などに違いがあり、飾り方にも特徴が見られます。
そして、餅はいつでも飾るというわけではなく、特定の時期に飾ることが多い点も覚えておきたいポイントです。

この記事では、お仏壇の御供えには欠かせないお餅について、お仏壇を守る人が知っておきたい知識・注意点などをご紹介します。

餅はどのくらい重要な御供えなのか

餅は、日本人なら誰もが知っている食べ物の一つですが、毎日欠かさず食べるという人は少数派でしょう。
これは昔の人も同じで、むしろ「普段はなかなか食べられない」ぜいたく品だったことが、お仏壇の御供えに用いられている大きな理由と言えそうです。

お仏壇への御供え物として、餅はランクが高い食べ物

お仏壇に御供えするものは、大きく分けて「五供(ごくう)」と呼ばれ、御供え物の基本とされます。
具体的には、以下の5つが該当します。

  • お香を焚くことで生まれる「香」
  • ご先祖様の心を慰める「花」
  • 仏の智慧の象徴である「灯明」
  • 心身を清めのどの渇きをいやす「浄水」
  • 主食となる「飲食」

餅は、この中では飲食に含まれ、さらに飲食は食べ物の種類によって序列があります。
最上位は仏飯で、普段から食べているものを御供えすることが大切であると分かります。

餅は仏飯に次ぐ優先順位となっており、その後にお菓子・果物と続きます。
このような順序になっているのは、餅に特別な意味があったからです。

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餅は昔の人にとって「ごちそう」だった

多くの人が餅を目にする時期の一つに「お正月」があり、お正月に作る雑煮には、餅を入れて食べる習慣があります。

雑煮には山の幸・海の幸がたくさん入っていて、それを食べるだけでも十分健康になれそうなものですが、昔の人にとって何より楽しみだったのが、雑煮に入れる餅でした。

古くは餅に稲の神様が宿っていると考えられていた時代があり、特別な食べ物として敬われてきた歴史があります。
よく、汁物・うどんなどに入れた餅を「力餅」などと言いますが、実際に「新しい命をいただく」意味合いで、餅が食べられていた時代もありました。

現代のように、スーパーで気軽に餅が食べられるわけではなく、いわゆるハレの日にしか餅が食べられない時代が長く続いていました。
餅は、古来より特別な意味が込められていた食べ物だったのです。

「四十九日餅」が持つ重要な意味

仏事で特に重視されるひとつが「四十九日」の供養です。
亡くなった人の「来世の行き先」が決まる、重要な意味を持ちます。

そんな四十九日では、死者を手助けする餅として「四十九日餅」というものを供える風習があります。
多くの場合、四十九日では「傘餅」と呼ばれる餅を作ります。

小さく丸めた餅を7個、六角形とその中心を作るように並べ、上に7段乗せて49個を積み上げます。
その後、仕上げに「のし餅」と呼ばれる、平らな円形の餅を乗せて完成です。

四十九日餅を用意する理由は諸説ありますが、四十九の餅で死者の身体を支え、故人が「来世に向かうための準備を助ける」意味でよく知られています。
仮に死者が地獄へと行ってしまった場合、身体のあちこちに釘を刺されるため、その釘の痛みを防ぐために用意するとも言われています。

より古い由来をたどってみると、インドで餅を使った供養が行われていて、それが日本に伝わったという説もあります。
ただ、共通しているのは、やはり死者の霊を慰めること・守ることであり、遺族の想いを伝えるために餅が使われていることは変わりません。

どんな餅をいくつ飾るのが基本?形・色・個数について

一口に餅といっても、日本には様々な種類の餅があり、形も色も違います。
また、毎年のように餅をたくさんお仏壇に飾ることはなく、必要な個数のルールが全国で統一されているわけではありません。

続いては、餅をお仏壇に飾る場合、具体的にはどのようなものを、どれくらい用意すればよいのかについてご紹介します。

形は丸形が主流

お仏壇に飾る餅の形状を見てみると、切り餅のような四角い形状のものは少なく、丸形・円形のものをよく見かけます。
鏡餅の形状に代表されるように、御供え物の餅は丸い形が好まれます。

四十九日餅ほどのボリュームではありませんが、丸形で平べったい餅「おけそく」を、積み重ねて飾るケースもあります。
夏場など暑い時期は、生ものである餅が傷まないよう、砂糖で餅を模したものを飾ることもあります。

中身については、原則として餡子などが入っていない餅だけを選びます。
また、お仏壇もしくは仏具に乗る量・サイズを選ぶことも大切です。

色は白が原則も、慶事では別の色も見られる

お仏壇に飾る餅の色は、白を選ぶのが原則です。
基本的に弔事のみで飾るため、四十九日法要はもちろん、初盆・一周忌・三回忌までは白を選ぶものと考えておけばよいでしょう。

しかし、それ以外の法要や祝い事の席では、紅白の餅を選びます。
特に、新しくお仏壇を購入して自宅に安置した場合は、紅白の餅が望ましいです。

地域によっては、黄色と白の餅を用意して、忌明け法要が終わったことを報告する意味で親族に持ち帰ってもらう風習もあります。
黄色ではなく緑色の餅を用意するところもありますから、法要などで初めて餅を用意する場合は、菩提寺・近所の人などに確認することをおすすめします。

個数は宗派やお寺によってまちまち

餅の個数については、四十九日のようにはっきりと個数が分かっている法要こそあるものの、一般的な法要ではそれほど個数を重要視していない家も珍しくありません。

お仏壇の大きさや、家に足を運ぶ親族の人数など、諸々の事情を勘案して決めれば問題はないでしょう。

ただ、一般的には4~12個の間で用意することが多く、親族があまり餅を食べないようであれば、飾りだけで済ませることもあります。
お仏壇・仏具のサイズによって、乗せられる個数にも限りがありますから、あまり無理をして個数を稼ぐ必要はありません。

どうしても不安であれば、お世話になっているお寺に確認した上で、正しい個数を把握しておくと安心です。
また、奇数・偶数など数に対するこだわりがあったり、所定の大きさが定められていたりする場合は、餅屋に別途発注をかけることも想定しておきましょう。

餅を飾る時期と、飾る際の注意点について

餅は、よほど故人が好きだった場合を除いて、毎日お仏壇に飾るタイプの食べ物ではありません。

もともと「ハレの日」に食べる食べ物であることから、普段からお仏壇に御供えする必要はありませんし、長い間同じ餅を御供えするのは衛生面で問題があります。

餅をお仏壇に御供えするなら、いつ飾ればよいのか、大まかな時期を押さえておけば安心です。
また、どのような形で飾ってもOKというわけではなく、飾る際に一応のルールはありますから、そちらも押さえておきましょう。

基本的には「お盆・正月・法事の日」だけ飾ると覚えておけばよい

餅をお仏壇に御供えする時期は、仏事として重要な時期・家族にとって重要な時期に限られます。
具体的な時期を洗い出してみると、お盆・正月・法事の日が該当します。

以下に、必要とされるそれぞれの時期にフォーカスして、詳しくご紹介します。

お盆

お盆の場合、特に初盆で重要とされます。
初盆では、提灯から飾り物まで様々なものを用意しなければなりませんが、餅に関しても用意しておくのが望ましいでしょう。

丸餅を用意するのが基本ですが、お盆には多くの霊がいらっしゃることから、たくさんの霊を慰めるために白団子・ぼたもちを用意する家もあります。
数の制限はなく、置ける範囲で用意すれば問題ありません。

正月

おめでたい日ということもあって、どの家でも鏡餅を飾るのが正月です。
それはお仏壇も例外ではなく、正月用の鏡餅で、お仏壇に飾れるサイズのものを用意します。

人によっては、お仏壇に鏡餅はふさわしくないと考えるかもしれませんが、もともと餅自体が飲食として認められている以上、鏡餅はダメだというのは理にかなっていません。

気にする家族がいるなら控えても差し支えありませんが、そうでないなら玄関やリビングに飾るのと同様、お仏壇にも鏡餅を飾りましょう。

ただし、喪中の場合、鏡餅を飾ることはNGです。
お正月において鏡餅を飾るのは、歳神様をお招きすることが大きな目的であることから、門松やしめ縄などと同様に控えましょう。

もちろん、餅を食べること自体は問題ありません。

法事の日

四十九日・一周忌・三回忌のように、仏事として重要な意味を持つ法事であれば、餅を飾るのが基本です。
しかし、毎年法事を行っているのであれば、大々的に人を呼ばない限り、そこまで餅にこだわる必要はありません。

とはいえ、餅を御供えすると親族や参列者に良い印象を与えられます。
用意した餅は、参列者にお土産として渡せますし、みんなで仲良く食べることもできるからです。

飾ることを強く意識する必要はなく、四十九日餅のような大掛かりなものでなくても、大福などお菓子感覚で食べられるものを用意しておくとよいでしょう。
参列者みんなが喜んでくれることを第一に考え、必要に応じて用意すれば問題ありません。

飾る場合、原則として専用の仏具を使う

餅をお仏壇に飾る場合、少量であればそのまま置いても差し支えありませんが、ある程度まとまった量があるなら仏具を使います。
こちらは、宗派によって使う仏具が違うため、それぞれをご紹介します。

高月・高坏(たかつき)

食べ物を盛るための仏具で、高い脚の上にさかずきが乗っているような構造となっています。
多くの宗派では、この仏具に餅を飾ります。

デザインや大きさは、それぞれの高月によって変わってくるため、自分の家にある大きさに合わせたサイズの餅を用意します。
かんたんに済ませるなら、白もしくは紅白の餅を、鏡餅のように重ね合わせて飾るとよいでしょう。

そのまま飾ってもよいのですが、より丁寧に飾るなら、半紙を折って懐紙を作ります。
お盆・法事に関しては、家族が亡くなった時期に応じて意味合いが変わってくるため、厳密には折り方を使い分けます。

凶事の場合は、折り目が左から右上に向かって伸びていくように半紙を折ります。
吉事の場合は逆で、折り目が右から左上に向かって伸びていくように半紙を折ります。

ただし、これらが真逆の意味になっているケースもあるため、あまりこだわらなくても大丈夫です。
平らな方をお仏壇に向け、とがった方が参拝する側に向くよう注意しましょう。

供花・供筍(くげ)

多くの宗派は高月を使いますが、浄土真宗の場合は「供花」と呼ばれる仏具を使います。
大谷派と本願寺派でデザインが若干異なり、大谷派は八角形の形状・本願寺派は六角形の形状をしています。

これらの上に餅を飾るのですが、数は左右同じであれば、特段ルールはありません。
お寺によっては厳密に数が決まっていることもありますから、事前に確認しておくとよいでしょう。

正月なら、小さめの鏡餅をそのまま飾っても差し支えありません。

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カビを生やさないよう保存に注意

市販されている餅は、包装パッケージの中が無酸素状態になっているため、賞味期限を守ってパッケージを破かない限り、カビのリスクはありません。
しかし、お店で新鮮な餅を買ってきた場合や、自分で餅をついた場合は、保存状態に気を配らないとカビの影響を受けてしまうおそれがあります。

もし、生の餅をそのまま保存しようと思うのであれば、冷蔵もしくは冷凍保存を選びましょう。
冷蔵庫に保存するなら、保存袋などに小分け保存し、からし・わさびなど強めの香辛料を入れておくとカビを防げます。

冷凍保存の場合は、ごはんと同じでラップにくるみ、保存袋に入れて冷凍します。
長く保管していると味が落ちますから、なるべく早く食べることをおすすめします。

おわりに

お仏壇への御供え物として、一般的に広く知られている餅ですが、形・色・個数に関することを知らないまま御供えしていた人も多いのではないでしょうか。
取り扱い方法が厳密に決まっているわけではありませんが、由来や飾りつけ・保存方法などを知っておくと、いざ準備する際に安心です。

餅が必要となるタイミングは、ある程度決まっているため、毎日気張って餅を御供えする必要はありません。
大事な場面で必要な数だけを揃えるよう心掛ければ、ご先祖様に対する礼を失することはないでしょう。

ただ、餅の色が違う地域や、仏具が特殊な宗派もあるため、不安な場合はお寺に確認してから準備を進めた方が賢明です。
餅を準備する日は一年の中でもそう多くありませんから、失敗のないよう事前に相談することが肝心です。

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  • 公開日:2020.11.21
  • 更新日:2023.12.27

カテゴリ:仏具, 仏事などの解説

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