今更聞けない「浄土真宗」の西と東の基本。
本願寺派や大谷派での仏壇や仏具の違いと見極め方

自分の家の宗派が浄土真宗の方は、おそらくお仏壇・仏具を購入しようと仏壇店へ足を運んだ際に「お東ですか?お西ですか?」などと聞かれる機会があると思います。

しかし、現代では浄土真宗という事は知っていても、本願寺派、大谷派などの細部まで知らないという方も増えてきています。
さらには、自分の家がどちらかを知っていたとしても、どのようなデザインのお仏壇・仏具を購入すべきか迷わない人は、さらに少数派なのではないでしょうか。

浄土真宗は、歴史的背景から大きく2つに分かれ、「本願寺派」と「大谷派」と呼ばれています。
実際には、この2つだけではなく、他にも高田派・佛光寺派などいくつかの宗派に分かれています。

ただ、多くの場合、浄土真宗として特に有名なのが、先ほど挙げた2宗派になります。
西本願寺を本山とする浄土真宗 本願寺派(西)、東本願寺を本山とする浄土真宗大谷派(東)の二派で、寺院数は一二を争っています。

浄土真宗以外の宗派の場合、多くは○○宗△△派などでお仏壇や仏具ががらりと変わることはそうそうありえません。
あったとしても、本尊や脇侍などが少し変わるといったところかと思います。

しかしながら、浄土真宗に至ってはこの東西で、仏壇から仏具まで全てが異なるといっても良いほど変わります。

とりわけ難しくしているのが、これらの宗派は、それぞれでお仏壇・仏具のデザインが異なるものの、パッと見ただけではお仏壇をよく知る人でないと同じようにも見えてしまうのです。

そのため、実際にお仏壇・仏具を買い揃えようとすると、自家の宗派についてそれほど詳しくない人は、途端に混乱してしまいます。
最初に書いた、浄土真宗です。と言うと、東か西かと仏壇店で必ず聞かれるのはこういう理由からです。

そこで、この記事では、西・東それぞれで異なるお仏壇・仏具の違いと見極め方について、なぜ浄土真宗が東西に分派したのか、その歴史的背景も踏まえてご紹介します。

実はコツやポイントさえ抑えておけば、選び方自体はそう難しくありません。
現代ではあまり気にする必要のないものも少なからず存在していますが、できれば知っておいた方がよいでしょう。

そもそも、浄土真宗が東西に分かれているのはなぜなのか

西・東それぞれの特徴を述べていく前に、そもそもどうして浄土真宗が東西に分かれてしまったのか、その背景についてお伝えします。
現代こそ、東西に分かれた影響はそれほど大きくないものの、分裂当初は国の歴史が大きく変わるような大問題だったのです。

きっかけは、織田信長と石山本願寺との戦いから

そもそも、浄土真宗が二派に分かれた理由は、織田信長が原因でした。
学生時代に日本史を学んだ方であれば、一度は耳にしたり記憶が残っている方も多いかもしれません。

1570年のこと、信長は全国統一を目指し、戦国時代最大の宗教的武装勢力であった石山本願寺を落とすべく合戦を始めましたが、僧侶・門徒たちの結束は固く、なかなか攻め落とせずにいました。

事態がおさまるまでに10年以上の歳月を要しており、信者たちの阿弥陀如来への信心は凄まじいものがあったと分かりますが、結果的にいったんは和睦の方向へと進みます。

しかしこの時、石山本願寺の中でも、意見は二つに分かれていたのです。

和睦に際して意見が真っ二つに分かれたのがきっかけで西本願寺が生まれる

石山本願寺は、長年降伏せず交戦していたため、信長は天下統一の妨げになると判断し、和睦を提案します。
当時、石山本願寺における法主は顕如で、三男の准如とともに和睦を受け入れる方針でしたが、長男の教如は強く反対していました。

これは、必ずしも教如が好戦的だったわけではなく、教如が織田信長の残虐な性質を見抜いていたからだと言われています。
実際、後に起こった本能寺の変で信長が明智光秀に討たれなければ、浄土真宗は壊滅していたという説もあるほどです。

ともかく、意見の相違から顕如と教如は関係を絶っていた時期があり、新しい宗主として教如は選ばれず、三男の准如が後継者となりました。
こうして、現在の西本願寺が生まれましたが、当然ながら教如はこの決定に不服がありました。

内紛に目を付けた徳川家康が東本願寺を生み出す

天下統一を果たした豊臣秀吉は、信長の本願寺とのいざこざを知っていたため、あえて関わることはありませんでした。
しかし、徳川家康の時代になると、家康は東本願寺の別立を教如に約束したため、結果的に教如は「もうひとつの本願寺」の法主として認められます。

この分裂以降、本願寺は東と西に分かれて独自の考えを展開するようになりました。
その結果、仏具・位階・荘厳・お経の読み方まで違った二つの宗派が生まれてしまったのです。

浄土真宗 本願寺派(西)の仏壇・仏具の特徴と見極め方

まずは、浄土真宗の中でも、最も多くの寺院を構える浄土真宗本願寺派(西)のお仏壇・仏具について、各種特徴や見極め方をご紹介します。

配置自体は東とそう変わらないものもありますが、名称やデザインが異なっている部分が多いため、全く同じものを転用することは基本的にないものと考えてよいでしょう。

仏壇のデザインについて

浄土真宗において、在家信者が安置すべきお仏壇のデザインについては、それほど厳密に定義されているわけではありません。
そのため、モダン仏壇・家具調仏壇を選んでも、全く問題ありません。

ただ、本家のお仏壇を新調するなどの理由で金仏壇を選ぶ場合は、一点だけ注意事項があります。
それは「金色の柱」のお仏壇を選ぶことです。

金仏壇は古くからあるデザインのため、ご本尊などを安置するスペースには「宮殿(くうでん)」と呼ばれる装飾が施されています。
お寺では本堂に相当するもので、屋根部分を支えるのに用いられるのが柱となります。

この柱部分が金色に装飾されているのが、浄土真宗本願寺派の特徴です。
一方の大谷派の場合は、黒や朱が入ったお仏壇となるので、見た目的には本願寺派の方がより金色に近くなります。

ただ、関西などでは唐木仏壇が主流となっている地域もあることから、最終的には各家の好み・考え方に左右されるところです。

ご本尊と脇侍について

浄土真宗のご本尊は、例外なく阿弥陀如来です。
ただ、東と西でデザインが異なり、浄土真宗本願寺派では「西阿弥陀」と呼ばれるデザインを採用しています。

掛け軸でご本尊を選ぶ場合は、後光の線がきめ細かいものを選び、後光が8本の光からなるのが西用です。
また、仏像を選ぶご家庭の場合は、放射光と唐草の光背がデザインされているものを選ぶのが基本となっています。

放射光というのは、御仏の頭部後ろから光明が差すように見えるデザインのことで、西阿弥陀の場合、身体が唐草のようなオーラをまとうデザインの仏像もよく見かけます。

言葉だけではイメージしにくいと思いますので、ネット通販で探すなら西阿弥陀というキーワードで検索し、実店舗では西向けのご本尊を探しているとスタッフに伝えればよいでしょう。

脇侍は、向かって左に「蓮如上人」・右に「親鸞聖人」をお祀りします。
やや失礼な覚え方ですが、右を向いている人が蓮如上人・左を向いている人が親鸞聖人と覚えると分かりやすいはずです。

こちらも基本的には掛け軸を選びますが、仏像を選ぶケースもあります。

天井の仏具について

お仏壇の天井に仏具を吊り下げるのは本格的に祀る際や、お盆時などが多くなりますが、浄土真宗本願寺派では一般的な他の宗派でも祀られる「瓔珞(ようらく)」「灯籠(とうろう)」の二種類と主に浄土真宗だけで使われる「輪灯」があります。

瓔珞というのは、もともと真珠の首飾りが語源と言われており、宝石で作ったシャンデリアのような仏具ですが、こちらは特に浄土真宗だからといって変わりはなく、左右にそれぞれ一対で飾り、お仏壇を荘厳する(きれいに飾り付ける)意味合いがあります。

一方、灯籠については、他の宗派でも用いますが、浄土真宗では金色の灯籠を使います。
ただ、この金灯籠は西と東で使われるものがわかれており、本願寺派など西では足の部分には「猫足」と呼ばれるデザインが用いられます。

画像のように、足先に行くにつれてネコの足のように丸まってしぼむような造りとなっているのが特徴です。

輪灯に関しては、藤の花や菊の花が用いられており、大谷派で使われるものと比べると華やかで荘厳な造りとなっています。

基本となる仏具の色について

お仏壇には、金の装飾を施しているものが多い浄土真宗 本願寺派ですが、例えば三具足や五具足のような基本的な仏具、特に花立や火立などに関しては、黒色をベースとしたシックなデザインのものが用いられます。

高価なものでは真鍮製の仏具を見かけますが、もちろんこちらを選んでも差し支えありません。
このような色合いの仏具を選ぶことで、かえってお仏壇や荘厳目的の仏具がより華やかに見えるため、あえてそのような色合いを採用したのではないかと推察されます。

その他の仏具について

浄土真宗 本願寺派では、おもちやお菓子などをお供えするために、他の宗派のように供物台や高月ではなく、「供花」という仏具を使います。
そして、この供花も東西でつかわれるものが分かれており、本願寺派などの西では「六角供花」が用いられます。

足の部分が六角形であることからこのように呼ばれています。
大谷派にも似ている仏具があり、大谷派の方は「八角」という名称で、形状も若干異なります。

その他、細かいところを挙げれば西と東で異なるところがいくつかあったりしますが、基本はネットショップでも仏壇店でも、本願寺派用、大谷派用としっかり明記されていますので、それに沿って選べば問題ありません。

真宗 大谷派(東)の仏壇・仏具の特徴と見極め方

続いては、真宗 大谷派(東)のお仏壇・仏具について、特徴や見極め方をご紹介します。
西の本願寺派が「浄土真宗 本願寺派」と呼ばれるのに対し、東の大谷派は「真宗 大谷派」と呼ばれる事が多くなります。

浄土真宗大谷派と記載されている事もありますが、多くは真宗 大谷派と呼ばれる事が多くなりますので、真宗?また違う宗派?と思ってしまうかもしれませんが、浄土真宗大谷派の事を差しますので、少し注意しておきましょう。

仏壇や仏具に関しては、東西という名の通り、西の本願寺派と対比して判断するとより分かりやすくなりますから、できれば本願寺派のデザインとの違いも頭に入れつつ覚えておきたいところです。

仏壇のデザインについて

真宗 大谷派でも、浄土真宗としてご本尊・脇侍を用意していれば、お仏壇の種類にこだわらないお寺がほとんどです。
ただ、こちらも本来は金仏壇を選ぶのが基本となっており、お仏壇の中にある柱は黒地に金装飾が施されていたり、朱の金具が使われていたりします。

また、黒を基調としたデザインは比較的宗派を問わず好まれているため、地方によっては他宗派でも黒柱の金仏壇が選ばれることもあります。
関東などでは唐木仏壇を使うところもあり、厳密に選ぶ際のルールが定められているわけではないと言えそうです。

西と東の金仏壇を見分けるには、本体も柱も装飾も金ばかりなのが本願寺派、柱や装飾に黒や朱の色が混ざっているのが大谷派となります。
余談ですが、管理人は金ピカは本願寺派、金・朱・黒が大谷派と覚えていました。

ご本尊と脇侍について

真宗 大谷派でも、阿弥陀如来がご本尊となります。
本願寺派の項目でも説明していますが、東と西でデザインが異なっており、大谷派では「東阿弥陀」と呼ばれるデザインが主流です。

掛け軸でご本尊を選ぶ場合は、後光の光線部分が広く取られているものを選び、後光が6本の光からなるのが大谷派です。

仏像を選ぶご家庭の場合は、放射光の光背のみがデザインされているものを選びます。
西阿弥陀の場合は、放射光と唐草がセットになったものを選びますが、東阿弥陀は放射光のみで構いません。

こちらも本願寺派と同じように、実際に現物や画像を見て探した方が早いので、ネット通販で探すなら東阿弥陀というキーワードで検索し、実店舗では東向けのご本尊を探しているとスタッフに伝えましょう。

脇侍は、左に「九字名号」・右に「十字名号」をお祀りします。
ここは大谷派は他の宗派と異なり非常にわかりやすく、脇侍は文字だけの掛軸となっています。

それぞれ、阿弥陀如来とその功徳を表したもので、高僧たちの信念が記されています。

九字名号には「南無不可思議光如来(なむふかしぎこうにょらい)」・十字名号には「帰命尽十方無碍光如来(きみょうじんじっぽうむげこうにょらい)」と書かれています。

ただ、要するにこれらは「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」とあまり意味は変わらず、阿弥陀如来への帰依を示すものですから、在家信者はあまり深く考えずに脇侍を選んで差し支えないでしょう。

天井の仏具について

真宗 大谷派でも、本願寺派と同様で、天井に飾る仏具として、瓔珞、灯籠、輪灯(りんとう)を用います。
瓔珞以外では、いずれも大谷派特有の特徴がありますから、覚えておくと仏具を選ぶのに役立ちます。

まず輪灯ですが、こちらは本来火を灯すために使われていたもので、輪がついた油皿を天井に取り付けて使うものです。
実際に火を灯すことはありませんが、デザイン自体は今も変わらず使われています。

灯籠に関しては、本願寺派と同じく金灯籠を使いますが、丁足と呼ばれるデザインのものを選ぶ必要があります。
木の葉に角がついた部品が折れ曲がっていて、紋もきれいな形をしているのが特徴的です。

仏具の色について

お仏壇の色に黒や主が多い真宗 大谷派では、その分、代わりに仏具に金色を取り入れています。
三具足・五具足などでは金色の装飾が多く、火立ては鶴と亀を模した美しいデザインが目立ちます。

ただ、全ての仏具に金色を取り入れる必要はなく、お仏壇の種類によって自由に選ぶことができます。

その他の仏具について

真宗 大谷派では、本願寺派で用いられていた六角と同じ用途で、「八角(八角供花)」という仏具を使います。
名前の通り、足の部分が八角形となっていて、本願寺派と形状が若干異なる点に注意が必要です。

おわりに

浄土真宗が東と西に分裂したのは、国の行く末を考えた上で避けられない出来事だったのかもしれません。
しかし、実際に分裂してからの細々としたルール変更は、開祖である親鸞の教えとはおよそ関係のないところで進んでしまいました。

現代では、そのような事情を感じさせないくらいに浄土真宗の宗派は融和しており、教団連合なども生まれています。
ただ、長年続いた敵対関係を拭うのはそうたやすいことではなく、未だに信者間で対抗心をあらわにするケースもあるようです。

とはいえ、お仏壇・仏具を購入する門徒の立場からすれば、そのような内紛など全く関係のない話です。
選び方や種類の違いを最低限押さえた上で、自由に好きなデザインのものを選びましょう。

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