他家の仏壇にお参りする時のマナー – 服装・手土産・数珠

親しかった方や、その家族が亡くなったという知らせを受けて、お線香をあげに伺おうと考えている方も多いかもしれません。
とはいえ、他家の仏壇にお参りするのは初めてで、どんな服装で行けばよいのか、何を持っていけばよいのか、部屋での振る舞い方まで分からず不安になる、という声も少なくありません。
気になる事、覚えることが多いように見えますが、大切になってくるのが遺族と故人を思いやる気持ちです。
そこさえ外さなければ、細かな作法がたとえ完璧ではなかったとしても、大きな失礼になることはまずありません。
ここでは伺う前の準備から仏壇の前での立ち居振る舞い、香典が必要かどうかの判断まで、他家を訪ねてお参りする一連の流れを順を追って見ていきたいと思います。
他家の仏壇にお参りする前に確認したいこと – 弔問と日常のお参りはどう違う?

同じ「お参りに伺う」でも、故人が亡くなってまもない時期に訪ねるのか、時間が経ってから訪ねるのかで、ふさわしい服装や持ち物は変わってきます。
まずは、今のご自分がどの段階の訪問にあたるのかを確かめておくと、この先の準備で迷いにくくなります。
弔問と、時間が経ってからのお参りの違い
弔問(葬儀の前後に、遺族のお宅を訪ねてお悔やみを伝えること)と、命日やお盆、近況報告などで訪ねる日常的なお参りとでは、求められる装いや持ち物の重さが違います。
弔問はまだ悲しみの深い時期の訪問ですから、服装も持ち物もより改まったものになります。
一方、四十九日を過ぎてしばらく経ってからのお参りは、堅苦しくなりすぎず、故人を偲ぶ気持ちを穏やかに届ける場という色合いが強まります。
自分がどちらの場面で伺うのかによって、これから先の準備の目安が変わってきますので、まずはそこを整理しておきましょう。
訪ねる時期の目安(通夜前・葬儀後・四十九日後)
弔問に伺う時期は、通夜の前や訃報を聞いた直後、葬儀のあと、四十九日を過ぎてから、と段階によって装いや持ち物の目安が変わってきます。
葬儀のあとに改めて弔問するなら、葬儀後3日〜1週間ほど経ってから四十九日までが一つの目安とされています。
というのも、葬儀の直後は遺族も後片づけや手続きに追われ、心身ともに落ち着かないことが多いためです。
四十九日を過ぎて訃報を知ることもありますが、その場合も慌てる必要はありません。
遅くなってしまったことを気にするより、遺族の都合を優先して伺う日を相談するほうが、かえって相手の負担になりません。
事前連絡と、長居しないという気づかい
どの時期であっても、約束なしに突然訪ねるのは避けなければなりません。
遺族にも体調や来客の予定、心の準備がありますので、まずは電話などで弔問の意向と希望の日時を伝え、先方の都合を確認してから伺うのが基本になります。
お参りがすんだあとは、長居をせずに引き上げる配慮も大切にしたいものです。
故人の思い出話に花が咲くこともありますが、遺族が疲れているそぶりを見せたら、切り上げどきだと受け取って早めにおいとまするくらいがちょうどよいといえます。
訪問する時期で変わる服装のマナー

服装は、最も悩まれる方が多いポイントとも言え、喪服を着るべきか平服でよいのか判断がつかないという相談もよく寄せられます。
先に大枠をお伝えすると、時期が進むにつれて装いは少しずつくだけていく、というのが基本の流れです。
派手な色や肌の露出はもちろん、光るアクセサリーを控えるという点だけは、どの時期においても共通する心づかいになります。
通夜前・訃報を聞いてすぐの弔問
訃報を聞いてすぐ、通夜の前に駆けつけるような場合は、あえて喪服を着ないのが通例とされています。
これは、きちんとした喪服をすぐに用意して現れると、まるで不幸を予期して備えていたように受け取られかねない、という考え方があるためです。
黒やグレー、紺など落ち着いた色の平服を選び、急いで駆けつけた気持ちが自然に伝わる装いが向いています。
葬儀後から四十九日までの弔問
葬儀のあと、四十九日までの間に改めて伺う場合は、略式の喪服から地味な平服のあたりが目安といえます。
男性ならダークスーツやジャケットに白いシャツを合わせ、控えめな色のネクタイと黒の革靴でまとめると落ち着いた印象になります。
女性は地味な色のワンピースやアンサンブルなどが無難で、アクセサリーは結婚指輪や一連のパールにとどめておくと安心です。
四十九日を過ぎてからの日常的な訪問
四十九日を過ぎ、命日やお盆など日常的なお参りで伺うころには、普段着でも差し支えなくなります。
ただし、あくまで仏壇に手を合わせに行く場ですから、ジーンズやサンダルといったラフすぎる格好や、明るく派手な色は避けたほうが無難です。
落ち着いた色味のきれいめな服装であれば、堅くなりすぎず、けれども礼を欠かない装いになります。
手土産とお供え物は何を選べばいい?

手土産が要るのか要らないのか、時期によって意見が分かれる部分ではありますが、手ぶらで伺うより何かひとつ持参したほうが、弔いの気持ちは伝わりやすくなります。
もっとも、大切なのは供養しようとするお気持ちのほうで、品物の値段や格で測るものではありません。
そこは気負わず、無理のない範囲で選んでいただければ十分です。
好まれる消え物と、控えたほうがよい品
お供え物には、使えばなくなる、いわゆる消え物が古くから好まれてきました。
線香やろうそく、日持ちのする菓子や果物、お茶や海苔といった食品などが、その代表格になります。
逆に、日が浅い時期には控えたほうがよいとされる品もあります。
傷みやすい生ものや、殺生を連想させる肉や魚、お祝いの席を思わせるお酒、香りの強すぎる花、派手な包装などです。
これらも絶対にいけないというわけではありませんが、時期が浅いうちは避けておくと無難といえます。
お供えそのものの選び方には、弔問かどうかを問わず共通する部分も多くあります。お菓子や果物を中心とした基本的な考え方は下記の記事でまとめていますので、あわせて目を通しておくと品選びで迷いにくくなります。
- お仏壇の御供え。お菓子や果物は自由で故人の好きなモノでも大丈夫?
- お仏壇に御供えするものは、古来より相場が決まっていました。 しかし、価値観が多様化した現代においては、仏教的価値観よりも故人の意向を尊重する …
手土産にお線香を選ぶ時のポイント
何を持っていくか迷ったときに選びやすいのが、進物用のお線香です。
毎日使うものですし、宗派を問わず受け取ってもらいやすいのが選ばれる理由になります。
選ぶ際は、香りが強すぎない穏やかなものを目安にし、贈答用に整えられた化粧箱入りのものを選ぶと見栄えも整います。
価格帯は1,000円〜1万円程度と幅がありますので、故人との関係の深さに合わせて選べば問題ありません。
お店で進物用と伝えれば、次に触れる表書きの掛け紙まで整えてもらえます。
のし(表書き)の使い分けと御霊前・御仏前
お供え物や香典には掛け紙をかけ、表書きを添えるのが一般的です。
品物であれば「御供」や「御供物」、現金を包むなら四十九日より前は「御霊前」、四十九日を過ぎてからは「御仏前」と書き分けるのが基本になります。
ただし、浄土真宗では少し扱いが変わります。
浄土真宗には、亡くなるとすぐに仏になるという臨終即往生(りんじゅうそくおうじょう。命を終えると同時に極楽に生まれ、仏になるという教え)の考えがあるため、四十九日より前でも御仏前を用いるのが一般的とされています。
相手の宗派が分かっているなら合わせておくと丁寧ですが、分からなければ品物への表書きを御供としておくと当たり障りなく収まります。
数珠は必要?忘れた時とお参りでの扱い

数珠がないとお参りしてはいけないのでは、と気になる方もいるかもしれません。
実際、持参できるのであれば持参するのが望ましいのは確かです。
しかしながら、忘れてしまっても失礼にあたるわけではありませんので、まずは安心してください。
相手の宗派が分からない、あるいは自分と違うという場合でも、宗派を問わず使える略式数珠(どの宗派でも使える簡略な形の数珠)が一つあれば十分に間に合います。
扱いで気をつけたいのは、数珠は持ち主のお守りとされるため、その場で人と貸し借りするのは避けるという点です。
持ち歩くときや合掌しないときは左手に持ち、床や畳に直接置かないようにします。
これから略式数珠を用意する方や、宗派ごとの違いや正しい持ち方まで知っておきたい方は、下記の記事もあわせてご覧ください。選び方の基礎から詳しく解説しています。
- 仏具の数珠 - 意味や種類の基礎知識と宗派での違いや選び方・持ち方
- お通夜・告別式などの場ではもとより、お仏壇でお祈りを捧げる際にも用いられる数珠。 日本では当たり前に使われていますが、そのルーツや知識を知っ …
仏壇の前でのお参りの基本的な流れ

仏間に通されてから退出するまでの動きを、あらかじめ頭の中でなぞっておくと、当日ずいぶん落ち着いて振る舞えます。
基本の流れをひととおり追ってみましょう。
お参りの手順(一声かける〜合掌〜一礼まで)
仏壇の前でのお参りは、おおよそ次のような順序で進みます。
- 仏壇の前に進んだら、遺族に「お線香をあげさせてください」と一声かけ、正座して遺影や位牌に軽く頭を下げます
- ろうそくに火が灯っていなければ火をつけ、そのろうそくの火を線香に移します
- 線香に火がついたら、炎は口で吹き消さず、手であおいで消します
- 線香を香炉に立てます(宗派によって本数や立て方が変わります)。りんは無理に鳴らさなくてかまいませんので、数珠を手に合掌します
- 合掌を解いたら遺影に一礼し、少し下がって遺族のほうへ向き直り、あらためて一礼します
線香の本数や、立てるか寝かせるかといった作法は宗派によって変わってきます。
相手の宗派に合わせるのが理想ですが、分からなければ1本を立てておけば大きく外れることはありません。
なお、香炉ではなく焼香の道具が用意されている場合は、線香ではなく焼香を先に、という流れになることもあります。
宗派ごとの本数や、立てる・寝かせるといった作法の違いは、下記の記事で詳しくまとめています。事前に目を通しておくと、当日あわてずに線香をあげられます。
- お線香のあげ方 – 宗派別の本数や立て方・寝かせ方の作法
- お仏壇に手を合わせる時、お線香をあげるという動作はごく自然なものに感じられます。 しかしながら、いざ「正しいあげ方は?」と聞かれると、自信を …
お供え物は仏前に供える?それとも手渡し?
持参したお供え物を、自分で仏壇に供えるのか、遺族に手渡すのかは、その場の状況によって変わってきます。
仏間に通されて仏壇の前まで進むようなら、「こちらにお供えしてもよろしいでしょうか」と一声かけたうえで、自分で仏前にお供えするとよいでしょう。
玄関先で失礼するような場合は、無理に上がり込もうとせず、遺族に手渡しでお渡しして構いません。
置く向きは、表書きの文字が自分(お供えする側)から読める向きにするのが一般的とされますが、宗派や地域・家庭の慣習によって考え方が分かれる部分でもあります。
迷ったときは、家の方に一声かけて置き方をたずねれば確実です。
おりんは鳴らしたほうがいい?
お参りのとき、おりんを鳴らすものだと思い込んでいる方は少なくありません。
結論からお伝えすると、読経をせず、ただ手を合わせるだけのお参りであれば、おりんは無理に鳴らさなくても構いません。
おりんは本来、お経を読む(読経する)ときの始まりと終わりの合図として鳴らすものだからです。
理由が分かってしまえば、鳴らす鳴らさないで迷うこともなくなります。
静かに手を合わせるだけでも、気持ちはきちんと伝わりますので、そこは気楽に構えていただいて大丈夫です。
遺族にかける言葉と、避けたい忌み言葉

玄関先や仏間で遺族と顔を合わせたら、まずお悔やみの言葉を伝えます。
「このたびはご愁傷さまです」といった定型のひと言で、十分に気持ちは届きます。
言葉に詰まってしまっても構いません。
うまく言えなくても、静かに頭を下げるだけで、弔う気持ちはきちんと伝わるものです。
一方で、知らずに口にしてしまいがちな、避けたほうがよい言葉もあります。
たびたびや重ね重ねのように不幸が繰り返される連想につながる重ね言葉、消えるや落ちるといった不吉さを感じさせる言葉は、控えておくと安心です。
死亡や急死のような直接的な死の表現も、ご逝去などにやわらげて言い換えると角が立ちません。
死因や病状を根掘り葉掘りたずねるのも控えたいところですし、励ますつもりの「頑張って」も、今の遺族にはかえって重く響くことがあります。
知っておくと安心、という程度に頭の隅に置いておけば十分です。
「ご冥福をお祈りします」が向かない場合もある
弔いの言葉としてよく使われる「ご冥福をお祈りします」ですが、相手の宗派や宗教によっては向かないことがあります。
先ほど触れた浄土真宗の臨終即往生の教えでは、亡くなった方はすぐに仏になるとされるため、死後の世界をさまようことを前提としたこの言葉はふさわしくないとされています。
神道やキリスト教のお宅でも、仏教の言葉であるこの表現はなじみません。
相手の宗派や宗教が分からないときは、「お悔やみ申し上げます」のように、特定の宗教色のない言葉を選んでおくのが無難です。
どの信仰の方にも失礼になりにくく、迷ったときの拠りどころになります。
お参りだけの弔問に香典は必要?相場と判断の目安

香典を持っていくべきか、手ぶらでは失礼にならないかと悩む方は多いものです。
香典が要るかどうかは、これまでに香典を渡しているか、遺族が辞退しているか、そしてどんな時期の訪問かによって変わってきます。
状況ごとの目安を、下の表に整理してみます。
| 訪問の状況 | 香典の目安 |
|---|---|
| 葬儀に参列し、すでに香典を渡している | 後日のお参りでは基本的に不要 |
| 葬儀に参列できず、後日あらためて弔問する | 持参するのが一般的 |
| 遺族が香典辞退の意向を示している | 無理に渡さず、気持ちだけを伝える |
| 命日など、日常的なお参りで訪ねる | 手土産のみでも失礼にはあたらない |
金額の目安は、故人が友人や知人であれば5,000円〜1万円程度とされることが多いようです。
ただし、これはあくまで地域や故人との関係性によって変わる目安で、全国一律に決まっているわけではありません。
沖縄など一部の地域では、これよりやや控えめな相場が示されている例もあります。
包む金額に迷ったら、共通の知人や同じ立場で伺う方に相談し、足並みをそろえておくと安心です。
よくある疑問とうっかりしがちな注意点

ここまでの流れに収まりきらなかった、細かな気がかりについても触れておきます。
どれも、迷ったら家の方に一声かければ解決するものばかりです。
気負わず目を通してみてください。
子どもを連れて行っても大丈夫?
小さなお子さんを連れて伺ってよいかは、あらかじめ遺族に相談しておくと安心です。
弔問を歓迎してくれる場合もあれば、静かに過ごしたい時期のこともありますので、一声かけて様子をうかがっておきましょう。
訪問中にお子さんがぐずってしまったら、無理に留まらず、そっと退出して構いません。
座布団やお仏壇にまつわる気づかいは?
仏間に座布団が用意されていても、遺族にすすめられる前に勝手に位置を動かすのは控えます。
お参りの前に、故人へ一礼してから座らせてもらうと自然です。
仏壇まわりの仏具や飾りに、断りなく手を触れないようにしておくと安心といえます。
仏壇やお供えの写真を撮ってもいい?
故人を偲ぶ気持ちからつい残しておきたくなることもありますが、仏壇や室内の写真を遺族の許可なく撮るのは避けたいところです。
SNSへの投稿となればなおのこと、遺族の心情に配慮が必要になります。
どうしても記録に残したいときは、家の方に一言たずねてからにしましょう。
まとめ
他家の仏壇にお参りするときは、まず電話で伺う日を相談し、時期に合った落ち着いた服装で、消え物を中心とした手土産を用意していくところから始まります。
仏壇の前では一声かけてから線香をあげて合掌し、遺族には気負わずお悔やみの言葉を伝え、香典はこれまでの経緯や時期に応じて判断すれば、大きく外すことはありません。
細かな作法をひとつ残らず覚えていなくても、遺族と故人を思う気持ちが根っこにあれば、その心づかいは自然とにじみ出るものです。
どうか肩の力を抜いて、故人にゆっくり手を合わせにいらしてくださいね。



