仏具の「骨壺」の基本と選び方について。
価格やサイズから、買換・入替・処分について

  • 2020.03.04
  • 2020.04.06

仏具

遺骨の供養方法としては、お墓や納骨堂に安置する方法が一般的です。
しかし、価値観の多様化や予算の問題により、手元供養と呼ばれる新しい方法を選ぶ家庭も増えてきました。

実際のところ、骨壺は非常に自由度の高い仏具の一つであり、選び方・使い方に明確なルールはないものと考えてよいでしょう。
ただ、取り扱う場面が様々になったことで、骨壺はそれぞれのライフスタイルに応じた選び方を求められる仏具に変化しています。

古くは、お住まいの地域や宗派によって、埋葬方法の違いから用意する骨壺が違っていました。
そのようなルールが今なお存在している地域もあり、一口に骨壺と言っても、その意味合いや使い方・祀り方には細かな違いがあります。

そこで今回は、骨壺を選ぶにあたり、価格・サイズといった基準をご紹介するとともに、買い替え・入れ替えが必要な場面、処分方法などについてまとめています。

骨壺はどう選べば良いか。正しい選び方

まずは、骨壺を選ぶ基準について考えてみましょう。
骨壺と一言で表していますが、実際に見ればわかりますがサイズや材質など様々で、自分たちにあった骨壺を選ばなければなりません。

骨壺というのは納骨するために必要な仏具になります。
しかしながら、納骨する場所というのは各家庭によって異なるため、それを踏まえた選び方が求められます。

納骨先によって違うサイズ感

骨壺には大小様々なサイズが用意されており、「どこに」「どれだけ」の遺骨を納骨するかによって、選ぶサイズが変わってきます。
以下に、主な基準については下記の通りです。

地域による基準

サイズを考える際の基準として最もポピュラーなのは、住んでいる地域を基準に考える方法です。
特に、東日本と西日本で基準が分かれるため、東京から大阪に引越したなどの事情があれば、念のため覚えておきたいところです。

東日本と西日本での一般的な基準は下記の表の通りになります。

東日本全部収骨
西日本部分収骨

まず、主に東日本では「全部収骨」の習慣があり、手元供養など一部のケースを除き、焼骨後に全ての遺骨を骨壺に入れます。
よって、それ相応の大きさがなければ収骨できないので、7寸サイズ(高さ 約24.5cm × 幅約21cm)以上の大きさを想定しておきましょう。

これに対して関西では「部分収骨」が一般的なため、全ての焼骨が骨壺に入らないまま収骨が完了します。
よって、それほど大きなサイズを想定しなくてもよく、6寸サイズ(高さ約21cm×幅約18cm)以下の大きさでも問題ありません。

全部収骨と部分収骨はなぜ分かれたか

余談にはなりますが、この東日本と西日本での全部収骨、部分収骨がなぜわかれたかというのは、部分収骨の慣習が生まれた経緯は諸説ありますが、明治時代に発令された「火葬禁止令」が関係していると言われています。

今では当たり前の火葬は、実は比較的新しい葬法になります。
明治時代に入る前までは火葬ではなく土葬が主流でしたが、衛生面やスペースの問題から火葬が進んでいきました。

ただ、当時の火葬率はそれほど高くもなく、しかも煙突から出る煙と臭いが問題となり、政府はいったん火葬禁止令を出します。
すると今度は、都市部における土葬用の墓地が確保できず、深刻な問題となりました。

こうして、火葬禁止令は廃止され、その後は関東と関西で遺骨の処分に差が生まれました。
火葬再開とともに、火葬された遺骨は全て持ち帰るよう通達が出ています。

しかし、関東は明治政府の通達が行き届いていたのに対し、関西は通達が十分に届かず、一部を納めて残りは寺院で供養後に埋葬する方向へ変化したものと考えられています。

安置先による基準

遺骨を安置する場合、その安置先は各家庭によって違います。
最も一般的なのはお墓ですが、それが納骨堂になる場合もあれば、お仏壇の納骨棚になる場合もあります。

全ての骨を納めることを考えるなら、お墓を想定して大きめの骨壺を用意して差し支えありません。
しかし、納骨先が遺骨全部を納められないような場所であれば、小さな骨壺を選ばなければなりません。

宗派による基準

骨壺は、基本的に1つで事足りる仏具です。
しかしながら、浄土真宗においては、「故人用」と「大谷祖廟(本願寺派は大谷本廟)用」の2種類が必要とされます。

特に大事な部位は「喉仏の骨」で、お釈迦様が座禅を組む姿を連想させるため、仏教では重宝されています。
よって、故人のほとんどの骨を入れる大きな骨壺と、喉仏を入れる小さな骨壺を用意します。

なお、お寺によって考え方も違いますから、折を見て事前に菩提寺に確認しておくことをおすすめします。

お骨の状態を分ける素材の違いから選ぶ

次の基準として、骨壺を作るのに用いられている素材の違いが挙げられます。
以下に、主な素材とその特徴についてまとめています。

陶器・磁器

骨壺のイメージとして一般的なのは、やはり陶器や磁器です。
温かみのある雰囲気と艶やかな触り心地から、場所を選ばずに広く用いられています。

ただ、素材の構造上壊れや欠けが生まれやすく、取り扱いには十分注意が必要です。

木製の骨壺は、陶器や磁器に比べて耐久性に優れ、漆塗りなど高級感のあるデザインも選べます。
ある程度湿気に強く、素材の味を活かしたものもあり、優しい雰囲気を醸し出しています。

ただ、本格的なものは値段も高くなる傾向にあり、場所によっては湿気対策をしなければ遺骨がカビに侵食される可能性もあります。

金属

金属製は、全体的に耐久性や保存性に優れています。
特に、フタ部分にネジ加工が施されているものは、きちんと閉まり密閉性が高いという特徴があります。

金属だからといって武骨なデザインとなっているわけではなく、絵柄や色合いを工夫している商品も多いため、遺骨の保全を優先するなら金属製に分があります。

ガラス

インテリアとして骨壺を考えている人は、ガラスを用いるとよいでしょう。
ガラス特有の透明感が光を通し、見る人の心を和ませてくれます。

ただし、露出が多いと何かの折に割れてしまうリスクも高いので、取り扱いには十分注意が必要です。

デザインは取り扱いやすさを備えていることが大事

骨壺を選ぶにあたり、無視できないのがそのデザインです。
いつまでも遺骨を保管しておくものですから、毎日取り扱いやすいもの・見ていて心が和むものを選びたいところです。

以下に、デザイン主体で選ぶ場合の主な基準をまとめています。

機能性(保全)重視

遺骨を良い状態で保管するためには、できるだけ内部に湿気を入れないことが大切です。
そのためには、きちんと密封保管できるデザインを選ぶことが大切です。

具体的には、金属製に多い「ネジ加工」を取り入れているものを選ぶと、外気を完全に遮断して保管できます。
念のため、乾燥剤を内部に入れておくと、カビの原因になる湿気のシャットアウトに役立ちます。

見た目重視

毎日目にする場所に安置するなら、見て楽しいデザインを選びたいものです。
また、自分たちだけではなく故人の好みのデザインを取り入れるといったことを考える方も増えています。

現代では、昔からあるシンプルな骨壺ばかりではなく、形状自体がとてもバリエーション豊かに用意されています。

筒形のような一般的なものから、ひょうたんのような形をしたものまで、お店やネット通販で見つかるものは様々です。
中には、写真と遺骨を一緒に安置できる「フォトスタンド型」のようなものもあり、狭いスペースで保管することを想定したデザインもあります。

ただし、古いものが必ずしも見た目において印象が薄いとは限らず、蒔絵が施された美しい木製の骨壺もあります。
金仏壇や唐木仏壇に安置することを想定し、あえて和の要素が強いものを取り入れることは、決して悪い選択肢ではありません。

取り扱い重視

自宅に骨壺を安置する場合、こまめに骨壺を移動させることが多いかどうかで、大きさやデザインを考えるべきです。

一例としてリビングに安置する状況を想定した場合、掃除した際にすぐ傷が目立ったり、高いところから落として割れたりするようなことがあれば、その都度買い替えを検討しなければなりません。

また、お仏壇の納骨棚に安置する場合でも、大きい分だけ持ち運びが面倒になることを想定して、あまり重くならないものを選んだ方がよいでしょう。
年齢を重ねるにつれて管理が大変になりますから、その点も十分考慮しておきましょう。

お値打ち品・お手頃品か高級品かの価格基準

骨壺を値段重視で検討する場合、できるだけシンプルなものを選べば安くなる傾向が強いです。
無地、装飾がないといったような良く言えばシンプル、悪く言えば地味なデザインであれば、制作のデザインコストも低くなり価格も安くなる傾向が強くなります。

しかしながら、骨壺は消耗品ではないため、できるだけ長く安全に遺骨を保管できるものを選んだ方が賢明です。

一般的な白い円柱型デザインの骨壺なら、大きいものでも4,000円程度で手に入るでしょう。
これに対して、金属製・木製などで凝ったデザインのものを選ぶと、万単位に値段がはね上がります。

お値打ち品を選ぶか、それとも比較的高級なものを選ぶかは、どれだけ故人に対する思い入れがあったかによって変わってくるでしょう。
遺骨にダメージを与えたくないのであれば、それ相応の品質を選んだ方が賢明です。

骨壺を新しく買い替える事情と選び方

原則として、骨壺はこまめに買い替えが必要な仏具ではなく、一度買えば買い換えるという事はそうそうありません。
しかし、何らかの理由で壊してしまったり、中身にカビが生えてしまったりすると、同じものを使い続けるわけにはいきません。

続いては、骨壺を買い替えるような状況に発展する主な事情と、その際の骨壺の選び方についてご紹介します。

壊してしまった場合

お墓参りの折、骨壺を確認するとヒビが入っていたり、自宅に安置している骨壺を壊してしまったりと、骨壺は物理的な事情で壊れてしまうケースがあります。

このような場合、同じようなサイズ感の骨壺を探し、入れ替える必要が出てきます。
対策としては、より壊れにくい素材を選ぶことが大切で、堅牢さで言えば金属製が確実なものと思われます。

ただし、納骨堂など比較的管理が簡単な環境であれば、木製などでも差し支えありません。

お骨にカビが生えていた場合

骨壺の中身を確認した際、お骨にカビが生えているような場合は、骨壺自体の構造に注目する必要があります。

同じようにカビを生やさないようにするためには、そもそもカビが生えにくい構造になっているものを選ぶか、カビの元となる湿気を調整する機能を持つものを選ぶ必要があります。

ほぼ間違いないのは、ネジ付きの金属製骨壺です。
ネジによって中身が密閉され、内部でカビが繁殖するスキを与えません。

ただ、お仏壇内部で保管することを鑑み、デザインを統一したいという場合は、木製のものを選んでも差し支えありません。
木はある程度湿気を吸収・排出する特徴があるため、乾燥剤を入れて保管すれば、深刻なダメージに至ることは少ないでしょう。

カビが生えた時の対策法

ちなみに、お骨にカビが生えたことが分かったら、殺菌を行ってくれる専門の業者に相談してみるとよいでしょう。

あまり馴染みがなく、耳にしたこともないかもしれませんが、そういった事をしてくれる専門の業者がいます。
粉骨など、より細かくして保管することを想定しておけば、おそらくは半永久的に良い状態を保ちながら遺骨を保管できるはずです。

インテリアとして骨壺を検討している場合

リビングやお部屋に骨壺をインテリアとして飾ることを検討しているなら、できるだけ見栄えのよいものを選ぶとよいでしょう。
ガラス製の中には、光は通すが中身は見えないデザインのもの・色合いが明るく可愛らしいものなどがありますから、自宅の雰囲気に応じて自由に選べます。

ただ、デザイン重視で選んでしまうと、掃除の際に誤って壊してしまうなどのリスクがあり、ガラスや陶器は破片が広がると危険です。
できるだけ低いところに安置し、二次被害を避けるようにしましょう。

自分がいつまでも故人を感じられるものを選びたい

骨壺を購入したものの、引越しなどの都合や心境の変化により、自宅にインテリアとして安置することを検討する場合もあります。
ただ、自宅に安置する際には、できるだけ自分がいつまでも故人を感じられるようなデザインを選ぶとよいでしょう。

ただ、いくらデザインが美しくても、骨壺がただ置かれているだけでは、何となくインテリアとしても殺風景な印象があります。
できれば、骨壺を「小さな仏壇」ととらえて、いつも供養できるように小さめの収納可能な仏具を用意しておくとよいでしょう。

骨壺を処分する事情とその方法

人の命と同じように、物の命もまた永遠とは限りません。
何かの拍子に、骨壺を処分しなければならない事態を迎えることもあります。

ここからは、骨壺を処分しなければならない諸々の事情や、実際に処分する際の方法について触れていきます。
中身もろとも処分することもできますが、できれば丁寧に対処したいところです。

骨壺が要らなくなるケースとは?

各家庭で骨壺が要らなくなる状況としては、どのようなものが考えられるのでしょうか。
以下に、主なシチュエーションをご紹介します。

遺骨の整理

本家のお墓など、古くから多くの魂・遺骨が眠るお墓では、時間の経過とともに遺骨の量も増えていきます。
新しい家族が亡くなったら、その分お墓には骨壺が増えることになり、これをそのままにしておくと次第に複数の安置が難しくなります。

そこで、骨壺から遺骨を取り出し、古いものを何らかの形で処分したり、骨壺に入ったいくらかの遺骨を1つの骨壺にまとめ直したりします。
この段階で、お墓にはスペースが生まれ、その代わりに空になった骨壺が生まれます。

永代供養

お墓を守る人がおらず、将来的に永代供養という選択肢を選ばなければならない場合、遺骨も同時に改葬の対象となります。

そこまで行わないとしても、将来的に今あるお墓を解体して処分することを考えると、遺骨もまた行き場がなくなりますから、散骨等も視野に入れなければなりません。

こうして、骨壺が要らなくなれば、必然的にその処分を考えることになります。

「ゴミ」として処分することもできるけれど…

遺骨を取り出してしまった骨壺は、その段階で何かを祀っている状態ではありません。
そのため、あまり丁寧な処分方法ではありませんが、不燃ゴミとして処分する方法が考えられます。

ただ、ゴミ捨て場など回収場所に「ゴミとして出す」場合は、やはり骨壺であることを悟られないようにするのがエチケットです。

骨壺のデザインによっては、名前が入れられていたり、骨壺であることが一目で分かったりするものも多いため、壊せるものはできるだけ粉々にして処分することをおすすめします。

もちろん、新聞紙でくるむなどの基本的なエチケットは忘れずに行いましょう。

おわりに

骨壺を選ぶ際には、いくつかの基準や考え方があります。
どれが正解かは一口に決められず、時に地域や宗派・お寺の都合なども考えなければならないため、迷ったら相談することが大切です。

しかし、墓じまい・永代供養を考えていたり、遺骨の引越しを検討していたりする場合などは、骨壺を再度購入する必要があります。
それに伴い、古い骨壺の処分についても考えることになります。

新たに骨壺を選ぶ際は、今の自分たちにとって、どのくらいのサイズ感・どういったデザインがよいのかをじっくりと考え、故人との距離感を考えたものを選びましょう。

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  • 公開日:2020.03.04
  • 更新日:2020.04.06

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