お仏壇に骨壺を収納しても良い?
法的な観点と骨壺の種類や収納する仏壇の選び方

  • 2019.05.05
  • 2020.04.06

仏壇 仏具

大切な人が亡くなってしまったことを受け入れるためには、ある程度の時間が必要です。
そのため、自分の気持ちの整理がつくまでの間、骨壺に遺骨を入れて自宅で保管したいと考える人も少なくありません。

また、十数年寄り添ってくれたペットが亡くなってしまい、自分の子どもが独立して家を離れたタイミングが重なり、想像以上の喪失感を味わったという声も聞かれます。

ともに過ごした思い出を忘れられず、手元に愛犬・愛猫の遺骨を置いておきたいと考える人は、意外と多いようです。

しかし、死者の埋葬については「墓地、埋葬等に関する法律」によって詳細が定められており、この法律に違反した場合、最大で6ヶ月以下の懲役または5千円以下の罰金に処されます。

やはり、遺骨はお墓に埋蔵したり、納骨堂に納めるべきなのでしょうか。
それとも、個人宅に保管しておく分には、何らかのルールを守れば法的に問題はないのでしょうか。

結論から言えば、自宅で骨壺を保管すること自体は、決して問題のある行為ではありません。
今回は、骨壺の自宅供養に関する法的な解釈と、実際に自宅で保管する際に選ぶ骨壺の選び方についてご紹介します。

骨壺を家に置いたままにするのは、法的に問題があるのか

日本で暮らす私たちは、遺骨はお墓に埋蔵するものという意識が強いです。
しかし、都市部を中心として、限られた土地に墓を用意することは年々難しくなってきています。

そのため、お寺や葬儀社の側で、納骨堂を用意するケースも増えてきています。

ここで一つの疑問が生じます。
納骨堂という「土に還らない」スタイルの安置方法に主流が切り替わっているのなら、別に自宅で保管しても問題ないのではないか、という問いです。

しかし、法的に遺骨をどこに安置するのかが厳密に決まっているのなら、やはりそれに従わなければなりません。
そこで、「墓地、埋葬等に関する法律」の中で、遺骨を安置する場所は明確に定義されているのか、その詳細を確認してみたいと思います。

法律では、遺骨の安置場所が明確に定義されている

まずは、「墓地、埋葬等に関する法律」における、埋葬区域に関する記述をチェックしてみましょう。

第4条第1項:
埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない

参考URL:https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/seikatsu-eisei15/

ここで言う埋葬とは「亡くなった方を土葬すること」、焼骨の埋蔵とは「骨を土に埋め隠す」ことを言います。
厳密に言うと、現代のお墓の構造上、お墓の中に骨壺を埋めているのであって、土中に骨を埋めているわけではないのですが、埋蔵というニュアンスから考えるとほぼ同様の意味合いになるでしょう。

このように、法律上はハッキリと、遺骨をどのように安置すべきかが定められているのです。

第4条の解釈は、条文通りではない

単純に法文を解釈すると、遺骨はお墓に埋蔵するものという理解が正しいでしょう。
しかし、実際のところ、その解釈は非常に柔軟なものです。

先ほど、埋蔵という言葉の意味は「骨を土に埋め隠す」ことだとお伝えしました。
ということは、土に埋めさえしなければ、骨壺は別にどのように安置しても問題ないとも解釈できます。

より具体的に言うと、自宅の庭・自分の所有地に勝手に遺骨を埋蔵するのは問題ですが、自宅で遺骨を保管する分には特段問題ではないということです。
もちろん、他人の所有地や国有地に勝手に埋蔵するのは論外です。

よって、遺骨を自宅で適切に安置する分には、法律に触れることもなければ、期間の定めもないことになります。

たたりが起こったり、魂の成仏に差し障りがあるのでは、という意見も

遺骨を自宅に安置することは、法的に問題ないことが分かりました。
しかし、法的に問題がないことが分かっても、漠然とした不安にかられるという人も多いのではないでしょうか。

日本では、時代が変わっても霊的な価値観は形を変えながら引き継がれています。
現代では「スピリチュアル」といった言葉でもてはやされていますが、霊的な存在と現世利益をとを結びつける意味で用いられているケースが多いようです。

もちろん、これは今に始まったことではなく、過去にも似たような考え方がありました。
例えば、下記のような考え方です。

  • 遺骨が自宅にあると、亡くなった家族・ペットの魂が成仏できないのではないか
  • 霊魂がいたずらをしたり、たたりをもたらすのではないか

結論から言えば、このような考え方に何ら根拠はなく、非常にナンセンスなことです。
生前とても仲が悪かったのならいざ知らず、長年一緒に暮らしてきた家族が、そのようなことをするとは考えにくいものです。

魂の成仏については、仏教の開祖であるブッダ自身が「生きている者が考える必要はない」と話すように、基本的に遺族が考えることではありません。
あくまでも、亡くなった家族の死後の安寧を祈り、大切に遺骨を取り扱う姿勢こそ、遺族に求められていることなのです。

骨壺を自宅保管する際の注意点やメリット・デメリット

骨壺の自宅保管については、遺骨ならではの特性や、日本の気候に留意して行う必要があります。
経済的・精神的なメリットがある反面、骨ならではのデメリットもあります。

そこで、遺骨をお墓に埋蔵した場合との違いも含め、いくつか注意点をお伝えします。

遺骨の自宅保管は精神的安定を生み、費用面での負担も抑えてくれる

大切な人の遺骨が自宅にあることで、いつも亡くなった家族を身近に感じられます。
家族の精神的支柱だった存在が亡くなったのであれば、なおさら強い絆を生んでくれるでしょう。

また、遺骨の自宅保管により、費用面での負担も少なくなります。

新しいお墓を建立するには、高い場合は数百万単位の費用をかける必要があります。
しかし、自宅で遺骨を保管する分には、毎年かかるお墓の管理費を支払う必要もなければ、自宅から遠いお墓に線香をあげたりお花を供えたりする必要もありません。

初めて家族が亡くなった場合は、今後遺骨をどう管理するのかも含めて、自宅保管という選択肢を前向きに考えてみましょう。

長期間遺骨を保管する場合は、湿気にどう対処するかが重要になる

遺骨はもともと「生きていた」存在が残したものであり、ある意味では死後も生き続けている存在でもあります。
そのため、ある意味生物と同じ繊細な取り扱いが必要になってきます。

具体的には、保管状態によってはカビが生えてしまうことがあるため、湿気により遺骨がダメージを受けるのを防ぐケアが必要です。
簡単な対策として、骨壺・桐箱に乾燥剤を入れておき、湿気による被害を防ぐという方法があります。

また、人間が持つ湿気や汚れも、遺骨の状態を悪化させるリスク要因です。

そこで、遺骨に触れる際には「手袋」を使用することをおすすめします。
素手で骨に触れることで、カビの栄養分となる皮脂を残してしまうおそれがあるからです。

遺骨は単純に骨壺で保管していればよいものではなく、長い間保管するためには細やかな心配りが必要なのです。

親族の意見はしっかりまとめておくこと

遺骨を手元で保管するという方法は、どちらかというとマイナーな方法です。
そのため、親族の中には「お金を少し出すからきちんと墓に入れてあげなさい」というアドバイスをする人もいます。

親族との仲が悪くなければ、本家の墓に納骨するという選択肢もあるでしょうが、当然本家の墓にもスペース的な問題があります。

また、親族の誰かが丁寧に供養されていない(お墓に入っていない)ことで、結果的に自分の家に不幸が降りかかるのを避けたいという思惑もあってか、おせっかいを言う親族は少なくありません。

決して悪気があってアドバイスしているわけではないのでしょうが、今までの関係性にヒビが入ることも避けたいと思うのが人情です。
しっかり自分の考え方を伝えたうえで、理解してもらえるよう努力する必要はあるでしょう。

理想的なのは、葬儀を終えて親族が集まった段階で、お墓や遺骨に関することを事前に伝えておくスタイルです。
骨壺をそのまま家に置いておくことで、わざわざお墓まで足を伸ばさなくていいと説得すれば、賛同意見を増やせるかもしれません。

ペットの場合はそこまで深刻に考えなくてもよい

対人間という意味で考えると、死者の遺骨に対する考え方は、ややナイーブなものになりがちです。
しかし、ペットの場合はそこまで深く考える必要はありません。

これはもちろん、ペットだから乱雑に取り扱ってよいという理由ではなく、基本的に家族だけの問題だからです。
親族全員から愛されてきたペットなら、多少は話も違ってくるかもしれませんが、それでもあまりペットの遺骨の処遇について親族間で議論が交わされるという話は聞きません。

よって、家族間で意思の疎通が取れているのなら、骨壺を自宅に置いておくのは全く問題ありません。

自宅保管をする場合、どのような点に気をつけて骨壺を選ぶべきか

実際に、自宅で遺骨を骨壺に入れて保管することを考えた場合、骨壺の質は重要です。
外気から遺骨を守れる素材かどうかや、割れにくい素材でできているかどうかなど、いくつかのチェックポイントがあります。

また、自宅に骨壺を安置することは「手元供養」とも言われ、できるだけコンパクトに供養する場所をまとめる必要があります。
そのため、骨壺があまりに大き過ぎても手に余ります。

以下に、自宅に安置することを考えた骨壺の選び方について、要点をご紹介します。

素材で選ぶなら金属製が優秀

骨壺を素材から紐解いたとき、もっとも環境の変化から遺骨を守ってくれるのは「金属製」です。
素材こそ真鍮・ステンレス・純金などと様々ですが、共通しているのは「強度」と「密封性」になります。

金属を選んだ場合、それ自体が強度を持つ素材でできているため、壊れにくいメリットがあります。
また、ふたの部分にはねじ切り加工が施されているものが多く、外気を遮断できる密封性を備えています。

金属の他に、骨壺の素材としてよく知られているものとしては、木・ガラス・磁器などが有名です。
これらが決して金属製に対して劣っているというわけではありませんが、長期間遺骨を保管することを想定した場合、どうしても強度と密封性の面で難があります。

木製の骨壺は、木自体が呼吸をしてくれているため、遺骨をカビなどの外部要因から守ってくれるメリットがあります。
しかし、後述しますがこのメリットは桐箱でカバーできるため、あえて木製を選ぶ必要がありません。

また、木製の骨壺は比較的手の込んだものが多く、丁寧なデザインなら3万円を超える値段のものも珍しくありません。
予算と相談にはなりますが、蒔絵のような贅沢なデザインの場合、万一傷が付いてしまった際に目立ちやすいという難点はあります。

ガラスや磁器は、万一地震などの災害で割れてしまった場合、その破片が二次被害を引き起こす可能性があります。
よって、どうしてもガラス・磁器を選びたいなら、大きさや安置場所を選ぶことになるでしょう。

大きさは片手~両手で無理なく持ち運べるものを

骨壺の大きさについては、自宅に安置する場合、何かあった時に持ち運べる大きさが無難です。
具体的には、片手~両手で無理なく持ち運べるサイズがよいでしょう。

骨壺の大きさの単位は「寸」で、一般的には5~7寸のサイズが好まれます。
ペット用となると多少小さめとなり、2~3寸の大きさになります。

ただし、これはお墓への埋蔵を想定した際の大きさであって、自宅に安置するなら3寸でも大きいサイズ感です。

3寸というと高さがおよそ10.8cm・口径がおよそ9.4cmですから、両手でいただくにはギリギリの大きさとなります。
よって、3寸を上限に選ぶのが無難です。

桐箱はないよりはあった方がいい

骨壺を購入する際に、桐箱をどうするのか悩むという人も多いと思います。
結論から言えば、ないよりはあった方が遺骨にダメージを与えるリスクを減らせます。

遺骨の状態を悪くする大きな理由は「カビ」です。
火葬後の遺骨はかなりの熱を持っていて、骨壺に入れられた段階ではほぼ無菌状態を保っています。

そのため、保管後に一度もふたを開けることがなければ、基本的にはカビることを心配する必要はありません。

しかし、高温多湿の日本においては、繁殖に必要な栄養さえあれば、どこにでも簡単にカビが生えるものです。
特に、ふたと本体との間に少しでも隙間があると、そこから外気を吸い込んでカビが繁殖する可能性があるのです。

実は、桐箱はこのような問題を解決してくれる仏具です。
木材は、空気に含まれる湿気を吸ったり吐いたりして、骨壺が受ける湿気の影響をシャットアウトしてくれます。

よって、桐箱に骨壺を入れておくことで、遺骨を湿気から間接的に守ってくれるのです。
価格帯もそれほど高い仏具ではありませんから、骨壺を購入する際は、ぜひセットで購入したいものです。

骨壺を収納するには、それに伴う大きさのお仏壇が必要

骨壺を何らかの形で収納する場合、毎日お供え・お祈りすることを考えると、やはりお仏壇が必要になってきます。
仮にそのまま飾るにしても、骨壺と仏具だけを棚の上に置いておくというのは、何となく殺風景です。

自宅で骨壺を保管できる仏壇を探す場合、どのようなことに気を配るべきなのでしょうか。

基本はやはり「骨壺」を収納する部分を備えたお仏壇を選びたい

お仏壇は、将来的に家族がみんなで守っていくものです。
あまり考えたいことではありませんが、家族が万一亡くなってしまった場合、その都度骨壺は増える計算になります。

よって、ある程度骨壺を収納できる余裕を持ったお仏壇を探す必要があり、できれば下台に骨壺を収納できるスペースがあるものを選びたいところです。

据え置き型のお仏壇であれば、伝統的なデザインでも家具調でも、収納スペースを備えているものは珍しくありません。
通販サイトで購入する場合は、商品紹介でどのくらいのスペースが確保されているのかを確認し、できれば桐箱も含めて十分収納できるかどうかをチェックしましょう。

風通しのよいところに小さな骨壺を置くのなら、ミニ仏壇でも可

骨壺を単体で安置することを想定し、小さな骨壺に遺骨を納めている場合は、ミニ仏壇を使う方法もあります。
ご本尊などは置かない、もしくは掛け軸で考えているのなら、十分置ける場所は確保できるはずです。

このときに注意したいのは、極力直射日光を避けて風通しのよい場所に、お仏壇を安置することです。

骨壺を桐箱に入れず単体で安置する場合、寒暖の差が生じて空気や湿気が骨壺の中に入ってしまうと、カビの増殖につながる恐れがあります。
できれば、リビングのような日当たりのよい場所よりも、仏間や寝室・クローゼットといった場所に安置したいところです。

ちなみに、日光が当たらないからといって、水回りの近くや窓際・押し入れの奥などに安置するのは、湿気をためこみやすいので避けた方が無難です。

ペットのお仏壇は自由度が高い傾向にある

ペットが亡くなった場合に、ペット専用のお仏壇を購入する人は多いようです。
家族の一員である以上、人間と同じお仏壇に納めても問題ないはずですが、気になるようであれば専用のお仏壇を購入して、別々に祀るものよいでしょう。

ペット用の骨壺を入れられるお仏壇は、骨壺をお仏壇の中心に安置する納骨堂形状のものもあれば、扉に遺影をはさんで中に骨壺を納めるものもあり、デザインの自由度が高い傾向にあります。

どれを選べば正解というものはありませんから、遺影をいつも見ていたいと思うなら遺影がメインになるものを、お供えをお仏壇のスペース内に収めたいなら納骨堂形式のものを選びましょう。

おわりに

お仏壇の中に骨壺を安置することは、法的な観点からは何ら問題のない行為です。
あくまでも土中に埋めることを想定して法律は作られており、家に関する取り決めは特にありません。

しかし、骨壺は骨を保管するための仏具であることから、本体はともかく中身に問題が起こらないよう、気を配って選ぶ必要があります。

基本的には骨壺の中に湿気がたまらなければ、カビの繁殖は防げます。
自宅に25年以上保管している遺骨であっても、骨壺の種類や安置する場所をしっかり選べば、カビを生やさずに保管できるものなのです。

この記事では金属製の素材を推しましたが、木製・ガラス・磁器などが絶対にダメだというわけではありません。
桐箱を用意したり、除湿剤を使ったりと、工夫をこらして自宅に安置する点では同じです。

適切な管理の方法が広まることで、自宅に遺骨を安置する形を選ぶ家族は、今後も増えることが予想されます。
将来的には、お墓の存在自体が見直される日が来るのかもしれません。

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  • 公開日:2019.05.05
  • 更新日:2020.04.06

カテゴリ:仏壇, 仏具

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