位牌の名入れの文字色について。
俗名や戒名で変わる?金色や朱色など色の違い

カテゴリ:【 位牌

位牌と言えばお仏壇に並ぶくらいに多くの人に知られた仏具の1つです。
その位牌には、多くの場合で戒名などが彫られており、基本的に色が付いています。

亡くなった方をホトケ様と呼ぶことがあるように、故人とはすなわち御仏に準ずる位置にいるため、故人を礼拝する霊の依代(よりしろ)として、今日まで位牌をお仏壇に安置する習慣が続いてきました。

古くから、位牌に刻んだ戒名・俗名等の文字に色を付ける習慣は存在し、荘厳の一種として理解されてきました。
また、本位牌と呼ばれる名入れが行われる位牌は、黒の位牌が多かったため、特別な場合を除き、金色に塗られることが一般的でした。

しかしながら、時代や考えなども多様化となった現代では、位牌の文字色を自由に好きな色を決める、決めたいと考える人も増えてきています。

実際問題として、色を付けるのに明確なルールはあるのか、俗名・戒名の違いで色を使い分ける必要はあるのかなどは気になる方も多いはずです。
今回は、位牌の名入れ時に用いる文字の色について、基本的な考え方と現代におけるルールをご紹介します。

現代の葬儀において用いられる色の種類

まずは、現代の葬儀において、位牌の文字に用いられる色の種類についてご紹介します。
戒名を頂いた時期・位牌自体の雰囲気などに応じて、色に違いが生まれるというのが基本的な考え方になります。

一般的には金色が主流

位牌の文字によく使われるのは、宗派を問わず「金色」が基本となっています。

位牌を作ること自体は、亡くなった方が「ご先祖様の仲間入り」をするために行われる儀式の一つとして理解されていますが、その色のルーツについて知る人は多くありません。

位牌が広く日本に広まって間もない頃は、位牌に文字を彫った後、特に文字には何の装飾も行っていない例が多かったようです。
そうすると、やがて文字の溝部分が焼けてしまい、字が読みにくくなります。

これは、位牌の素材が木でできているために起こることで、人間で言うと地肌が見えて日焼けしてしまったという状況です。
そこで、先人たちは彫った文字の中に金箔・金液などを入れ、木地の部分が焼けないよう工夫したのです。

生前位牌の戒名には、赤(朱)が使われる

先ほども述べたように、現代でも、位牌の文字を装飾する色としては「金色」が主流であり基本となっています。
しかし、一部例外もあります。

戒名は、多くの家庭で「死後」にお坊さんにお願いして付けてもらうものとして知られています。
ところが、この考え方は仏教的に全く逆の考え方なのです。

そもそも、戒名というのは、仏門に帰依した人に与えられる名前です。
要するに、お釈迦様の教えに従うことを誓って付けた名前だから、戒めの名として戒名が付けられるのです。

つまり、本来であれば「修行中の立場」の人間こそ必要とする名前であり、死後いきなり付けるような名前ではないことになります。

しかし、死後の世界に丸腰で向かうことに不安を感じたご先祖様は、せめて戒名を頂くことにより、あの世での暮らしを豊かにしようと考えたものと推察されます。

このような事情もあり、一般人でも戒名を生前に頂くことができます。
その場合は「生前戒名」と呼ばれ、一般的な戒名とは区別されます。

この生前戒名を入れるのが生前位牌で、一般的な位牌とはルールが異なります。
まだ当人が生きているため、戒名の部分は朱色で入れなければなりません。

なぜ朱色を使うのかというと、もともと朱色が不老長寿の象徴的な意味合いを持っていることから、生前戒名に採用されたものと推察されます。
また、没年齢・没年月日も不明ですから、こちらも空欄ということになります。

亡くなってからは、朱色の文字を金色にして、位牌本来の形とします。
没年齢・没年月日もその際に入れます。

位牌のもともとの色に応じて文字の色をアレンジすることも

このように、金色・朱色を文字に入れる意味は、それぞれきちんと存在しています。
それを踏まえて、現代では位牌のデザインに応じて文字の色をアレンジする例が増えてきました。

位牌自体、昔ながらの黒の位牌だけではなくなってきたこともあります。
今では様々な位牌が存在し、木製だけでなく、ガラス製やクリスタルなど透明なものなども登場していますし、場合によっては金色が見えにくいといった事もあります。

ここまで来ると、もう色の意味合いを考えるということはなく、デザインに合ったものを自由に選んでも差し支えないと言ってよいでしょう。
木目調の位牌なら金色・白色などが見栄えもよいでしょうし、黒地であれば金色の他には銀や白・紫などが選ばれます。

朱地の位牌なら白系の色が映えますし、地の色によって合う色が異なりますから、ご家族・本人の意向を反映したものを選べば問題ありません。
ただ、総じて金色の文字は映えるため、無難な選択肢として覚えておくとよいでしょう。

特に親族に昔ながらの伝統を重んじたりする親族がいる場合は、トラブルに発展してしまうなどの可能性もゼロではないため、色を変える時は事前に相談や根回ししておく方が良いでしょう。

位牌の文字に入れる「色」から意味を紐解いてみる

基本的な文字に入れる色の意味合いが分かったところで、次は「色」自体が持つ意味合いから、どのように色を選ぶのかについてお伝えします。

日本には実に様々な色が存在し、その色に込めた意味も様々であるため、現代のように選択肢が自由だからこそ、なぜその色を選ぶのかを考えるのに役立ちます。

同じ場所で、違う時代を生きてきた人の証を刻む位牌

位牌は木を材料にして作られているため、長い年月を経ても朽ちないよう、加工を施す必要性から現在のデザインが生まれています。
同じ場所で、違う時代を過ごしていた人が、ここに確かに生きていたということを示すための意味合いを持っています。

誰かを愛し、誰かに愛されたことの証として、お仏壇に安置される位牌。
それならば、故人の好きな色や故人をイメージする色を選ぶという選択肢も、決して間違いではないのかもしれません。

色に「位」がある日本の冠婚葬祭

故人が特定の色を好んでいなかったようであれば、日本で古来から受け継がれてきた、色の「位」を参考にするのも一つの方法です。
多くの方は「色の位」と聞いてもあまりピンと来ないかもしれませんが、実は厳密に位が定められているのです。

まず、仏教に限らず多くのシーンで用いられる「金・銀」ですが、これは決して昔の人が成金趣味だったわけではなく、昔から極めて格式の高い色だったのです。

その理由は染料の価値にあり、昔は服を染めるのも手作業で高度な技術を要求されていたため、原料が高価なものは取り扱いが難しく、それだけで重宝されていたのです。

金・銀は、お金の役割を担うほど貴重な金属ですから、位牌においても貴重な染料として扱われていました。
現代の冠婚葬祭でも、色に応じて格式の高さが表現されています。

具体的な順番としては、金色・銀色・紫色・赤色・藍色・緑色・黄色・黒色の順番に尊いものとされており、婚礼がきらびやかで葬儀がしめやかに行われることを反映しての格式順です。

よって、金色が位牌における文字の色として数多く用いられているのは、故人・ご先祖様への最大限の敬意を示す意味もあったものと推察されます。

「荘厳」を重視する日本の仏教世界

お仏壇でもそうですが、日本の仏教世界においては、極楽浄土をいかにして現世で表現するのか腐心してきました。
その結果生まれたのが、唐木仏壇の力強くも細やかな彫刻であり、金仏壇の豪華絢爛な金箔等による装飾です。

ご本尊も、モノによっては全てを金で作ったものが、かなりのお値段で売られていたりします。
今生きている世界よりもはるかに美しい世界について、それを見たことがない人間が空想を繰り広げた結果、最終的には「金色の世界」に至ったものと考えられます。

金という色は、現代においても豊かさの象徴として知られていますが、仏教の世界でもそうだったのかもしれません。

実際には、何色を選べばよいのか

ここまで、現代の位牌に用いられる文字の色や、仏教・冠婚葬祭における色の序列などについてご紹介してきました。
しかし、多くの一般人にはあまり関係のない事情であるため、実際に選ぶ色については、特に制限がなくなってきています。

故人や家族の希望がない限りは、やはり色の選び方も自由に決めてよいものと考えられます。
じっくりと話し合って、自分たちの希望に合ったものを選びましょう。

オーソドックスなものは金を選べば無難

そもそも、位牌の名入れに使う色自体に疑問を抱かなかった人・色にこだわりがない人なら、金を選ぶのがオーソドックスです。

遠目に見ると、位牌として金色は悪趣味なまでに目立つ色ではありませんし、位牌が黒地なら遠目に見ると白っぽく見えるほどですから、遠慮することなく誰でも使って構わない色です。

また、名前の部分に色を入れること自体が、木材の焼けを防ぐという物理的な理由もあるため、全く色を入れないというのはおすすめしません。
「色は何でもいい」と考えている人でも、原則として色を入れておいた方がよいでしょう。

白木位牌とは違う、無垢材でできている本位牌の場合は、あえて木材の色味を活かした色を文字に入れることがあります。
檜のように、どちらかというと薄い色味であれば、金色を選ぶより表札のように黒色で仕上げた方が映える場合があります。

逆に、ウォールナットのようなどっしりとした風格のある色味なら、白色や金色を入れても見栄えがよくなります。
好きな色を選ぶ場合、位牌全体の色味・バランスを考えて、どの色を付けるか選ぶことが大切です。

原則朱色は生前戒名のみだが、位牌の色合いで決めるケースもある

朱色で戒名に色を付けるのは、生前戒名のみというのがルールです。
しかし、この点についてはあくまでも「原則」であり、位牌の色味次第で文字に朱色を使うことも、現代では決して誤りというわけではありません。

ただ、朱色というのは黒の位牌から遠目に見ると見えにくく、赤い色に近い分「血」を連想させるため、現代では嫌われる傾向も否めません。
お墓などでも、生前戒名で朱色に染まった名前が見受けられますが、事情を知らない人が見たら、やはり少なからず恐怖を感じるのではないでしょうか。

地域によっては、このような事情を想定してか、裏に書かれた俗名を朱色にする場合もあります。
生前位牌自体は、遺族にかける負担を減らす方法として好まれるため、あとは色に対する考え方次第と言えるかもしれません。

青・紫・緑といった自由度の高さも

現代では、そもそも古来から決まっている色以外で、自由に位牌の色を決めてしまうという考え方も出てきました。
今まで位牌の文字部分に使われることを想定していなかった、青・紫・緑といった色までラインナップに含む業者も見られます。

中には、螺鈿を模した「虹色」というものまで登場し、光の加減・角度によって色が変わるという手の込みようです。
実際には螺鈿を使っているわけではないため、比較的安価に注文できるのも魅力です。

位牌自体にクリスタル・天然石などを用いても、違和感のない時代になっていることから、今後位牌のデザインの概念も大きく変わっていくものと思われます。
将来的には、名前を一切入れない写真だけの位牌なども、決して珍しくないものになっているのかもしれません。

おわりに

お仏壇のデザインが現代風に進化しているように、位牌の名入れもまた進化を遂げています。
字の彫り方だけでなく、色にまで配慮されている状況は、言い換えれば過去の価値観が大きく揺らいでいることの現れです。

かつては多くの人が常識と疑いなかったことは、いつの時代も時間の経過とともに廃れていくものです。
位牌の名入れと言えば金色が常識だった時代は過ぎて、今では虹色の文字を入れても違和感を覚える世代は少なくなったものと考えられます。

しかし、目に見える形は変わっていても、日本人の死に対する考え方・心の持ちようの本質に変わりはありません。
心の奥底では、死者を弔う気持ち・死後の世界を案ずる気持ち・ご先祖様を敬う気持ちが、日本人にはまだ根付いていることが分かります。

現代において、お仏壇や位牌のみならず、社会全体において「これが正解」というスタンダードは少なくなってきました。
それだけに、自分が良いと感じたものを素直に受け入れる感性が、位牌にも反映されているのかもしれません。


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