お仏壇にある一重扉と二重扉など「扉」について
それぞれの違いや特徴と正しい扉の開け閉めについても解説

カテゴリ:【 仏壇

デザインを問わず、ほとんどのお仏壇には扉がついているものです。
もちろん、今では現代風やモダンタイプのお仏壇において、開放型で扉がないお仏壇も登場してはいますが、従来型のお仏壇には扉がついています。

現代風のデザインや簡素なお仏壇は一重の扉が、金仏壇・唐木仏壇などの本格的なお仏壇は二重の扉がそれぞれ設置されていることが多いです。

より古いデザインの方が扉は多い傾向にあり、そこにどのような意味があるのかを知っている方は、業者でも少なくなってきています。
店頭で聞いてみても「デザインの違いに過ぎませんから、宗派関係なくお使いいただけます。」といった、玉虫色の回答をもらうことは珍しくありません。

そこで今回は、お仏壇の扉に込められた意味や、扉の開け閉めをするタイミングについて、古くから言い伝えられてきたことや現代の傾向をご紹介します。

そもそも、お仏壇が持つ扉の意味とは

古来から受け継がれてきたお仏壇のデザインには、何らかの仏教的意味が存在しています。
それは、扉もまた例外ではありません。

扉は空間と空間を仕切るパーツの一つですから、その意味合いを紐解いていくと、やはり理由が存在しました。
以下に、お仏壇における扉のとらえ方についてご紹介します。

お仏壇は、もともとお寺の環境を模したもの

そもそも、一般家庭に広まっているお仏壇というのは、お寺の環境を各家庭に設ける目的で作られました。
普及させること自体は制度上の問題も関係していましたが、その作りはお寺を模しているのです。

お寺の仏堂には「内陣(ないじん)」と「外陣(がいじん)」という概念があります。
これは簡単に言うと仏堂の中を二つに分けるもので、内陣はご本尊や脇間を安置するところと認識され、その外が外陣です。

内陣は神聖な場所として考えられ、基本的には僧侶たちが祈りを捧げる場所であり、一般人が立ち入ることは許されません。
ご本尊の参拝者は、内陣の外側に座り、僧侶の祈祷や勤行を見守ります。

ちなみに、このような概念は仏教だけでなく神道・キリスト教にも存在しており、神社や教会にも聖職者専用の空間が設けられています。

御仏と現世とは違う世界である

なぜ、内陣・外陣のように、御仏と私たち人間との間に距離を置く必要があるのでしょうか。
それは、御仏と現世とは違う世界であることを、より分かりやすく可視化するための試みだったのだろうと推察されます。

現代でこそお仏壇の扉について意識することは少なくなったものの、かつて仏教が絶大な人気と権力を持っていた頃は、命がけで信仰する対象がご本尊でした。

その御仏に対する敬意を示し、失礼のないよう敬おうと考えた先人たちは、自分たちとの間に意図的に「距離」を置こうと考え、互いを分けることを思いついたのかもしれません。

お仏壇のルーツが寺院にあるということは、当然お仏壇の中でも御仏と人間との間に距離を置くものが必要になります。
その役割を果たしたのが、お仏壇の扉だったのです。

御仏やご先祖様を大切に扱うための扉

扉の付いたお仏壇が普及したことで、自宅でご本尊・ご先祖様をお祀りする際も、御仏と物理的・精神的な距離を保ってお祈りできるようになりました。

仕切りとなるものを設けなければそのまま姿が見えてしまうため、扉がお仏壇に付いていることでより御本尊がヴェールに包まれ、より神聖化したものと思われます。

本格仏壇のデザインは二重扉のものが多いため、内戸となる障子越しに御仏を感じることで、自然と目に見えない存在を敬うことにつながります。
現代でも心の世界・見えない世界に対して敬意を抱く日本人が多いのは、ひょっとしたらお仏壇という文化が関係しているのかもしれません。

なぜ「一重扉」と「二重扉」が生まれたのか

お仏壇の扉として一般的にイメージするのは、大きな扉を開いたら、その次に格子状の扉が待ち受けている構図だと思います。
上等なものなら彫刻も含まれ、非常に豪華な造りとなっています。

昔から、扉自体が御仏・ご先祖様との境界線として機能していたのなら、そこでわざわざ扉を二重にする必要はなかったはずです。
それなのになぜ、扉は一重と二重とに分かれたのでしょうか。

その答えは、作り手の実に「人間らしい」心遣いによるものだったのです。

お仏壇を「ご先祖様」のお住まいと考えた結果、二重扉の概念が生まれた

お仏壇の設計を考えたとき、ご本尊はともかくとして、工匠は「家」と同じ空間をご先祖様に提供することを思いつきました。
家にいるときと同じようにくつろいでもらうために、できる限りその時代における家と同じような空間を作ろうと考えたのです。

一部の寒冷地を除き、古き良き日本の住宅における窓は「障子」と「雨戸」で構成されている家が多いものです。

高温多湿の日本においては、寒さよりも暑さを和らげ、雨風による被害を最小限に抑えることを想定した造りとなっている家屋の方が重宝される傾向にありました。

これはいわば「窓を二重にする」のと同じような意味合いがあり、できる限り御仏やご先祖様におくつろぎいただくために考えた結果、そのような造りになったものと考えられます。

現代仏壇を取り扱っているお店では聞かれませんが、古くからお仏壇の修繕を行っている業者の中には、そのような経緯を理解してお仏壇を取り扱っているところもあります。

その名残として、内側の扉を「障子」・外側の扉を「雨戸」と表現する業者も見られ、日本における家の概念・存在感の強さを感じさせます。
ちなみに、広く知られている呼称は、内側の扉は「戸軸(とじく)」外側の扉は「大戸(おおと)・戸板(といた)」となっています。

現代になると、二重扉である必要性が薄れていった

このような事情から、日本建築的住宅が立ち並んでいる時代には、お仏壇の扉の数に大きな変化はありませんでした。
しかし、生活習慣や住宅事情の洋風化に伴い、デザインの古臭さや二重扉の必要性に疑問を感じる層が増えてきました。

現代では、和室自体が存在しないという家も珍しくないため、純和風の造りとなっている本格仏壇は居場所を失ってしまいました。
それに伴いシェアを伸ばしてきたのが「家具調仏壇・モダン仏壇」です。

家具調仏壇は、扉を閉めて一目見ただけでは、お仏壇という印象を与えません。
中にはタンスとほとんど変わらない素材・デザインとなっているものもあり、洋風の間取りにも違和感なくフィットします。

次第にお仏壇から日本的な要素を取り除いた商品も一般化し、お仏壇の窓を二重にする意味を知る人も少なくなり、いつしか二重扉はお仏壇の主流ではなくなっていきました。

住宅事情に応じて、扉のデザインにも影響が及んだ

現代の住宅事情は、お仏壇における扉の数だけでなく、扉自体のデザインも変えてしまいました。
集合住宅などの狭い部屋では、安置できるお仏壇の大きさ自体が制限され、サイズが小さくなったお仏壇を置かざるをえないケースもあります。

扉を開けた際に生じるスペースを節約したいと考えるユーザーのために、必要でないときは扉を収納できるタイプのお仏壇も登場しました。
一見すると食器棚にしか見えないため、扉を閉めた状態ではお仏壇だと分かる方はまずいないでしょう。

現代のお仏壇は、より違和感のない家具の一部として製造されている一面があります。
昔を知る人にとっては悲しいことですが、これも一つの時代の流れと言えるでしょう。

お仏壇の扉を開け閉めするタイミングについて

お仏壇に扉があるということは、当然開けるとき・閉めるときに、それぞれのタイミングがあることを示唆しています。
一般的にはあまり細かいルールを設けているご家庭は見かけませんが、宗派や地域によっては扉の持つ意味をどう解釈するかに違いが見られます。

深刻に考える必要はありませんが、他人の家にお邪魔した際の常識の一つとして考えておくと、何かと役に立つでしょう。

宗派共通の明確な決まりがあるわけではない

まず、大前提として、お仏壇の扉の開閉に付き宗派共通の決まりが明確に存在しているわけではありません。
お寺には確かに内陣・外陣という概念こそあれど、それはあくまでもお寺のルールであって、お仏壇のルールではありません。

丁寧に毎日のお勤めをする家であれば、扉の開け閉めは勤行の都度行うでしょうし、あまり気にしないのであれば年中開けっ放しというご家庭も珍しくありません。
各家庭・菩提寺の方針に合わせて、柔軟に対応して構いません。

一重扉と二重扉を比べたときの用途の違い

一重扉の場合は、基本的に開けっ放しで問題ありません。
そもそも扉が一つしかありませんから、特別な場合を除いて扉を閉める必要はないでしょう。

これに対して二重扉は、普段から内側の扉を閉めておくことによる「物理的なメリット」もあります。
それは「ほこりが入るのを防げる」点です。

お仏壇にとって良い環境を維持しようと考えた場合、ホコリと湿気はどちらも同じレベルで大敵です。
ホコリがたまれば汚く見えますし、そこに湿気が加わって、汚れが取れにくくなってしまう可能性もあります。

お祈り・お供え以外の時間はお仏壇の内側の扉を閉めておくことで、無駄なホコリがお仏壇の中に溜まるのをある程度防げます。
しかし、こまめに開け閉めをしないと湿気がたまって逆効果になってしまいますから、タイミングを決めて開閉することは忘れないようにしたいものです。

確実にお仏壇の扉を開けておくべきとき

お仏壇の扉を「開けておくべきとき」について、普段から扉を開けたままにしているご家庭では、あまり意識することはないと思います。
しかし、大きなイベントがある時期は、普段お仏壇の扉を閉めているご家庭でも、開けっ放しにしておきます。

それは「お盆」や「法事」など、何らかの家庭のイベントが生じたときです。
特にお盆は、ご先祖様が提灯の明かりを頼りにやって来る時期なので、そのタイミングで扉が閉まっていると、ご先祖様もどうしてよいか分からないでしょう。

法事の時期も同様に、せっかく遠いところから親族がやって来ているのに賑やかな場所を見られないと、ご先祖様は残念に思うはずです。

ご先祖様が現世に戻る時期は、お仏壇の扉を開けておくと考えておくとよいでしょう。
もちろん、身近に亡くなった家族を感じていたい方は、時期を問わず開け放しても全く問題ありません。

扉を閉める場合はケースバイケース

お仏壇の扉を閉めなければならない場合は、各家庭や宗派・地域によって異なりますが、基本的にはご先祖様や御仏への敬意から扉を閉めます。
一例としては、四十九日の際には扉を閉めるという慣習が多く見られます。

家族が亡くなった際には、四十九日までは祭壇で故人をしのぶ習慣があります。
このときばかりは亡くなった方のことで家族が手一杯になるため、ときにお仏壇を背に向けたり、忙しくお仏壇の周りでバタバタしたりするのは仕方ありません。

そこで、ご先祖様や御仏に無駄な気を遣わせないため、あるいは失礼な言動をお見せしないため、四十九日を過ぎるまではお仏壇の戸を閉めておくという習慣を持つところもあるようです。

時間帯で考えると、朝は扉を開け、夜は扉を閉めるという習慣のご家庭もあります。
こちらは一般家庭と同じ理由で、夜にはご先祖様にもお休みいただくために、光を遮る意味で扉を閉めるというものです。

ただ、この習慣も全国的なものではありませんから、各家庭でどのようなタイミングで扉を開閉するのかを決めておけば、特段問題はありません。

おわりに

残念ながら、現代では本格仏壇の細かい知識については、業者でも本当のところは把握できていないという現実があります。

実際のところ、二重扉の有無でお仏壇の購入を検討するような方は少ないですから、お店の側もそこまで込み入った知識を頭に入れる必要がなくなってきた側面は確かにあります。

しかし、お仏壇の修理を専門に行っている業者は現存していますし、古い時代から続く仏壇作りの技術を今に継承している地域も数多く存在しています。
先祖代々お仏壇を守ってきたご家庭であれば、お仏壇の扉が「日本家屋の窓」をルーツとしていることを、当然のようにご存じかもしれません。

お仏壇の扉は、死者と生者とを区別せず、同じ世界を生きた大切な人のひとりとして供養するという考え方を表現しています。
これは、日本人が誇るべき文化の一つです。

お仏壇の扉を開け閉めする際は、ぜひともご先祖様が生きていた時代にまで思いをはせ、古き良き日本を感じていただきたいと思います。


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