聞いた事があるようなないような「厨子」
特徴や厨子仏壇と普通の仏壇との違いと選び方など

カテゴリ:【 仏具 , 仏壇 , 専門用語の解説

創価学会の方ならご存知の方も多いと思いますが、一般的なご家庭ではあまり聞かない仏具の一つに「厨子(ずし)」があります。

実は、この厨子は、ある意味ではお仏壇の始まりになった仏具の一つとも言え、非常に歴史の古いものです。
実際に仏壇屋さんの中には今でも「厨子仏壇」と呼ばれる仏壇を取り扱っているところもあります。

今回は、そんな厨子にスポットを当ててご紹介していきたいと思います。

そもそも、厨子とはどういう経緯で生まれたのか

お仏壇が一般的になった現代では、厨子単体で御本尊をお祀りすることはほとんどありません。
しかしながら、かつては厨子こそが仏像・仏画・経典などを安置するために用いられていたという時代がありました。

また、由来を紐解いてみると、どちらかと言えば日常的に使われていた性質も兼ね備えていたのです。

厨子のルーツは「食物棚」

現代では仏具として知られる厨子ですが、そもそものルーツは「食物棚」でした。
中国が発祥とも言われており、厨房において食物を置く棚を、あるいは書籍を入れる棚を指していたのです。

そのため、室内装飾を兼ねたインテリアの一つとして広まっていったという経緯があります。

厨子は貴族社会でも用いられ、当初はやはりインテリアとしての趣きが強かったのですが、やがて仏教伝来とともに仏像などの礼拝対象を納めて、屋内に安置するものに形を変えていきます。

現存するものでは、奈良県の法隆寺にある玉虫厨子(たまむしずし)が有名です。

なぜ、厨子に仏像などを安置するようになったのか

厨子に信仰の対象である仏像などを安置するようになった理由は、お仏壇の由来とほぼ同じです。
つまり、大切なものを礼拝するにあたって、少しでも良い場所に安置したいという気持ちの表れとされています。

事実、多くの寺院で厨子が見つかっていることからも分かる通り、当時は大事なものを収納するという意味合いから発展して、自分たちの信仰対象を拝み奉るという発想が生まれたものと考察できます。

実はお仏壇も広い意味では厨子の一種であると解釈されています。
デザインの多くが仏堂建築を模した造りになっていることから、やはり何らかの形で荘厳を目的としていたことが分かります。

現代でもコンパクトなお仏壇という扱いでリバイバルの動きがある

現代人にとっても、やはり一般的なお仏壇を購入して御本尊・位牌などを安置する流れが自然だと考えられますが、近年ではお仏壇を買うにはスペースが足りない・お金が足りないといった世帯が厨子の購入を検討する場合もあるようです。

また、あえて御本尊・位牌だけを安置できる大きさの造りにとどめた、厨子とほぼ同じ大きさの仏壇もあり、まるで小さな祠(ほこら)のような形状をしています。

この傾向は、お仏壇と厨子が同様の意味を持つことを、図らずも日本人が皮膚感覚で理解していることのあらわれかもしれません。

厨子の中には、御本尊を飾らず位牌のみをお祀りするご家庭もあり、お寺側も魂入れを行ってくれます。
お仏壇の多様化は、仏具そのものの使い方にまで及んでいるのです。

なぜ、厨子からお仏壇へと安置場所が移ったのか

厨子について基本的なところに触れてきましたが、それでは厨子から一般的なお仏壇へと安置場所が移ったのには、どのような背景があったのでしょうか。
大きさなどの規模的な問題はもちろんですが、なぜ厨子という形状が古来より重宝されてきたのかを考えると、おぼろげながら理由が見えてきます。

本来、お仏壇における荘厳は「宮殿(くうでん)」が担っていた

奈良時代以前、厨子が仏教で使用される前までは、礼拝対象を納める部分を「宮殿(くうでん)」と呼んでいました。
先にご紹介した玉虫厨子についても「宮殿型厨子」というカテゴリで分ける考え方もあり、はっきりと線引きはされていなかったことが見て取れます。

御本尊の荘厳を考える中で、より大事に保管し、仏教世界を表現できる方法を考える中で、宮殿という概念が発展してきました。
浄土真宗の金仏壇にはその傾向が未だ残っていますが、お仏壇の上段には屋根がシンボルとして設けられており、その下に御本尊や位牌などを安置する形になっています。

中には丁寧に扉が作られているものもあり、そこに親鸞聖人が安置されることを想定しています。

厨子と考え方が似ている造りに「御堂(みどう)造り」というものがあり、こちらは宮殿自体を取り外し、御本尊ごと持ち運べる造りになっているのが特徴です。

お寺にとって御本尊は重要な意味を持っており、有事の際もいかにして大切に持ち運べるかが考え抜かれていたのです。

各家庭で御本尊を安置することを考えた際に、厨子を持つ意味が薄れた

現代のようなお仏壇の形状が広く一般に広まったのは江戸時代のことです。
檀家制度によって一家に一台お仏壇が安置されるようになってからは、持ち運ぶことよりも家の守り神のようなポジションに役割が変わりました。

ご先祖様の供養はもちろん、現世利益も含めたさまざまな念を送る、言わば「心の中継地点」として新しい役割を担うことになったのです。

ある意味、江戸時代に完成された数々の文化が生まれたことで国民の教養も高まり、この段階では、例えば火事の際に位牌や御本尊を持ちだすことよりも、供養をしっかり行うことが大切という考え方が広まったものと思われます。

厨子と創価学会

明治維新・廃仏毀釈の時代を経て、戦後は信教の自由により日本でも仏教が息を吹き返しました。
その中で、強い力を持った新興宗教が生まれました。
創価学会です。

もともと創価学会は、信仰の対象となる御本尊をそれぞれの方法で荘厳しながら勤行に勤しんでいましたが、やはり学会用のお仏壇が必要なのではないかという声から、創価学会用のお仏壇が完成しました。

創価学会は日蓮正宗の流れを汲んでおり、御本尊(曼荼羅)に対する信仰を徹底しています。
そのため、御本尊を人の目に見えるところには安置せず、お仏壇の中にある厨子の中に御本尊を安置するのです。

毎日の勤行のときは厨子を開けてお祈りするため、高級品であればリモコンで厨子の扉が開く造りのものもあります。
本来大切なものを安置するために用いられていた厨子の性質が、現代になってお仏壇の性質と合体し、再び新しい一つのスタンダードになった瞬間でもありました。

厨子の種類について

厨子の歴史や現代の傾向などを紐解いたところで、実際にお仏壇屋さんやネットショップで販売されている厨子の種類などに付いて、いくつかご紹介していきましょう。

丸厨子(まるずし)

屋根が丸みを帯びている厨子のことをこう呼びます。
販売されているものの多くは木製であり、漆塗りなどの技術が用いられています。

大きさとしては位牌もしくは御本尊が単体で入る大きさがスタンダードですが、やや大きめの「巾広」サイズであれば両方を入れられる大きさになります。
内部も金箔で装飾されているモデルが多いので、安い小さめのお仏壇を購入するよりもかえって高級感を感じられるかもしれません。

木瓜(もっこう)形厨子

一見すると丸厨子と似たような雰囲気を持っていますが、屋根の形が横に広がっており、いわゆる反り屋根式と呼ばれる造りになっているのが特徴です。
金額も、大きさで考えると丸厨子よりも高めの価格設定です。

帽額(もこう)厨子

こちらも屋根に特徴のある厨子で、木瓜型が屋根に装飾を施しているデザインなのに対し、帽額厨子は軒下を広くとった屋根が取り付けられているデザインになります。
価格帯は比較的安い部類に入りますが、ネット上ではそれほど品数は多くないという印象です。

両面厨子

正倉院の「黒柿の厨子」が有名ですが、商品としては市場に出回っているものを見つけられないモデルです。
厨子の前後に扉がついていることから、棚として使われていた時代の名残であろうと推測されます。

そもそも、御本尊をお祀りする目的では作られていない厨子なのか、造り自体が簡素になっているのが特徴です。

印籠(いんろう)厨子

もはやアンティークの一部になっていますが、印籠型の厨子というものも存在しています。
そもそも印籠とは、薬などを携帯するための小さな容器を指しますが、扉を開けると御本尊が中に安置されている(彫られている)タイプの厨子になります。

多くの仏壇店では差別化を行っていない

厨子が販売されているお店・通販で、圧倒的に取り揃えられているのが丸厨子で、木瓜型厨子・帽額厨子がそれに続くといった流れです。
お店によっては丸厨子のみの扱いとしているところもあり、宗派について厳密にこれを使うべきであるという定義もありません。

商品によっては、デザインによって使用する宗派を指定しているものもありますが、内装が施されていなければ、原則どの宗派でも使用できるものと考えてよいでしょう。

厨子型仏壇と一般的な仏壇との違い

本来は、現代のようなお仏壇の形状が「厨子型仏壇」としてくくられているという認識が本筋なのですが、現代では、位牌もしくは御本尊が入るくらいの大きさのお仏壇を厨子型仏壇として紹介しているサイトが多いようです。

創価学会系のお仏壇には内部に厨子がついていることから、お店によってはそちらを指しているケースもあり、非常に紛らわしいところがあります。
そこで、現代で話に出てくる厨子型仏壇と、一般的なお仏壇との違いについて、あらためてまとめてみました。

大きさの違い

厨子型仏壇と一般的な仏壇との違いとしては、やはりもっとも目立つのは大きさです。
ネット上で検索すると、検索結果に表示されるのはその多くが厨子です。

厨子型ミニ仏壇といった名称などで紹介されていることもあります。

ただ、検索するキーワードを「厨子型仏壇 創価学会」とすると、一般的な大きさのお仏壇(創価学会用)が検索結果として表示されるため、やはりここでも表現が統一されていないことがうかがえます。

宗派の違い

大きさの違いについても述べましたが、厨子型仏壇はもともと一部の宗派で使われるお仏壇でした。
それは、日蓮正宗です。

日蓮正宗は、日蓮宗の流れをくむ宗教法人で、他の日蓮宗系統の宗派に比べると厳格な姿勢を崩さない宗派として知られています。
中でも、修行は非常に過酷なもので、死者が出た年もあるほどです。

日蓮宗の開祖である日蓮自体が、非常に過激な思想を持って日蓮宗を立ち上げたことから、日蓮正宗では御仏というよりも日蓮聖人を崇拝の対象としているのが特色です。

お仏壇の中に厨子が作られた厨子型仏壇が採用された理由も、御本尊を重要視する教義に基づくものです。

しかし、似たような造りのお仏壇を創価学会も使っています。
これは、創価学会が日蓮正宗から派生した宗教団体であることが理由になります。

日蓮正宗と創価学会とでは、お仏壇の造りや仏具などに違いがありますから、購入する際は注意が必要です。

デザインや用途の違い

厨子型仏壇は、使い方やサイズによっては御本尊・位牌の安置に用いられますが、日蓮正宗や創価学会のように用途が厳密に決まっている宗派であれば、教義に従って購入した方が賢明です。

一般的な宗派で厨子型仏壇を使用する場合は、菩提寺の住職の指導のもと、基本的には自由に御本尊・位牌を配置できます。
これに対して、日蓮正宗・創価学会では、お仏壇の買い換えなどを推奨していることもあり、お仏壇自体は御本尊の入れ物とする考え方です。

厨子型仏壇を購入する場合、宗派によって用途自体に差が生じるという違いを押さえておいた方がよいでしょう。
ただ、考え方を変えれば、お仏壇の魂抜きがない宗派もあるということだけなので、先祖供養のためだけに厨子を使うなら、あまり深刻に考える必要はないかもしれません。

今では実際に厨子仏壇を選ぶのは少数派

一般的な仏壇屋やネットショップなどにすら、厨子仏壇が置かれるのは少なくなってきました。
ネットショップであれば、場所の問題がなく置いているところもありますが、実際の店舗などにおいては、スペースの問題からか厨子仏壇をそもそも置いていないというところも増えてきています。

また、厨子という言葉が、今では色々な幅を持っている事もあり、厨子、厨子型といったような感じで人によって想像するものが大きく変わってしまいます。

先ほども書いたように、日蓮正宗や創価学会であれば厨子というのが割と一般的ですが、そうでない宗派の場合はお仏壇というと唐木仏壇やモダン仏壇などを中心に、浄土真宗系なら金仏壇というのが一般的でもあります。

ただ、サイズが非常にコンパクトで中に御本尊や位牌を安置する以外のスペースなどがないという事から、マンションにお住まいの方などで選ぶという方もいらっしゃいます。

購入の際にはいろいろと勘違いや間違いがないようにしっかり調べてからいくようにしましょう。

おわりに

厨子は、そもそも仏教とは直接関係のない用途で使用されてきました。
しかし、仏教の伝来とともに御本尊をお祀りする重要な仏具として存在感を増し、やがてはお仏壇が生まれる下地を作った功績があります。

現代では、お仏壇を必要としない世帯や、予算の都合上お仏壇を購入できない世帯が購入する一つの選択肢となっています。

その種類も数多く存在しますが、現在市場に出回っている種類はそう多くありません。
また、購入時には間違いも起きやすいので、くれぐれも事前に調べたり、お寺に確認したりするなど、注意するようにしましょう。


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