毎日のお参りや贈呈にも使われる仏具の線香
線香の種類や違いと用途に合わせた選び方・使い方

カテゴリ:【 仏具

どの宗派でも、毎日のお勤めに用いる仏具のひとつに線香があります。
種類や金額もさまざまですが、普段はあまり細かく選んで使っていないという方が多いのではないでしょうか。

しかしながら、いざ線香というカテゴリをしっかり見てみると、スーパーなどで売っている価格が安い日常用から、贈呈用の非常に高価な線香、さらには今では香についても種類が様々な線香が登場しています。

今回は、そんなお仏壇や毎日のお参りには欠かせない、「線香」についてその種類や用途と選び方について紹介ししてみたいと思います。

仏教における線香の意味とは

お仏壇に線香をあげる風景は、すでに日本の日常に溶け込んでいるシーンのひとつです。
しかし、なぜ線香をあげる習慣が生まれたのかを聞かれると、答えられないという方も多いのではないでしょうか。

そこで、線香が仏教においてどのような意味をもっているのか、以下に紐解いていきたいと思います。

もともとは「お香」という形で日本に広まった

線香の前段階として、まずは日本への仏教伝来がありますが、その過程で「お香」が伝えられたのです。

お香は、六世紀ころに仏教が伝来してから、寺院での儀式・新仏への供養に用いられました。
お経などで香について読まれることもあり、浄土宗では「香偈」のように心身の清浄を目的として読み上げるものもあります。

このように、お香は仏教にとって、心身を清めるものとして捉えられているのです。

さらに深く掘り下げれば、仏教が発祥したインドにおいては、暑い地域ということもあって遺体の腐敗が早いことから、腐敗臭を消すために使われていたと言われています。
死の臭いをかき消すことから、後世に清浄なイメージが広まったものと想像されます。

お仏壇に使われる最高級木材のひとつに「白檀(びゃくだん)」があります。
高級仏像などにも使われますが、こちらは香りも非常によい木であり、香木(こうぼく)としても使われています。

価格も非常に高く、40g程度で5,000円以上の値段で売られています。
仏教にとって、香りは重要な意味をもっていることから、現代でもその効果が敬われているのです。

香りが持つ意味

仏前でお香・線香をたく理由は、身を清めるためだけではありません。
もっとも大きな理由は、やはり故人・御仏に供養の気持ちを伝えるためです。

よく「仙人は霞(かすみ)を食べて生きる」と言われることがありますが、人ならざるものが食べるものは、時に気体として表現されることがままあります。

仏教においても同様の傾向があり、仏教経典のひとつ「倶舎論(くしゃろん)」によると、死者はよい香りを食べるという記述があります。

故人が亡くなってから四十九日の間は、死者は線香の香りを食べるものとされ、これを「食香」と呼ぶこともあります。
現代でも一部の地域では、このような習慣が残っているところもあります。

また、お通夜などでは故人の枕元に1本の線香を立てますが、これは線香の煙によって道案内がなされるという意味合いがあります。
四十九日後にお仏壇でたく線香は、故人・御仏への感謝の念を伝えるものとして用いられます。

総括すると、線香の香りは、故人・御仏を思い出す・思いやるための手段の一つとして今に残っていると言えるでしょう。

線香の製造技術が日本に伝わったのは江戸時代

お香をたしなむ文化は、仏教の伝来に伴い、いくつかの時代を経て貴族から武家へと伝わっていきました。
もともと日本に伝来した理由は、御仏の供養・心身の清浄のためでしたが、貴族たちは日常生活の中で香りを楽しむようになりました。

枕草子・源氏物語などでもお香に関する記述が見られ、日本の貴族社会においても一般的になっていたことがうかがえます。
やがて、武家社会で香木の香りを極めようとする「開香」の流れが広まり、江戸時代になると経済力を備えた町人たちの間にも香りの文化が広まります。

このころには檀家制度も取り入れられており、仏前で香をたく習慣が広まりやすい土壌はあったと考えられます。
ただ、武家社会の時代は香木が中心で、線香は主に中国で用いられるものでした。

日本に線香の作り方が伝わったルーツとしては、清川文左衛門という人が幼い頃中国の福州にわたり、16歳で長崎に戻ってきてから線香の製法を伝えたと言われています。

中国から線香の製造方法が伝わると、庶民の間にも線香の使い方が広まっていきました。
こうして、お仏壇に線香をあげる習慣が、現代へと引き継がれたのです。

線香の種類について

現在日本国内で販売されている線香には、さまざまな種類のものがあります。

しかし、もとを正せば大きくは2種類に分かれます。
以下に、線香の基本的な作り方・種類・原料・値段の違いといった観点から、線香についてご紹介していきます。

線香は、その原料によって大きく二種類に分かれるのですが、それが「匂い線香」「杉線香」の2つになります。

匂い線香

まず、匂い線香についてですが、こちらは椨(タブ)の木の皮を基材として、各種香木・香料を調合して作られたお線香を指します。
現在家庭用に用いられているものの多くは、この匂い線香になります。

タブの木の樹皮には粘性があり、線香を練るのに適しています。
また、タンニンも含まれていることから、染料として用いられることも。

タブの木についてよく知らないという方も、日本では広く分布している木の一つであることから、一度写真を見れば「ああ、あれね」と見分けがつくかもしれません。

海岸近くでよく見られ、神社などで見かけることもあります。
実はアボカドに近い味がすると言われますが、小さくてえぐみがあるため、食用として用いられることはあまりありません。

原料・香木については、非常に種類が幅広く、その多くは漢方薬などにも使われるような天然の素材です。

先ほどご紹介した高級材の白檀や、微生物の力によって長い年月を経て香木となった沈香(じんこう)、クスノキ科の樹皮を乾燥して作った桂皮(けいひ)、スパイスにも使われるクローブなど、たくさんの種類の素材が組み合わさっています。

杉線香

次に、杉線香についてご紹介します。
杉線香は、杉の葉を乾燥させて粉末にしたものが原料となっている線香です。

主にお墓参り用の線香に用いられます。
独特の香りがする事もあり、煙も匂い線香に比べると多いという特徴があり、外での利用を想定しています。

価格帯も比較的安いため、使いやすい線香と言えます。
ただし、昔ながらの作り方で作ったものを選ぶと、お値段もそれ相応に高くなります。

昔ながらの作り方では、杉の葉を自然乾燥させ、水車の力で葉を一昼夜ついて作るため、電動の機器で作ったものよりも自然な仕上がりになります。

手間がかかる分、どうしても金額が高くなってしまいますが、本職の僧侶の方には人気があります。
理由は、安価な線香に含まれている成分の中に、一部添加物が含まれているものがあるからです。

お仏壇用の線香については、どのようなものを選んだとしても、火を付けて燃焼させる時間はそれほど長くないため、家内の換気をしていれば特に問題はありません。

しかし、僧侶は在家に比べれば線香をたく機会は圧倒的に多いため、喉の痛みを訴える方も少なくないようです。
もし、呼吸器に持病を抱えていて線香が苦手という方は、材料にこだわった杉線香を使うことで、症状が改善される可能性もあります。

線香のつくりかた

少し余談にはなりますが、線香は、どのような流れで作られるのかもここで見ておきましょう。
今回は、お仏壇でよく使われるスティック型の線香に焦点を当ててご紹介します。

1. 原料の粉砕・かくはん
線香を作るのに必要な原料を粉砕して粉末にしたあと、しっかりかくはんします。
2. 練り
かくはんされた原料に、各社の銘柄ごとに調合された香料が加えられます。
この段階では「練り玉」と呼ばれる、直径約30cm、長さ約40cmの円筒形に仕上げられます。
3. 盆切り
練り玉は「押し出し機」と呼ばれる機械に入れられ、巣金と呼ばれるじょうろ状の穴から線状に押し出されます。
押し出されたものは、盆板と呼ばれる板に受けます。
イメージとしては、ところてんを押し出す際に使う「天突き」を想像すると分かりやすいかもしれません。
4. 並べ
盆板に移した線香を、竹でできたヘラを使って「干し板」という板に移し替え、隙間が生まれないようにきっちりと並べます。
5. 胴切り
干し板に並んだ線香を、製品寸法用の定規版に乗せて、カッターで規定の長さに切り落とします。
6. 乾燥
できあがった線香は乾燥場に置かれ、1週間ほど乾燥させます。
このとき、工法によっては、温度・湿度を意図的に調整して乾燥させる場合もあります。
7. 板上げ・仕上げ
乾燥を終えた線香たちは、板上げと呼ばれる検査を受け、それぞれの商品の規定に応じて箱詰めされます。
こうして、パッケージングされた線香が完成します。

線香の価格帯から使い方やニーズを考える

線香を価格帯で大きく分けると、各家庭で使う普段使い用と、葬儀・法事の際に贈る贈呈用とがあります。
普段使い用は比較的安価に手に入るのに対し、贈呈用は高価なものも少なくありません。

以下に、それぞれの特徴にも触れながらご紹介していきます。

1,000円未満のもの

毎日家庭で使うことを想定した、手ごろな線香です。
百均ショップで手に入るような、激安線香もこのクラスに入ります。

重さは小さめのサイズで70g、大きめのサイズで150g程度で、タブ粉と香料を合わせた簡素なつくりになっています。
特に線香にこだわりがない方であれば、このクラスで十分です。

1,000円~2,000円未満のもの

香りがちょっと変わっていたり、煙の量が少なかったりする線香が見られます。
ラベンダーやバラの香り、ハーブをアレンジした商品などがラインナップとなっています。

もっとも安価なクラスの贈答品としてパッケージングされるクラスでもあります。

2,000円~5,000円未満のもの

上等な原料を使っている線香の価格帯で、ほとんどが贈答品です。
白檀・白梅・安息香など、高価なお香に用いられる香木が原料となっている商品も、このクラスから増えてきます。

5,000円~10,000円未満のもの

原料にこだわった線香が、風呂敷や塗箱といったアクセサリーに詰められているようなクラスで、主に贈呈品として購入するものです。

白檀・生薬・天然植物油など、使う人の身体や心を満たしてくれる上質の香りが特徴です。
いわゆる「抹香臭さ」とは次元が違う香りを楽しめる線香が見つかります。

10,000円以上のもの

ここまでくると、個人が使うにはもったいないレベルの高級素材が使われています。
包装や箱にも贅を尽くしたデザインが用いられ、高級原料となる白檀・伽羅(きゃら)などの配合が基本となるクラスです。

寺院向けの贈答品として使われるケースもあるようです。

香典と線香の関係とは?

線香と聞くと、お通夜に供える香典を連想する方もいるかもしれません。
「香」の字が用いられている通り、香典の由来には線香が関係しています。

以下に詳細をご紹介します。

お香が線香に代わってから、香典の習慣が生まれた

江戸時代以前にも、お香の利用は一般的に広く流通していました。
お葬式でもお香は使われていましたが、現代のものに比べると消えるのが早かったため、たくさんのお香が必要になりました。

そのため、参列者はお香を持ち寄って、死者の霊をなぐさめたと言われています。
しかし、線香が開発されたことで、長時間燃えるお香が気軽に手に入るようになると、線香を持ち寄っても余ってしまうようになります。

このような経緯から、お香の代わりに金品を持ち寄るようになったのが、香典の始まりと言われています。

現代でも線香を贈呈する習慣はある

現代でも、香典の代わりに線香を贈呈する地域は少なからず存在し、関係性によって香典を渡すか線香を贈呈するかを決めているところもあるようです。

お葬式には参列したが、法事などに参加するほどの間柄ではない関係の場合などに、線香セットを贈呈するケースが見られます。
丁寧な方であれば、取り急ぎ線香セットを贈り、そのあと香典を渡す方もいます。

香典のやり取りは一括して行うため、喪主側としても大きな負担になることが多いのは、葬儀を経験した方ならご存知かと思います。
それを見越して、落ち着いたころに香典を渡すことで、本心から「何かの足しにして欲しい」という気持ちを示すのです。

贈呈用の線香を選ぶ際は、相手のことを考えて

線香を贈呈する場合、基本的には贈呈用のパックなどを選ぶと思います。
このときに注意したいのは、相手の立場に応じて贈呈する品を決めることです。

一般的に贈り物は、高価であればあるほど気持ちがこもっていると考えがちですが、受け取る側のことを考えると必ずしもそうとは言えません。
妙に高価な線香をいただいても、ご家庭によっては使うことがそれほど多くなく、結局しけって使えないこともあるでしょう。

また、人によっては線香の煙が多いと、呼吸器に悪影響を及ぼす場合があります。
事前にそのような情報を得ているのであれば、少煙タイプの線香を選ぶなどの心遣いを忘れないようにしたいものです。

また、宗派による線香の取り扱い方の違いを考えた贈呈もよろこばれます。
浄土真宗本願寺派の場合、線香は半分に折って火を点け、香炉に寝かせるようにします。

そのため、あらかじめ半分に折れるよう、折り目がついた商品もありますから、そちらを使うと日々のお勤めが楽になるはずです。

おわりに

普段何気なくお参り時に使っている線香も実は非常に奥深いものです。
線香の種類だけを見ても、気軽に購入できるものから、自宅で使うには仰々しいものまで様々です。

葬儀の席でこそ、それなりの数が使われますが、毎日のお勤めでは一日につき数本にとどまります。
自分が気に入った香りのものを奮発するか、どこでも手に入る安価なものを使うか、考え方は人それぞれでしょう。

しかし、どのご家庭でも共通しているのは、線香はお仏壇に「毎日」お供えするものだということです。
贈呈品を選ぶ際も含め、自分・相手の勝手を考えて購入することが大切と言えるかもしれませんね。


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