浄土真宗で使われる仏具の「卓」を解説
前卓や中卓、上卓や華鋲卓や和讃卓について

カテゴリ:【 仏具

金仏壇や唐木仏壇など、高級なお仏壇をお持ちの方であればご存知かと思いますが、お仏壇自体だけでなく、仏具の一つひとつにも深い意味や役割があります。
あまり多くの家庭で使われる仏具ではないですが、卓もその一つであり、用途によって様々な卓が存在します。

この記事では、前卓や中卓、華鋲卓や和讃卓といった、卓の様々な種類についてご紹介していきます。

前卓(まえじょく)・中卓(なかじょく)とは

そもそも、この仏具は読み方から注意が必要です。
卓は一般的には「たく」と読む事が多いですが、仏具においては卓は「しょく・じょく」と読まれることが多いです。

前卓=まえじょく、中卓=なかじょくと表記されます。
ただ、わかりやすいように、仏壇仏具店では卓(たく)と記載しているところもあります。

前卓や中卓は仏像・絵像などを安置する須弥壇(しゅみだん)の前に置いて使用します。
須弥壇はお寺においては本尊を安置する場所であり、お仏壇においても仏様の聖域となります。

仏様にお供えするものを載せるための大切な卓の一つです。
呼び方は前卓と中卓の二つが主ですが、多くの場合、どちらも同じ意味合いで用いられます。

前卓の上には、燭台(しょくだい)・香炉(こうろ)・花瓶(かびん)のいわゆる三具足を置きます。
上部の板は外れるような造りになっており、下須板(げすいた)・天板(てんばん)などと呼ばれます。

法要などがあった場合は、板を取り外し、打敷と呼ばれる敷物を敷いて下の台と重ねて挟みます。

宗派による違いやデザインや色について

前卓は、主に浄土真宗で用いることを想定したデザインとなっています。
そのため、足の形が本願寺派と大谷派で若干異なります。

見分け方としては、卓の足の向きが内向きになっているものが本願寺派用で、外向きのものが大谷派用となります。
それぞれ猫足・丁足などと呼ばれることもあり、この猫足・丁足というのは、卓だけに限らず他の仏具などでも同様の事があります。

足だけで見分けがつかないという方は、筆返しと呼ばれる板の左右両端を見比べると分かりやすいかもしれません。
これは、文机として用いられていた際のデザインの名残で、机の両端に反りをつけて、筆が転がり落ちるのを防ぐ役割があったのです。

通販用サイトの多くを見比べる限り、本願寺派用は先端がくるりと丸まったようなデザインになっているのに対し、大谷派用は末広がりになっているものが多いよう
です。

しかし、あくまでも違いを決めるのは足の造りのため、選ぶ際の参考程度にとどめておいた方が良いでしょう。

前卓は、基本的には大きめの仏壇で、かつ古来から引き継がれたデザインの仏壇に用いられます。
また、多くは浄土真宗で使われる事が多いため、金仏壇に合わせた金装飾の卓がほとんどになります。

しかし最近では、比較的歴史が新しい家具調仏壇やモダン仏壇などにも対応できるよう、ウォールナット製や紫檀、黒檀色などのシンプルなデザインの前卓も販売されるようになりました。

足のデザインにも特に凝った造りは用いられていないため、違和感無く配置することが可能になり、多くの仏壇に合わせやすいタイプも登場しています。

前卓の価格帯

前卓は、デザインもさることながら、大きさによっても金額が異なります。
当然、大きくなればなるほど金額は大きくなります。

浄土真宗で用いられることを想定したデザインのため、金箔をあしらったデザインが主流ととなっています。

ただし、家具調仏壇などに使用することを想定した簡素なデザインのものは、そういった装飾が無く価格も控えめな前卓も多くあります。
ご自宅のお仏壇の規模に合わせて、実際に手に取って選ぶのが良いでしょう。

華鋲卓(けびょうじょく)とは

前卓よりも一回り小さめの卓で、須弥壇の上に載せる机になります。
上卓(うわじょく・じょうたく)とも呼ばれ、こちらも先ほどの上卓や前卓と同様に浄土真宗の宗派で主に用いられます。

こちらには筆返しは基本的にありません。

本来は焼香に用いる火舎香炉(かしゃこうろ)・仏様に捧げるご飯を盛る仏飯器(ぶっぱんき)・阿弥陀如来の功徳を象徴する「水」をさす華鋲(けびょう)などの仏具を置きます。
配置としては須弥壇の上部、仏像・絵像の近くに配置することになります。

上卓にも取り外せる板があり、打敷を挟むことができます。
そのため、宗派によっては上卓・中卓両方に打敷を飾るケースもあり、そういった場合は「上付」といった形で書かれています。

ちなみに上卓は、小型のお仏壇であれば置くスペースを確保するのが難しいため、使用しないケースが多いです。
あくまでも大きめの仏壇に本格的に祀る際に用いると考えて差し支えなく、いわゆる大型金仏壇といった形でないとスペース的に設置が難しい仏具になります。

宗派によるデザインの違い

上卓も宗派の違いやデザインなど、基本的には前卓と同様と考えて差し支えありません。
猫足や丁足など、東西でわかれているので、本願寺派、大谷派それぞれ自分の宗派にあわせて選びましょう。

現代の傾向としては、あまりデザインにこだわらずに選ぶ方も少なくなくなってきました。
しかしながら、お寺によっては厳密に規格を決めていることもありますから、初めて購入する場合は一度相談するのが無難です。

ちなみに、家具調仏壇向けの華鋲卓というものは、原則専門に販売されているものはあまり存在しません。
ただし、クリスタルガラス製の小さな台などといった、現代風にアレンジされた卓は少なからず存在していますので、どうしてもという場合は仏具店などにも相談してみましょう。

華鋲卓の価格帯

前卓に比べるとサイズも小さいことから少々安めになります。
1万円いかないくらいの値段で購入できるはずです。

とはいえ、高いものを選べばそれなりに値が張りますから、本格的な金仏壇をお持ちの方は、10,000~50,000円程度の価格帯を想定しておくと安心です。

華鋲卓は前卓ほどのニーズは無いため、家具調仏壇に特化した商品を見つけるのは難しいかもしれません。

和讃卓(わさんじょく)とは

お仏壇の下段に配置する卓で、和讃箱(わさんばこ)という仏具を安置するための卓になります。
基本的にはお勤めのための本を置く場所になりますので、鈴・線香・ろうそくといった仏具などを置かないようにしましょう。

時折、経机と混同している方も少なくありませんが、お仏壇の世界では全くの別物なので注意してください。
経机は仏壇の前に置く仏具になりますが、和讃卓は仏壇の中に設置するタイプになります。

ちなみに和讃箱は、浄土真宗の開祖である親鸞聖人によって著された本を納めるための箱で、三帖和讃(さんじょうわさん)・正信偈(しょうしんげ)などの本が納められます。

いずれも浄土真宗では重要性の高い内容になり、正信偈は浄土真宗にとって大綱とも言える内容になります。
ただし、このあたりは菩提寺や地域・宗派によって若干の違いがある可能性がありますから、実際に購入する際に相談すると良いでしょう。

和讃箱自体は、お勤め以外の場面ではお仏壇の中にしまっておきます。
法要の際に持ち出し、和讃卓に置く形になりますので、あくまでも儀式用と考えると分かりやすいかもしれません。

また、比較的大きめの仏具になりますので、これらも他の卓と同様に大型の金仏壇や本格的に祀ったりしている方でないと設置スペースもないため仏壇に合わせて考えましょう。

宗派によるデザインの違い

デザインの違いについては、他の卓とほぼ同様で、本願寺派と大谷派に分かれます。
和讃卓は前卓と同様に、筆返しがついている造りのものが多いです。

装飾も凝ったものが少なくなく、基本的には金仏壇で用いるデザインのものがほとんどです。

和讃卓の価格帯

彫りの種類や金装飾の豪華さによって、値段が分かれる仏具になります。
とはいえ、それほど大きいものではありませんから、10,000円程度で購入できるものも少なくありません。

もちろん、金を使った仏具になるため、豪華な装飾のものであれば、かなり高価な仏具になる事もありますが、一般家庭向けであればあくまでも少数ですし10,000円前後で基本的な品質のものは手に入れられるはずです。

御文章台(ごぶんしょうだい)とは

卓とは違いますが、同様の役割を持つ御文章台という仏具もあります。
お仏壇の外、左側に配置し、御文章箱(ごぶんしょうばこ)と呼ばれる箱をその上に置きます。

ここで言う御文章とは、写経などの写しを保管しておくなどの意味合いではなく、浄土真宗における蓮如(れんにょ)上人が広めた教えが書かれた文章のことを指します。

浄土真宗と聞くと、開祖の親鸞が有名ですが、その布教には多くの僧侶が携わっていました。
特に蓮如上人の生まれた時代は戦国の世の幕開けであり、その生きざまも壮絶だったと言われています。

六歳で親と離れ、貧窮の中学問に勤しみ、統一感を欠いた浄土真宗の教義をまとめるべく、東奔西走していたのです。
比叡山からは敵とみなされ、大谷の本願寺を焼き討ちされるなどの苦難に見舞われながらも、逃げ延びた北陸の地・吉崎にて、村々で布教活動を行いました。

このとき、文字が読めない村人たちにあてて書きしたため、集会(お講)で読み聞かせたものが御文章です。
このような地道な活動が、北陸地方において浄土真宗の信仰基盤を固める要素の一つとなりました。

宗派によるデザインの違い

こちらは基本的に浄土真宗のみが用いる仏具であり、デザインは浄土真宗の宗派によって異なる場合もありますが、ほとんどはデザインを共有されています。

御文章箱も同様で、箱の形に大きな違いはありません。
箱のデザインだけでは見分けはつきませんが、多くは宗紋が蓋の上部に側部に装飾されているため、それを見る事で宗派が分かります。

それ以外のデザインは大きく変わりはありません。

御文章台の価格帯

御文章台は、安いものであれば10,000円を切ります。
高くても20,000円前後を相場と考えておけば良いでしょう。

御文章箱がセットになって販売されているものもあります。
御文章箱だけで購入する場合も値段には差がありますが、値段でデザインに大きく差がつくわけではありませんから、それほど高いものを選ぶ必要はありません。

卓の造りと選び方について

卓を選ぶ際に、よく造りの名称が紹介されているものがあります。
上前彫りなどという名称で呼ばれているものです。

これらは基本的に宗派とは関係がありませんから、選ぶ際に特段気を配る必要はありません。
とはいえ、造りはある程度分かりやすい違いがありますから、選ぶ際の留意事項として、主要な造りの概要についてもご紹介していきます。

上前(じょうまえ)彫り

卓の中では一番スタンダードな造りで、あえて卓の造りにランクを付けるなら一番下の位になります。
卓を真正面に見た際に、中央の装飾部分のみが彫られている造りになります。

値段も手ごろであり、唐木仏壇にも用いられるような色合い・デザインのものもあります。
一般家庭用であれば、この上前彫りを選ぶのが無難で多くの方がこの卓を選びます。

前三段(まえさんだん)彫り

上前彫りと見た目はあまり変わらないように見えますが、一つだけ大きな違いがあります。
それは「足部分に彫りがあるかどうか」です。

卓の一番下、足の部分の装飾はあまり見る機会がありませんし、また、他の仏具の陰となり隠れてしまう事もあり、本当に一部の人しか気にしない箇所ではあります。

しかし、上前彫りよりはその分ランクは高くなり、価格も高くなります。

三段(さんだん)彫り

前三段の彫りに加えて、側面にも彫りをほどこした造りのことを指します。
三段彫りの多くは、このほかに「裏金」という工程が加わっているものが多いようです。

卓をひっくり返してみると、裏面には金箔などの装飾がなされていないものがほとんどです。
しかし、裏金の工程を経たものは、裏を返して見ても金装飾がほどこされています。

見た目にも贅沢さが分かりますし、その分お値段も高めです。
一部の特殊な造りを除いては、最高ランクと言っても差し支えないでしょう。

造りにこだわるよりは、まずは自宅のお仏壇に合うかどうか

彫りの技術は確かに美しいものですし、高価であればあるほど装飾も派手になる傾向があります。
しかし、必須でない仏具の設置を省略するご家庭が多くなっている中では、ここまで造りにこだわって選ぶ方は少なくなってきています。

事実、仏具を取り扱っているお店の多くは、造りの違いについて質問されても回答できないケースがほとんどです。
実際に仏具製作所に問い合わせれば、職人さんによっては丁寧に教えてはくれますが、この部分が卓を選ぶ決め手になることはまずありません。

悪質な業者から身を守るための予備知識として持っておくには有力ですが、この点を購入の決め手とする必要はありません。
まずは、ご自宅のお仏壇とのマッチングを優先しましょう。

仏具の卓のまとめ

卓には多くの種類があり、それぞれ上に載せるものが異なることがお分かりいただけたことと思います。
特にインターネットで写真などで調べて検索していると、サイズ感がわからず、全て似たように見えてしまいます。

しかしながら、そもそも卓は大型系のお仏壇で本格的に祀る方向けのお仏壇です。
ミニ仏壇や小型の仏壇の場合は、そもそも設置スペースを仏壇の中に確保することすら難しくなります。

しかし、過去にもご紹介してきた通り、全く意味をなさない仏具というものは存在しません。
仏様・ご先祖様を篤く信仰する気持ちが、様々な装飾技術や仏具を生み出していったのです。

特に卓の場合、浄土真宗という宗派に深い縁がある仏具のため、紐解けば開祖にまでさかのぼっていくことにもなります。

卓という仏具について知ることで、浄土真宗という宗派が日本にどれだけの影響を与えてきたのかがうかがえます。
現代の流れでは省略も止む無しというご家庭も少なくありませんが、せっかく大きなお仏壇をお持ちであれば、購入を検討する時間を設ける価値はあります。

しっかりと卓の種類や知識を身に付け、造りの美しさにも目を向けて、納得できる造りの卓を選んでいきましょう。


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