仏壇を華やかに装飾してくれる吊仏具
瓔珞や灯籠、輪灯や天蓋などの用途と選び方

  • 2018.06.14
  • 2020.04.06

仏具

お仏壇に祀る仏具には様々な種類があります。
ほぼ全ての仏壇に祀るような仏具もあれば、特定の時だけや、昔ながらの伝統的な本格的な祀り方の時に使うものもあります。

今回は、そんな中でも吊仏具とよばれる仏具についてまとめています。
吊仏具は、お仏壇を美しく装飾するための仏具には、魔よけの意味もこめられています。

かつて古代インドにおいて、王族たちが手首・腰・頭部に装飾品として身に着けていたものが、仏教文化に取り入れられたのが始まりとも言われています。
今回は、代表的な吊仏具について、それぞれの持つ意味についても触れながらご紹介していきます。

仏具の瓔珞について

そもそも瓔珞とは

瓔珞は「ようらく」と読み、仏像・寺院・お仏壇などに飾られる、塔状の飾りものです。
サンスクリット語で「真珠の首飾り」の意味を持つ「ムクターハーラ」が語源と言われています。

瓔珞という漢字が難しいため、一度見ただけではすぐに読めなかった方も多いと思いますが、この漢字を当てているのも、それぞれに理由があります。

「瓔(よう)」は、「珠(真珠)のような石・首飾り」という意味を持ちます。
「珞(らく)」には「まとう」という意味があります。

現代風に訳すと「宝石をまとったかのごとく美しい飾りもの」といった感じでしょうか。

デザインは幅広く、蓮の花がモチーフになっているものが主流です。
しかし、一部の特異なデザインとして、しゃれこうべや蛇をモチーフにしたものもあります。

こちらは主に密教系で使われます。

なぜこのようなデザインが生まれたのかというと、神仏習合により、仏教の世界に新たな神様が生まれたことが一因と言われています。
大黒さまなどは日本の大国主命と習合した神様として有名ですが、このような経緯が仏教の世界をより奥深いものにしているのです。

ちなみに、菩薩像などの仏像を見ても、首・胸部の周囲に美しい瓔珞を身に着けていることが分かります。
菩薩は一般的に、お釈迦様が悟りを開く前の状態を示しているため、王族であった頃の名残として瓔珞を身に着けているのです。

対照的なのが悟りを開いた後のお釈迦様の姿で、如来像などによって現わされます。
一枚の衣をまとっただけの、裸身に近い姿で表現されていることが多く、一切の装飾具を身に着けていません。

このことから分かるように、瓔珞は仏壇の装飾具としては必ずしも必要なものではありません。
しかし、仏様の世界を華やかに飾りたいという子々孫々の意味も込められており、亡くなったご先祖様が住む世界をきらびやかにしたいという気持ちから飾っているお家も多いです。

宗派と先祖供養が結びついた、日本ならではの考え方の一つと言えるかもしれません。

瓔珞の飾り方

瓔珞は、基本的には一対を基準として飾り、それ以上の数を用いても大丈夫です。
一対飾るだけでも、お仏壇のなかがキラキラと輝くように見え、荘厳な雰囲気になります。

仏壇の天井や、屋根の上にぶら下げるスタイルのものがほとんどです。
素材としてはアルミに金メッキを施しているものが多く、安価で購入できます。

木製で本金箔押し仕上げの手の凝ったものもありますが、その分お値段は高くなります。
サイズも幅広い種類がありますから、お仏壇の大きさに合わせて選ぶのがよいでしょう。

瓔珞のお手入れ

お仏壇の掃除に取り掛かる際、瓔珞はどのようにお手入れするのがよいのでしょうか。

瓔珞は、素材の種類によって掃除の仕方が変わります。
真鍮製の地金で作られたものであれば、金属磨き剤で磨いて汚れを取ることも可能なのですが、先ほどご紹介した通り、瓔珞については金メッキの製品も少なくありません。

安易に磨くとメッキが剥がれてしまう恐れもありますから、柔らかい布で軽く汚れを拭き取るくらいの掃除で問題ありません。

自分で掃除すると傷をつけてしまわないか心配な方は、仏壇店で仏具の洗濯をお願いするという方法もあります。

宗派の違いについて

瓔珞は、基本的にはほぼ全ての宗派で用いられます。
浄土真宗においては一部違いがあり、本願寺派は一般的なデザインのものを使用するのですが、大谷派では輪灯を下げた竿に瓔珞を飾った「輪灯瓔珞」が用いられます。

また、浄土真宗ではそもそも瓔珞を飾らないというお家も少なくありません。
これは、瓔珞に代わる「輪灯(りんとう)」という仏具が、浄土真宗では用いられているためです。

なお、輪灯は浄土真宗特有のもので、詳細は後述します。

仏具の灯籠について

そもそも灯籠とは

灯籠は燈篭などと書かれることもあり、「とうろう」と読みます。
先ほどの瓔珞と同様に、お仏壇においては吊り下げて飾るデザインのものが一般的です。

一部、お仏壇の内部に飾る置き型のデザインで、置灯籠と呼ばれる仏具もありますが、こちらは必ず置く必要はありません。

お仏壇の仏像・位牌を照らし、お仏壇の内部を明るくしてくれます。
光を入れることにより、きらびやかに見えるようになるのが特徴です。

灯籠をしようする理由の一つに、仏教が持つ火に対する信仰心が挙げられます。
古代に存在した拝火教(ゾロアスター教)に代表されるように、火自体は昔から信仰の対象とされてきました。

仏教においては、火は智慧の証であり、闇を照らし浄土へと衆生を導く光とされてきました。
また、お釈迦様の言葉にも「自らを明かりとし、法を明かりとせよ」との言葉があります。

このことから、灯籠の明かりは煩悩を打ち消し、仏様の智慧を象徴するものとして大切にされてきました。

灯籠は発生から歴史が古いこともあり、素材・種類ともに様々なものがあります。
木材・紙などの素材で作られた簡素なものから、石材・金属を使った屋外用の灯籠まで、幅広い種類があります。

もともとは寺院建立に合わせて作られていましたが、神仏習合により神社でも献灯用に使われるようになっていきました。
照明器具としての顔もあり、亜流として行燈(あんどん)・提灯(ちょうちん)・灯台(とうだい)などに姿を変え、近現代まで私たちの暮らしに明かりを灯してくれていました。

お仏壇で使われる灯籠の光源は、かつてはろうそく・油などを用いていたものが、安全性を考慮して豆電球・LEDへと移り変わっていきました。
しかし、灯籠越しに見るやわらかな光に変わりはありません。

灯籠の飾り方

灯籠の飾り方は、瓔珞同様に一対で飾ります。
仏壇天井・屋根にぶら下げて飾るのは一緒ですが、場所としては瓔珞よりも内側にかける場合と、外側にかける場合があります。

このあたりは地域差・個人差があり、宗派でもまちまちになります。
飾り方が厳密に定められている仏具ではありませんから、採光も考え柔軟に飾り付けて問題ありません。

置き灯籠と吊り灯籠

灯籠において、特筆すべきは先ほども軽く書きましたが、灯籠には吊り下げ型のものと置き型のものとがあるということです。

どちらを使用しても差し支えありませんが、置き型のものは、お仏壇内の配置の都合から使用を考えるケースも多いようです。
小さな仏壇の場合、どうしても最低限の仏具のみの配置でいっぱいいっぱいになってしまうため、経机に灯籠を設置する方も少なくありません。

瓔珞や他の仏具で思ったよりも上部のスペースを取ってしまったという方は、置き型を検討してもよいでしょう。

小型の仏壇だけではなく、最近主流の1つになってきている家具調仏壇やモダン仏壇なども、天井に吊り下げる事ができない造りになっています。

唐木仏壇や金仏壇であれば吊り灯籠が使えますが、モダン仏壇の場合、そもそも吊り下げる事ができません。
そういった場合で、灯籠を使いたい場合は、置き灯籠を使うという選択肢になります。

灯籠のお手入れ

灯籠の多くはアルミ製のものを金メッキしているので、基本は乾拭きとなります。

輝きを保ちたいのであれば、こまめにほこりを払う必要があります。
ある程度信頼のおけるブランドものであれば、合金のものが使われたりしていますから、金属磨きで汚れを落とすことも可能です。

吊灯籠に比べると置き灯籠の方が、形状・配置の面から掃除しやすいという利点があります。
特にこだわりが無い方は、このような点から置き灯籠を選ぶという選択肢もあります。

宗派の違いについて

灯籠は、宗派によって原則的に用いられる灯籠が異なりm主要なものは大きく分けて二つあります。
以下に、概要をご紹介していきます。

隠元灯籠(いんげんとうろう)

浄土真宗以外の宗派で使用します。
一般的に灯籠と言うとこちらを示す事が多く、吊灯籠の一種で、上下の装飾・美しい透かし模様が特徴です。

外部の装飾・透かし模様のどちらに凝っているかや、灯籠自体の大きさなどによって値段が変わります。

たまに、お盆の時期に飾ることを想定したデザインの灯籠が、隠元灯籠として販売されていることもあります。
しかし、隠元灯籠とはあくまでも形状の名称であり、お盆にのみ使われるものではありませんから、特に使い分けをする必要はありません。

他の灯籠の同様ですが、現代のデザインでは豆電球もしくはLEDを光源とする設計となっているため、安心して光を灯しましょう。

金灯籠(きんとうろう、かなとうろう)

浄土真宗系の宗派で多く使用される灯籠です。
銅の部分が六角形の形をしており、全面的に金属特有の輝きがあります。

特徴として、浄土真宗の宗派で形状が異なり、特に足の部分に大きな違いがあります。

一つは猫足と呼ばれるもので、足部分にふくらみがあり、足先に行くにつれてしぼんでいく造りが特徴です。
こちらは、浄土真宗本願寺派で多く使用されます。

これに対してもう一つが丁足と呼ばれるもので、葉に角を付けて折り曲げたような形の足を持っています。
葉紋がきれいに整っているのも特徴の一つで、こちらは浄土真宗大谷派で多く使用されます。

基本的な宗派の違いはありますが、あまりにこだわり過ぎると、そもそも置き灯籠を選んだ場合はどうするのかといった疑問が生まれます。
大前提は、ご先祖様をお祀りすることですから、迷ったらその点に立ち返って柔軟に考えるようにしましょう。

仏具の天蓋について

そもそも天蓋とは

天蓋とは「てんがい」と読み、瓔珞と同様に、仏壇の飾りとしての意味を持つ仏具です。
本来は、インドの王侯貴族たちが強い日差しを避けるために使われていた「傘」のようなもので、しばしば権威の象徴として紹介されます。

高級リゾートホテルなどで、ベッドに天蓋が付いているものもありますが、天蓋の中で眠ると何となくお姫様になったような気分を味わえます。

仏教における伝説の一つとしては、帝釈天が天蓋を差し掛けることで、釈迦に従う意思を示したことが挙げられます。
仏様の徳が具体化した一例とも言われ、ご先祖・仏様の「高貴さ」を示す仏具と言えます。

天蓋の飾り方

天蓋は、仏壇天井・屋根の中央に飾ります。
御本尊として祀る仏像の上に、天蓋がかかるような位置にすることで、より荘厳なイメージになります。

大きさに差があるため、お仏壇の大きさに応じたサイズが選びやすいのが特徴です。
もともと、お仏壇を購入したときに一緒にパッケージングされていることもあり、新たに購入する必要が無いケースもあります。

素材はプラスチック製に金箔をあしらったものと、木製のものがあります。
木製のものには金箔をあしらったものもあります。

純木製であればお値段が安く済むものもありますが、金仏壇などを使用している場合は浮いてしまいます。
よって、木製は唐木仏壇や家具調仏壇などの場合に考える選択肢になります。

吊り下げ型だけではなく、最近ではスタンド式のものや、スタンド式と合わせて使える形の天蓋も増えてきています。

天蓋のお手入れ

木製・プラスチック製ともに、乾拭きやはたきでのほこり取りが主になります。
金箔がはがれないように、できるだけ力を入れずにお手入れすることが大切です。

特に天蓋は、瓔珞と異なり大きめのデザインになっているため、面倒ですが必ず取り外してお手入れをした方が安全です。
万一外れてしまった場合、仏像や位牌などに傷が付いてしまう可能性もありますから注意が必要です。

また、灯籠や瓔珞に比べると、天蓋は金額もそれなりにします。
瓔珞や灯籠は、数千円から手に入りますが、天蓋の場合、比較的安価な通販でも数万円~と考えておいた方が良いので、くれぐれも大切に取り扱うようにしたいものです。

宗派の違いについて

天蓋は、宗派によって用いるかどうかが変わるタイプの仏具ではありませんが、デザインによって自然と用途が分かれます。

浄土真宗であれば基本は金仏壇となりますから、金メッキ・金箔などの装飾が施されたものを使った方が、景観を損ないません。

そのほかの宗派であれば、仏壇の種類によって、木製の素朴なものにするか、金箔をあしらったものにするかを自由に選べます。
お家の事情に合わせて選べる仏具と言えます。

仏具の輪灯について

そもそも輪灯とは

輪灯とは「りんとう」と読み、灯火具の一種でになります。
主に浄土真宗系の宗派でのみ使用する仏具で、輪が付いている油皿に吊り具を取り付け、天井で固定して使用します。

古くから使われている灯火具を模したデザインとなっていますが、現代では火災防止の観点から、直接火を灯すことはまずありません。
そのため、灯籠と一緒に設置して、明かりはそちらで点けるような形になります。

瓔珞をご紹介した際に、輪灯瓔珞という種類のものがあることはご紹介しましたが、輪灯と瓔珞を別々に組み合わせて飾るお家もあります。
また、浄土真宗内でも様々なデザインがあり、原則としては宗派によって分かれています。

輪灯の飾り方

輪灯は、仏壇の天井から一対で吊るします。
他の吊り下げ型の仏具の邪魔にならないように、瓔珞の近くに配置する例が多いようです。

瓔珞を飾らず、輪灯だけを飾るお家もあります。

輪灯のお手入れ

輪灯については、真鍮製のものがほとんどで、お値段もそれなりに張ります。
金メッキされたものであれば、10万円を越えてくる輪灯もあります。

それゆえ、お手入れにも一工夫必要で、本来のやり方であれば、本体を細かく分解して磨く必要があります。

浄土真宗で主に用いられる表現の一つに「お磨き」というものがあります。
これは、真鍮製の仏具を心を込めて磨き、仏様に対して感謝と尊敬の意を示すものです。

もし分解したあと、再度同じ形にする自信が無い方は、仏具店に問い合わせて磨いてもらうのも一つの方法です。

輪灯の宗派による違い

輪灯は、同じ浄土真宗であっても、宗派によって使う種類が異なります。

本願寺派の場合、輪と皿の部分に、菊の花の装飾が施されたものを用います。
このため、「菊輪灯」と称されることもあります。

大谷派の場合、油皿を乗せる皿に輪が付いただけの、比較的シンプルなデザインのものを用います。
輪灯瓔珞に使われている輪灯もこのタイプが多いです。

吊り仏具のまとめ

お仏壇に飾るお飾り一つひとつにも、仏教が持つ歴史・由来がこれだけあることに驚いた方も多いかもしれません。
仏教自体、基本的にはインドで生まれたものなので、その由来の多くがインドの生活様式に即したものになります。

日本でも独自の進化を遂げた仏教は、お飾りにもそれぞれの特徴を打ち出すようになっていきました。
しかし、その根本はやはり、先祖・仏様に対する感謝・尊敬の念が根底にあります。

ただ準備するだけでなく、実際に配置してからは、きちんと手入れをすることも大切です。
特に吊り仏具は、お仏壇によってそもそも置く事ができるのかどうかの問題もでてきます。

お仏壇のサイズなどによっては、祀ろうと思ってもスペースが無いといった事も出てきます。
基本的に全ての場合において祀るような「花立」や「火立」「香炉」といった仏具とは少なからず特徴が異なります。

吊仏具によってはお値段も決して安くはありませんから、家族でよく話し合ってから、本当に必要なものを考えて選びましょう。

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  • 公開日:2018.06.14
  • 更新日:2020.04.06

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