プリント調、薄板・厚板貼りに練りなど
お仏壇の加工方法の違いと特徴を徹底解説しました

  • 2018.04.19
  • 2018.09.13

仏壇

お仏壇の購入を検討する際に、見慣れない言葉をカタログで見つける方も多いと思います。
多くの方は初めてお仏壇を買うという方が多いため、仏壇の加工や質などに関する知識のある方は、あまり多くないのが実情です。

とはいえ、お仏壇は買った後はずっと安置し使って行くものです。
その分だけしっかりと品質と価格のバランスなどを見て行かなければなりません。

今回は、そんなお仏壇の質を比べる時に参考になる、お仏壇の加工方法について解説してみたいと思います。

仏壇の加工方法は実に様々な方法・手法がある

お仏壇と一言で言っても、実際には様々です。
種類だけでも豊富にあり、さらにはそこから技法や手法、加工方法など様々です。

当然ながら、価格を抑えるための手法もあれば、質にこだわりぬいた非常に高級でもあり高品質に仕上げる方法などもあります。

どれもメリットとデメリットが介在しますから、自身の求める仏壇がどういうものかを考えながら、選ぶように心がけましょう。

お仏壇をネットや店頭での表示でどこを見ればいいのか

ネットや店頭等における表示・広告等における表示は実際に正式に定められてはいません。
とはいえ、今の主流としては、仏壇公正取引協議会という任意の団体が「仏壇公正競争規約」として、表示例を設けています。

ただし、注意が必要なのは法的なルールなどではなく、あくまでもただの1団体が推奨しているルールであり、規約とされているのも、その団体に属する方向けに、こういうルールで書くようにしなさいという規約で、非団体の方にはなんら影響がないルールになります。

仏壇公正取引協議会については、下記にも解説していますので参考にどうぞ。

仏壇公正取引協議会に協賛の仏壇店は本当に信頼できるのかどうか
よく、お仏壇を買おうと悩んでいる方から聞かれる事の1つがこれです。 お仏壇を買う時に、この協議会に協賛しているショップの方がやはり安心ですか …

お仏壇の加工方法に関する項目を確認するには、以下の項目を見る必要があります。

  • 正面表面材
  • 芯材

上記の中でも正面表面材は、端的に説明すると、扉を閉じたときにお仏壇を真正面から見た箇所を指しています。
内訳は、3つに分かれており、台輪(だいわ)・戸板(といた)・大戸軸(おおとじく)の項目に分かれています。
※大戸軸はモダン仏壇にはなく唐木仏壇のみの表記になります。

また、芯材は主に「主芯材」と「扉芯材」の表記に分かれます。
ただ、今のお仏壇においてはほとんどの仏壇で、主芯材も扉芯材も同じものを使う事が多いです。

これらの箇所は、お仏壇の質感を一目で表現する役割を担っていますから、質を確認するうえで大いに参考になります。

多くの場合、下記のように表される事が一般的です。

正面表面材(台輪)○○
正面表面材(戸板)○○
正面表面材(大戸軸)○○
主芯材○○
扉芯材○○

これらを押さえたうえで、加工方法の詳細に迫っていきましょう。

プリント調、木目調プリント、調着色

色々な記載がありますが、ほとんどが同じ意味になります。
簡単に言えば、名前の通り、お仏壇に使う木目と同じ模様をプリントしたものになります。

使われ方としては
「紫檀調プリント」「木目調プリント」「プリント調着色」といった書かれ方になります。

「転写」という技術を使い、芯材に直接唐木の木目を印刷したり、唐木の木目が印刷されたシートを貼り付ける方法を取っている工法を指します。
厳密に言うと、プリントと書かれている分は印刷されたシートを貼り付け、着色と書かれているものが、心材に直接印刷しているものになります。

この技術によって、安価に美しい見た目を整えることが可能になりました。
宗派や置き場所にこだわらない、安価な家具調仏壇などは、主にこの技術で作られているものが多いのが特徴です。

難点は、直射日光や湿気のあるところなど、温度変化のある場所に安置した場合は、シートがはがれる現象が見られることです。
とはいえ、お仏壇を置く場所はあまり日光が当たらないところに置くためそこまで神経質にならなくても良いかもしれません。

ただし、一度プリントがはがれてしまった場合、箇所によっては修復が困難な場合もあります。
これは「芯材」に使用されている木が経年劣化することによって元の形状を失い、貼り替えが難しくなるためです。

少し話は脱線しますが、工法を説明するうえで避けては通れないキーワードがいくつか出てきましたので、以下にご紹介していきます。

転写とは

一般的に言う転写とは、文章や図といった情報を他の面に写し取ることを言います。
お仏壇で言えば、唐木の木目を印刷した塩化ビニル素材のシートを、芯材に貼りつける方法が一般的です。

近年はプリント技術の向上により、芯材に直接木目を印刷することが可能となりました。

そもそもの芯材とは

芯材とは、お仏壇の表面ではなく、表からは見えない中身、すなわち骨組みに使用されている材木のことを指します。
仏壇公正取引協議会では、主に以下の区分と、それに対応する材料が定義されています。

区分材料
天然木材材料:天然木
天然合板材料:ラワンベニヤ・シナベニヤ・その他木合板
木質繊維板材料:MDF・その他繊維板

天然木材は、十分に乾燥させてから使用しなければ、組み立てる際に狂いが生じやすいというリスクがあります。
その反面、木質繊維板などに比べて耐水性が強く、釘やネジの保持力が強いのが特徴です。

芯材の区分上では、天然木材が耐久性が最も高いため、高級品では必須素材の1つになります。

天然合板は、天然木材同士をはぎ合わせた板を指します。
天然木材に比べて耐久度は劣りますが、狂いが生じにくい利点があります。
薄くて面積の広い部分に適した材料で、仏壇では天井・側面・棚板などに使用される例が多く見られます。

木質繊維版の代表的なものには、MDFという材料があります。
MDFとは、ミディアム・デンシティ・ファイバーボード(Medium density fiberboard)の略で、パーティクルボードとも呼ばれます。

木材チップを原料とし、これを蒸気によって加熱し・木材を繊維の状態まで解離したものに、合成樹脂を加えて成形します。

安価で加工性に優れ、組み立てる際に狂いが生じにくい利点がある反面、チップが細かいほど生木が本来持つ性質が失われる難点があります。
具体的には、水に弱い、釘・ネジの保持力が弱いという欠点として表面化します。

このことから、お仏壇における「加工」とは、芯材に対してその上から施すものと捉えると、理解が早いかもしれません。

薄板貼り(突き板)とは

薄板貼りと呼ばれる加工法があります。
実は今は薄板貼りと呼ばれていますが、以前は「突き板」と表記されていました。

これも、先ほど紹介した「仏壇公正取引協議会」が決めたルールになります。
そのため、昔のお仏壇店などの店員さんたちは、今でも突き板という表現で話される方がいます。

厚さ0.1mm~0.8mm程度の薄さの板を芯材に貼ったものを指し、紙一枚の厚さとも称されます。

プリント調と異なり天然木を用いた突板を貼り付けるため、色褪せが少なく工法にも技術が必要という点から、プリント調よりも値段設定が高いのが特徴です。

見る人が見ればプリント調との違いは一目瞭然ですが、あまりお仏壇を身近で見る機会が無い方の場合、見分けるのが難しいようです。
それもそのはずで、プリント調の技術は日々向上しており、一見しただけでは変わらない出来栄えのものもあります。

実際に店頭で質を確認する場合、表面が光を良く反射するかどうかが見極めのポイントの1つになります。
また、プリント調はあくまでもプリントなので、いわゆる木特有のざらざら感といったものはなく、ツルツルになります。

シートを表面に貼っている場合、仏壇店のライトによるテカリが強いものが見られます。
プリントされた木目が、よく見ると左右の柄が不自然になっている、もしくはそれに近い場合も、店頭表示を確認する際の目安になります。

安価さと耐久性を考えた場合、購入する側としては一番バランスの良い加工方法とも言えます。

厚板貼りとは

厚さ3mm以上の厚さの板を芯材に貼ったものを言います。
従来は「練り」という呼称でしたが、これも「仏壇公正取引協議会」による取り決めによって、この名称で呼ばれるようになっています。

ですが、これらも同じように法的にこう呼ばなければならないといった事はないため、昔ながらのお仏壇屋さんなどでは「練り」と表記していたり説明で出てくる場合もあります。

そもそも練りとは

狭義には、先ほどご紹介した厚板貼りと同義になります。
一般的には、芯材に対して別の板を貼り合わせることにより、強度を高める技術の1つとして認知されています。

主に仏壇の大戸軸の加工方法として用いられますが、製品によっては台輪や戸板にも使われる場合があります。
貼り合わせた面の数に応じて、細かく呼び名が変わるのが特徴です。

基本的にはより材料を多く使用しているほど重厚な造りになっており、耐久性にも優れています。

そもそも練りの技術が生まれた背景には、二つの大きな理由がありました。

  • 高価な木材の使用箇所を減らし、予算を節約したかった。
  • 木材の反りを防ぐため、反りにくい別の木材を芯材に使い、仏壇を長持ちさせたかった。

木材が反る理由は、木の繊維に吸湿性があるためです。
木材は大気中の湿度の変化に対応するため、水分を含んで膨張したり、逆に吐き出して収縮します。

この膨張・収縮の割合が常に均等であれば、理論上は反りは発生しません。
しかし、一部熱帯地域のように、年間を通して気温・湿度がほぼ変わらないなどの条件が揃わない限り、現実的にはそのようなことは起こらないと考えた方が自然です。

反りが発生すると、扉が閉まらなくなってしまったりするような、不具合が起きるリスクが高くなります。
そのため高温多湿の日本では、十分に乾燥させた芯材を用いたうえで高級木材を一部に利用して、耐久性の高い仏壇を作る手法が生まれたのです。

また、練りの工法を取り入れることによって、より微細で芸術性の高い細工が可能になります。
芯材を傷つけずに幅のある造作を可能にしますから、制作者の技法・センスがより反映されやすくなります。

このように練りの技法がお仏壇では取り入れられています。
しかしながら、先に説明したように、「練り」という表現は今は使われない方向になり代わりに使われているのが「厚板貼り」とされています。

薄板貼り(突き板)と厚板貼り(練り)の違いとしては下記のようになります。

薄板貼り0.1~0.8mmの薄さの板を芯材に貼ったもの
厚板貼り3mm以上の厚さの木材の無垢板を芯材に貼ったもの

また、練り、厚板貼りには、貼り合わせる面の数ごとによって、呼び方も替わり、質や値段も変わっていきます。

厚板貼り(前練り)

芯材の前方(主に見える部分)に、板を貼り付けた工法を指します。
お店によっては「練り」と一言で言うと、この前練りを指すこともあります。

実際のカタログなどでは、「厚板貼り」と表示されます。

二方厚板貼り(二方練り)

両面練りとも呼ばれます。
芯材の前方と後方に、板を貼り付けた工法を指します。

板によって芯材を固定する効果が期待できるため、仏壇の戸軸を狂わせないための工法としても有効です。

三方厚板貼り(三方練り)

芯材の前方及び後方・側方に板を貼り付けた工法になります。
ここまで来ると目視できる部分はほぼ厚板が貼られた状態になります。

そのため、造り手としては内部の造作を工夫しやすくなります。

四方厚板貼り(四方練り)

総練りとも呼ばれます。
芯材の可視部分全て(四方)に板を貼り付けた工法になります。

重量も増し、質感がよりグレードの高いものになります。
繊細なデザインを取り入れているにもかかわらず、堂々とした印象がある仏壇が多いのが特徴です。

非常に高級なお仏壇で使われる技法になります。

無垢

最もランクが高いとされますが、価格もその分だけ非常に高くなるため、あまり流通していません。
仮にこのランクが欲しいとなった場合は、オーダーメード的な受注生産になる事がほとんどかと思われます。

無垢とはその名の通り、無垢材をそのまま使用したものか、もしくは無垢材のみを貼り合わせた寄木を使用して作られたお仏壇の事を言います。

先述の厚板貼りなどのように、木材同士を貼り合わせるのではなく、高級木材そのままを使います。
そもそも材料として多くの木材が必要で非常に高級でもあり高価になるにも関わらず、割れや狂いが発生しやすくなるため、注意が必要です。

お仏壇の加工や質などのまとめ

これらの工法は、基本的に唐木仏壇の品質表示として使われています。
ただ、最近では、モダン仏壇、家具調仏壇といったような、今の主流になりつつある「家具と変わりない見た目」のお仏壇も登場しています。

そうは言っても、モダン仏壇、家具調仏壇の場合でも基本は同じです。
ただ、モダン仏壇の場合は、正面表面材(大戸軸)が無く、その表記がなく、下記のようになる事が一般的です。

正面表面材(台輪)○○
正面表面材(戸板)○○
主芯材○○
扉芯材○○

実際には、上記のような表に、表面仕上げの方法(ウレタン仕上、漆仕上など)や原産国(日本、中国、ベトナムなど)の記載もあることがほとんどです。

お仏壇の加工方法には様々なものがありますが、手間をかけるほど見た目も重厚になり、耐久性も高くなることが分かります。

現状のランクとしては、上から順に

  1. 総無垢
  2. 四方厚板貼り
  3. 三方厚板貼り
  4. 二方厚板貼り
  5. 厚板貼り
  6. 薄板貼り
  7. 調プリント・調着色系

となっていますが、当然左に行けばいくほど、品質は良いとされますが、その分価格も高くなります。
また、最近では技術改良なども進み、特に調プリントなどは改良に改良が進められ、今では板貼りと質的にも変わらないものも存在するほどになりました。

昔であれば、お仏壇を選ぶ時は「家一軒を選ぶのと同じ気持ちで臨め」と言われていたこともありました。
実際、しっかりした造りの仏壇は、一般的な家以上の寿命を持つものも少なくありません。

とはいえ、いまどきはお仏壇にそこまでの金額をかける人は稀です。
格安仏壇や小型仏壇などの登場やライフスタイルの変化などもあり、人によって様々ですから、あまり周りに影響されずに自分でしっかりと考えて選ぶようにしましょう。

お仏壇はご先祖様がお休みになる大切な場所ですから、一度持ったら大切にできるよう、できる限り吟味して選ぶという心持ちだけはしておきましょう。

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  • 公開日:2018.04.19
  • 更新日:2018.09.13

カテゴリ:仏壇

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