日本の夏の風物詩とも言えるお盆の提灯。
お仏壇と合わせるお盆の仏具「提灯」の選び方や注意点

  • 2019.07.18
  • 2020.04.06

仏具 仏事などの解説

お盆の時期、日本の軒下・縁側・お仏壇前などで見かけるのが「提灯」です。
提灯に関する文化は、日本で独特の進化を遂げてきましたが、盆提灯の習慣は特に日本的なものの一つとして数えられるでしょう。

日本では古来より、ご先祖様の霊を家に招き入れるため、提灯を灯す習慣が続いてきました。
住宅事情に配慮した提灯なども用意されており、現代にも通ずる習慣と言えそうです。

今回は、そんな盆提灯の選び方・注意点についてご紹介します。

お盆の際に用意する提灯の種類

お盆と言えば提灯と言えるほど、お盆前になれば至る所で提灯の販売が見られます。

しかしながら、実はそんな提灯も一言で提灯と表すには難しいほどに、小型から大型、さらには模様や柄などと様々な種類が存在しています。

まずは、一般的にお盆の際に準備するとされる、提灯の種類について、紹介していきたいと思います。
その家の状況により、提灯やそれに類する仏具の選び方には違いがありますから、その点にだけは注意が必要です。

毎年飾るタイプの盆提灯

一般的にイメージする盆提灯は、毎年飾るタイプの美しい模様・絵などが描かれた、きらびやかなものだと思われます。
ご先祖様や自宅を訪れる精霊たちを明るく迎え入れるためのものなので、全体的にデザインは涼しげながらも美しい絵柄が書き込まれています。

デザインの自由度は高く、お仏壇・天井などに吊り下げるものもあれば、お仏壇のそばに置くタイプのものもあります。
どちらを選ぶかは、仏間やお仏壇を置いているスペースによっても変わってくるでしょう。

また、置き型を選んだ場合、明かりを灯すと絵柄が回って見えるタイプのものもあります。
家族・親類がたくさん集まるなら、そのようなタイプを選ぶと喜ばれるかもしれません。

初盆の場合は白提灯を用意する

その家で「人が亡くなってから初めて迎えるお盆」のことを、初盆と呼びます。
厳密には、四十九日を過ぎた後、初めての年に迎えるお盆です。

この場合は、一般的なお盆とは違い、白提灯と呼ばれる特殊な提灯を用意する必要があります。
後述しますが、細かく分けると種類が色々あるため、迷わず選びたいなら、仏壇店などで「白提灯」と銘打たれているものを選ぶのがよいでしょう。

最終的に白提灯は燃やしてしまうため、あまりに贅をつくしたものを選んでも、人によっては損に感じられるものと思います。
マンションなどでは配置に困る場合もありますから、無理のない値段・大きさを選びましょう。

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灯籠(とうろう)を選ぶ場合もある

地域・宗派によっては、灯籠を提灯の代わりに選ぶ場合もあります。
灯籠と聞くと、庭などの飾りつけに用いるイメージですが、お仏壇に飾る仏具としての灯籠も、専門店・通販などで売られています。

中に明かりを灯すのは提灯と同様で、単純にデザインが違う形です。
神道の神棚・御霊舎などであれば、木造りでできたデザインの灯籠も見つかります。

個人の嗜好で選ぶ場合、特にこれといった正解はありませんが、宗派で明確に決まっているようであれば、菩提寺に確認することをおすすめします。
多くの場合、浄土真宗系の宗派で灯籠を飾るケースが多くなっています。

基本的な盆提灯の選び方や注意点

毎年飾る盆提灯については、ホームセンター・専門店問わず、お盆のシーズンになれば至る所で見つかります。
しかし、初めて選ぶ場合は、数ある中から自宅に置きやすいものを探すのも一苦労です。

そこで、基本的な盆提灯の選び方・注意点について、以下にご紹介します。

原則として、宗派による違いはないものと考える

お盆用の盆提灯については、原則として宗派による違いはありません。
デザインによる違いで、いくつかのパターンに分かれてはいますが、宗派ごとに規格があるわけではないため、その点は安心してよいでしょう。

違いの主な点は形状で、お仏壇に飾るのか、お仏壇の周りに飾るのか、外にも飾れるような大きさなのかなど、いくつかに分かれます。
ただ、多くの場合は仏間に飾ること、お仏壇の近くに飾ることを想定しているため、大きさもそれを見越したサイズ感である程度まとまっています。

宗派による違いなどが存在する想定シーンとしては、紋などを取り扱う場合です。
その場合は、宗派の紋が入った盆提灯を選ぶ必要がありますので、確認しておきましょう。

お仏壇のサイズに合わせて吊るすのか、それとも置くのか

盆提灯の形状を大きく分けると、吊るすタイプ(吊り提灯)と床に置くタイプ(置き提灯)に分かれます。
吊り提灯、置き提灯それぞれにつき、形状によって呼び名が分かれています。

以下に、それぞれのタイプ別に、具体的な特徴を解説していきます。

吊り提灯

吊るしたときに「つぼ」のような形をしているものを「御所提灯(ごしょちょうちん)」と呼び、和室の鴨居・縁側・軒先・お仏壇の両脇などにかけて飾ります。

美濃和紙を使って作られた岐阜提灯(ぎふちょうちん)が特に有名ですが、岐阜提灯と御所提灯は必ずしも同じものを指しているわけではありませんから、その点に注意が必要です。

これに対して、やや丸形・横長になっているものを「御殿丸提灯(ごてんまるちょうちん)」と呼び、こちらもお仏壇の両側に吊り下げます。
提灯部分の下輪・提灯上部それぞれに、房がついているのが特徴です。

また、九州・中国地方や関東地方の一部地域で用いられるものに円筒型の提灯を使う地域もあり、これは「住吉提灯(すみよしちょうちん)」と呼ばれます。
博多の住吉町で使われ始めたのが始まりと言われており、提灯部分が縦に長い特徴を持っています。

玄関など、家の外に吊るすことを最初から想定した提灯もあり、このような提灯は「門提灯(かどちょうちん)」と呼ばれます。
玄関先・縁側に飾り、白を基調としたデザインから白提灯と混同されることもあります。

門提灯は、主にその家の家紋が描かれており、由緒ある家では特注して飾ります。
その他、地方によっては戒名が入る提灯もあります。

置き提灯

吊り提灯と比較すると配置が楽であるため、地域を問わず用いられています。
特にお仏壇のサイズが上置きや小型など小さい場合、そもそも吊す事ができないためこの置き提灯が選ばれる事が多くなります。

代表的なものに「大内行灯(おおうちあんどん)」や「回転行灯(かいてんあんどん)」があり、棚の上に飾れる小さな「霊前灯(れいぜんとう)」もあります。

置き提灯としてスタンダードなデザインなのが大内行灯で、床置きを想定していることからどっしりとした佇まいです。

盆提灯の中で最も売れている・使われているデザインの一つで、三本足の上に火袋(灯した火を覆い守る部分)があり、上部に上から柱部分を支えるための、「雲手」と呼ばれる雲のような形をしたパーツが付いたものを言います。

この形を基調として、火袋の中にある回転筒の絵柄が回るものを、一般的に回転行灯と呼びます。
明かりを灯したときは美しいですが、素材は比較的安価なもので構成されており、そこまで高値ではありません。

霊前灯は、小さいながらも存在感を感じさせるデザインのものが多く、こちらも光が回転する造りになっているものを見かけます。
蓮の花の形状をしているもの、光の中で泡が上がる幻想的なもの、提灯を主体として周囲に花を生けたようなデザインのものなど、実に様々です。

普段飾っていても美しいため、通年飾ることを想定するなら、霊前灯という選択肢も全く問題ありません。
ロウソク型のものもあり、デザインの自由度が高いのも特徴です。

提灯を飾る時は、対で飾るのが基本

吊り提灯にせよ置き提灯にせよ、飾る場合は対で飾るのが基本になります。
個数で言えば、同じものを「2つ」用意する計算で考える必要があります。

また、盆提灯については「故人が周囲の方々から慕われている」ことを示すものと考える地域もあり、その場合は多ければ多いほど良いものと考えられています。

よって初盆の際、親戚などがその家に盆提灯を送るところもあります。
ただし、これは住宅環境においては難しい場合もあり、手狭なケースでは1対・1つだけでも問題ありません。

そのような場合、高価な盆提灯を用意するとよいでしょう。

初盆に使う白提灯の選び方や注意点

白提灯は、最終的に燃やしてしまうため、高い素材・デザインのものを無理して購入することはありません。
極端に高価なものは必要ありませんから、吊るせる大きさで簡素なものを選ぶのが基本です。

無難なのは「新盆・初盆用白提灯」と紹介されているもの

白提灯を購入する際にチェックしておきたいのは、単純にその提灯が白い色をしているかどうかだけではありません。
中には白地に模様・絵などが描かれているものもあり、それは盆提灯として売られているというケースも珍しくないのです。

中には、キュウリの馬・ナスの牛が描かれていて、完全に初盆用の提灯であることをアピールしているデザインも見られます。
その他一般的なのは、白紋天提灯と呼ばれる文様が入っているもので、紛らわしいですがこちらは白提灯という扱いです。

確実に見分ける方法としては、売り場で「新盆・初盆用白提灯」などという記載があるものを選ぶのが無難です。

白提灯は玄関・縁側に下げる

白提灯は、玄関や縁側など、外に面したところに吊るすのが基本です。
マンションなど、玄関に飾るのが難しい場合は、バルコニーなどを考えておくとよいでしょう。

これは、ご先祖様の霊が道に迷わず自宅に辿り着くために行う風習です。
よって、本来ならば火を灯すのですが、火事の危険があるため無理に火を灯す必要はありません。

白色でも、家紋入り盆提灯は意味が違う

白色の提灯には、初盆用の提灯以外で別の種類もあります。
先程も紹介した「門提灯」もその一つで、白地に家紋や戒名をデザインするため、一見すると紛らわしい印象を与えます。

しかし、そもそも門提灯はオーダーメイドが必要な提灯であり、原則として初盆用に燃やすことを想定したものではありません。
仮に初盆用に利用したとしても、間違いというわけではありませんが、コストが高くつきます。

どこかの家の初盆に参列する場合で、もしも盆提灯を燃やすのを手伝うようなことがあれば、誤って燃やさないように注意しましょう。

灯籠やその他の提灯を選ぶ場合の注意点

盆提灯以外で、提灯同様の目的で用いられるものには、浄土真宗などで使う灯籠や、どの家に置いていても問題ないインテリア提灯などがあります。
提灯とはやや勝手が違うものもありますが、考え方は基本的に同じです。

浄土真宗では「切龍灯籠(きりことうろう)」を飾るところも

浄土真宗系の宗派においては、盆提灯の代わりに灯籠を使うところもあります。
切龍灯籠とも呼ばれ、お東・お西それぞれで、厳密にはデザインが別れていますのでよく見て選びましょう。

龍の形をかたどった枠の四方に、細かく切った紙・きれなどの飾りを下げた灯籠のことで、和紙で作られているものをよく見かけます。

お東とお西の違いは上部で、お東の灯籠は明かりの部分が赤い◇の形で覆われており、逆にお西は白地で明かりが透けるように見えます。

金造りの吊灯籠もありますが、こちらはお盆に限った話のものではなく、一般的に金仏壇用に売られているものが多いようです。

インテリア提灯は、お盆に限らず提灯として利用できる

今回紹介してきたいずれのデザインにも属さない提灯もあり、それらは「インテリア提灯」などと呼ばれています。
これらは、特段お盆に限らず提灯として普段から利用できるため、置き場所や時期を問わず明かりを点けて差し支えありません。

スタンド型の筒型提灯や、江戸時代の行燈をイメージしたものなど、デザインは幅広いものです。
少し凝ったものであれば、ラタン・竹材などを使ったデザインのものもあり、お部屋の照明として使えるレベルの提灯が見つかります。

盆提灯以外の用途も想定するのであれば、あえて一般的なデザインを外して選ぶのも一つの方法です。

どの提灯でも、可能であれば電気・LED対応のものを選ぶ

全ての提灯・灯籠に共通する注意点ですが、提灯の明かりにロウソクを使うことは、避けるようにしたいところです。
ロウソクの火は、提灯自体が不安定なこともあり、ちょっとしたことで火事になってしまうおそれがあります。

できる限り、提灯・灯籠の明かりは電気・LEDを利用するようにして、火事のリスクを減らすよう心がけましょう。
初盆の白提灯については、無理して明かりを点ける必要はありませんから、火事を防ぐため飾るだけにしておくのが賢明です。

おわりに

お盆の提灯は、ご先祖様を自宅にお迎えする目的で用意するため、仏具として必要なものではあります。
しかし、宗派ごとに明確な決まりを設けているわけではありませんし、各家庭の住宅事情もそれぞれですから、身の丈に合ったものを選べば問題ありません。

初盆用の白提灯として、似たような色・形をした提灯も一緒にお店で売られているため、間違えないよう注意が必要です。
また、明かりには極力火を使わないものを選び、火事を未然に防ぐことを意識しましょう。

一部宗派で使うもの、そもそもお盆以外でも使う目的で購入するものなど、提灯・灯籠などの種類は様々です。
自宅の宗派・スペース・お仏壇のデザインなどを考慮して、雰囲気に合ったものを選ぶようにしてくださいね。

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  • 公開日:2019.07.18
  • 更新日:2020.04.06

カテゴリ:仏具, 仏事などの解説

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