賃貸マンションの仏壇の置き場所はどこがおすすめ?
置く仏壇のサイズや場所と、線香の匂いや対策を解説

実家の仏壇を引き取ることになった、あるいは初めて仏壇を用意することになった。
そんなとき、和室も仏間もない賃貸マンションのどこに置き場所を取ればいいのか、迷う方も少なくありません。
壁に穴を開けてよいのか、線香の匂いが隣に漏れないか、退去のときに何か言われないか。仏壇そのものの知識とは別のところで、賃貸ならではの引っかかりが次々に出てきます。
ここでは置けるかどうか、そもそも賃貸でも置いて良いのかという結論から始めて、置き場所の決め方、サイズ、退去時のこと、線香の匂いという順に、国や消防が公開している資料をもとに具体的に解説していきたいと思います。
賃貸マンションに仏壇を置いても問題はありません

結論から書いておくと、賃貸マンションに仏壇を置くこと自体に問題はありません。
仏壇は家具と同じように運び入れられるものです。
国土交通省の賃貸住宅標準契約書でも、貸主の書面による承諾が必要とされているのは増築や改築、模様替えといった住まいに手を加える行為で、室内に家具を置くことは含まれていないのです。
賃貸の契約書で禁じられているのはどんな物か
国土交通省が公開している賃貸住宅標準契約書は、貸主と借主が結ぶ契約の雛形として広く使われています。
その別表第1「禁止又は制限される行為」で火に関わるのは、銃砲や刀剣類、爆発性や発火性を有する危険な物品等を製造または保管することという一項目で、線香やろうそくはここに当たりません。
ただ、同じ別表には、大型の金庫その他の重量の大きな物品等を搬入したり備え付けたりすること、という項目もあります。
台や棚の上に載せる上置きの仏壇であれば気にする必要はありませんが、台付きの大きな仏壇を運び入れる場合は、この項目があることだけ頭に置いておきましょう。
参考)国土交通省「賃貸住宅標準契約書」
しかしながら、雛形はあくまで雛形です。
実際の契約書は物件ごとに文言が違うため、手元の契約書の禁止事項の欄に火気の記載がないかどうかだけ、確かめておきます。
大家さんや管理会社に相談したほうがよい場面
置くだけであれば、わざわざ相談する必要はありません。
相談したほうがよいのは、壁にネジを打つ、棚を取り付けるなど、住まいそのものに手を加える場合に限られます。
壁に触れずに設置する方法については、記事の後半で改めて解説します。
分譲マンションでも壁は自由ではありません
賃貸だから不自由なのかというと、そういうわけでもありません。
国土交通省のマンション標準管理規約(単棟型)では、専有部分を区切る天井、床、壁のうち躯体部分は共用部分として扱われていて、分譲マンションでも壁の構造そのものに手を入れることは想定されていないのです。
賃貸は契約書と原状回復義務、分譲は管理規約と拠りどころは違いますが、壁の奥まで踏み込まないという点ではどちらも同じです。
間取りが選べない賃貸で、仏壇の置き場所をどう決めるか

ワンルームや1Kでは、寝室とリビングが同じ部屋になります。
どの部屋に置くかを比べるという話が、そもそも成り立ちません。
選ぶのは部屋ではなく、壁面と家具の上
賃貸で置き場所を決めるときは、部屋ではなく壁面から探していきます。
家具で埋まっていない壁が1面でも空いていれば、その前に置ける台や棚があるかどうかを見る、という順序になります。
優先するのは、毎日無理なく手を合わせられる位置かどうかです。
扉の開閉がぶつかる場所や、洗濯物を干す動線の上は、お参りそのものが億劫になりやすいため外しておきます。
置く部屋の選び方や、直射日光と湿気を避けるといった基本は、下記の記事で詳しく解説しています。
- お仏壇を置く部屋や場所とお仏壇の向きや方角などの注意点
- お仏壇をこれから買おうと考えている方にとって、悩ましいポイントはいくつもありますが、その1つが買った後どの部屋に、どう向いて配置すれば良いの …
エアコンの風と、火災警報器の位置を避ける
賃貸で具体的に外しておきたいのは、エアコンの吹き出し口の下と、天井に付いている住宅用火災警報器(火災報知器と呼ばれることもあります)の真下です。
また、蒲郡市消防本部では仏壇の火災対策として、扇風機やエアコンなどの機器の風が当たらないようにすることを挙げていました。置き場所を決める段階で風の通り道を外しておけば、あとから家具ごと動かす手間もかかりません。
総務省消防庁は住宅用火災警報器の取付けについて、天井に設置する場合は壁またははりから0.6m以上、空気の吹き出し口からは1.5m以上離すという基準を示しています。
風が直接当たる場所や、天井で空気の流れが乱れる場所は、煙の動きが読みにくいため設計上も避けられているわけです。
線香の煙も、部屋の空気と同じ流れに乗ります。
香炉が警報器の真下に来ない位置を選んでおけば、そのぶん心配の種がひとつ減ります。
方角が決められないときにどうするか
置ける壁面が1面か2面しかない部屋では、方角から決めようとすると置き場所そのものが無くなってしまいます。
優先順位は手を合わせやすさが先で、方角は後だと考えて構いません。
仏壇の向きには南面北座説や西方浄土説といった複数の考え方がありますが、互いに矛盾する部分があり、必ずこうしなければならないという決まりは実質ないのです。
ただ、間取りの段階で避けておかなければならないことが、ひとつだけあります。
それが、神棚と仏壇を向かい合わせにしない配置ですが、これは壁面を選ぶ時点であれば調整が利きます。
仏壇の重さで床が抜けないか
台付きの大きな仏壇を運び入れるとなると、気にかかるのが床の強さです。
先に答えを書いておくと、一般的な家庭用の仏壇で床が抜ける心配は、まずしなくて大丈夫です。
建築基準法施行令第85条は、住宅の居室について、床の構造計算をする場合の積載荷重を1,800N/㎡と定めています。1㎡あたりおよそ180kg、大人が3人ぶん立っても支えられる重さを見込んで、住宅の床は設計されているのです。
ただし、これは床全体にならしたときの目安であって、一点に何kgまで置いてよいかを示した数字ではありません。
それでも、仏壇1台でその余裕を使い切ってしまうようなことにはなりません。
なお、床が抜けることと、畳やフローリングがへこむことは別の話になります。
置ける仏壇のサイズと、仏壇を載せる台の考え方

賃貸に置けるかどうかは、仏壇のサイズを測れば答えが出ます。
ただ、測り方にひとつだけコツがあります。
置き場所は本体の幅×1.5で測る
置き場所を測るときは、仏壇本体の幅ではなく、本体の幅×1.5を目安にメジャーで測ります。仏壇のサイズ表記は基本的に扉を閉じた状態のもので、扉は左右に開くため、実際には表記の1.5倍ほどの幅を使うことになるのです。
たとえば幅45cmの上置き仏壇であれば、扉を開いた状態では約67cmの幅を取ります。壁や隣の家具までの左右の空きが67cm前後あるかどうかを、先に確かめておきましょう。
奥行きのほうも、仏具を並べる分と、前に座ってお参りできる余裕を見ておきます。
号数表記の読み方やサイズの種類は、下記にまとめています。
- お仏壇のサイズについて。サイズの種類や表記と選び方と正しい見方
- お仏壇を置く場所を決める際に、最も重要になってくるのが、置く場所にしっかりおさまるかどうかです。 これには、お仏壇のサイズがそもそも置く場所 …
手持ちの家具の上に置くときに確かめること
新しく台を買わずに、今使っている棚やチェストの上に置きたいという場合もあります。まず測っておきたいのは天板の幅で、仏壇本体の幅を上回っているかどうかを見ます。
天板からはみ出す載せ方は、地震のときに真っ先に不安定になります。
先ほどの本体の幅×1.5は左右の空きを見るための数字で、台に求められるのは天板の広さのほうです。
また、仏壇を置く家具の耐荷重の表示も、あわせて確認しておきましょう。
耐荷重には公的な統一基準が見当たらず、メーカーが製品ごとに示している値しかないため、使う家具の説明書や商品ページの表示をそのつど確かめることになります。
仏壇の中心にお祀りするご本尊が、正座や椅子に座ったときに目線より上へ来るかどうかも、あわせて見ておきたいところです。
賃貸で選びやすい仏壇の種類
賃貸の限られたスペースに収めやすいのは、台や棚の上に置く上置き型の仏壇です。
さらに小さいミニ仏壇や、扉のついた箱にご本尊を納める「厨子(ずし)」という形もあり、空いている幅に合わせて選べます。
収納の一段を使う方法もあります。
ただ、通気の悪い場所は木製の仏壇に向かないため、扉を開けて風を通せるかどうかで向き不向きが変わってきます。
置いてみて狭いと感じたら、より小さい形へ替えることもできます。
最初から完璧な置き方を決め切ろうとしなくて構いません。
壁に穴を開けずに、退去時も困らない設置にする

退去のときに費用を請求されないか、という点は賃貸ならではの気がかりです。
ただ、どこまでが借主の負担になるのかは、国が示している考え方でほぼはっきりしています。
借主の負担になるのは、どんな穴か
国土交通省の原状回復をめぐるトラブルとガイドライン(再改訂版・平成23年8月)は、退去時の費用をどちらが負担するかの整理を示しています。
壁にできた穴の扱いは、別表で次のように分かれます。
| 壁にできた穴 | 費用を負担する側 |
|---|---|
| 画鋲、ピン等の穴(下地ボードの張替えが不要な程度のもの) | 貸主 |
| くぎ穴、ネジ穴(重量物をかけるためにあけたもので、下地ボードの張替えが必要な程度のもの) | 借主 |
掛け軸を留めるピン程度と、仏壇や棚を固定するためのネジでは扱いが変わるということです。壁に打つ前に、そのネジが本当に必要かどうかを一度考えてみましょう。
東京都住宅政策本部も原状回復について、借主の故意や過失、善管注意義務違反(借りたものを普通に大切に扱う義務を怠ること)など、借主の責任によって生じた損耗やキズ等を復旧することだと説明しています。
普通に暮らしていて生じるものまで借主が直す仕組みではない、という前提をまず押さえておきます。
仏壇を置いた床のへこみは借主の負担ではありません
同じ別表で、家具の設置による床やカーペットのへこみ、設置跡は貸主の負担と整理されています。仏壇や仏壇台を置いたことで畳やフローリングが多少へこんだとしても、そのために費用を求められる筋のものではありません。
日照など自然現象によるクロスや畳の変色も、同じく貸主の負担側に置かれています。毎日の暮らしで当たり前に起きることまで、借主が背負う仕組みにはなっていないのです。
ネジを使わずに転倒対策をする
壁にネジを打てないから地震対策は諦めるしかない、ということにはなりません。
東京消防庁は、ポール式(つっぱり式)の器具とストッパー式の器具を組み合わせて使うと、L型金具と同等の高い効果が得られると公表しています。
参考)東京消防庁「地震に備える〜家具類の転倒・落下・移動防止対策〜」
家具の上に仏壇を載せる置き方では、備えが二段構えになります。
家具そのものを倒れないようにする対策と、天板の上で仏壇がずれないようにする工夫の両方が必要だということです。
器具それぞれの構造や選び方が気になる場合は、下記の記事をご覧ください。
- 仏壇仏具の地震対策。大切なものこそ転倒や壊れないための対策を
- 日本は地震大国であり、残念ながら毎年のようにどこかの都道府県で地震が起こっています。 2011年の東北、2016年の熊本、そして2018年に …
マンションで気をつけたい線香の匂いと火の扱い

線香の煙と火災警報器の位置関係
住宅用火災警報器のうち、消防法令で寝室や階段室に設置が義務づけられているのは、煙を感知するタイプです。
煙が警報器に入ると、音や音声で火災の発生を知らせます。
線香の煙で鳴るかどうかについては、住宅用火災警報器について公開されている消防庁や東京消防庁の資料に記載が見当たりません。
鳴る、鳴らないとなど言い切ることはできないため、配置と換気で無理をしないというのが良いかと思います。
取り付けの基準が風の通り道を避けているのは先に見たとおりで、香炉が警報器の真下に来ない配置にして、お参りのあとに空気を入れ替えておけば、そこまで神経質にならずに済みます。
警報器を設置する範囲は自治体で違います。
東京都のように、常時使う全ての部屋と台所、階段が対象になる地域もあるため、自分の部屋のどこに付いているかは一度見上げて確かめておきましょう。
隣の部屋や共用廊下に匂いは漏れるか
家庭で焚く線香の匂いは、法律で規制される対象ではありません。
「匂いが漏れて苦情になったら」と身構えてしまうこともありますが、取り締まりを心配するような筋の話ではないのです。
悪臭防止法が規制しているのは、規制地域内の工場や事業場の事業活動に伴って発生する悪臭です。
一般家庭からの臭気は、この規制の対象には入っていません。
しかしながら、そのうえで同じ法律には、住まいが集まった地域では日常生活に伴う臭いで近隣の生活環境を損なわないように努める、という一般的な心がけも書かれています。できることは、空気の流れを止めないことに尽きます。
建築基準法のシックハウス対策として、2003年7月以降に着工された建物には機械換気設備(24時間換気)の設置が義務づけられています。
付いているなら、スイッチを切らずに回しておきましょう。
同じ年の6月以前に着工された建物には、この決まりは適用されていません。
付いていない場合も、お参りのあとに少し窓を開けるだけで、部屋に匂いがこもる時間はずいぶん短くなります。
香炉の真上あたりの壁を時々拭いておくと、汚れが溜まる不安も小さくなるはずです。
火を使わない線香やろうそくという選び方
近年はマンション向けに、火を使わないタイプも増えてきました。
「電子線香」と呼ばれるものや、電池式やLEDのろうそくがそれにあたります。
火を使わなければ、燃えかすが落ちることも、消し忘れを気にすることも火事の心配もなくなります。出かける前や眠る前に慌てて確認しなくてよくなる点は、仮にひとり暮らしだったりする場合は実用的な安心につながります。
とはいえ、火を灯して手を合わせる時間を大切にしたい方もいらっしゃいます。
普段は火を使わないタイプにして、月命日やお盆にはろうそくと線香を灯すという使い分けも、自然な形のひとつです。
火を扱ううえでの備え
火を使う場合も、備え方そのものは難しくありません。
先ほどの蒲郡市消防本部の資料では、LEDのろうそくや線香を使うこと、仏壇周りの座布団や敷物に防炎品を使うことも挙げられています。
防炎の敷物を一枚敷いておくだけでも、備えとしては形になります。
賃貸で火を扱うことに引け目を感じる必要はありません。
万一のときのために、入居時に契約した火災保険の中身も一度見ておきましょう。
借家人賠償責任保険(借りている部屋を壊してしまったときに、大家さんへの賠償を補償する保険)が付いているかどうか、補償内容を確かめておくと落ち着いていられます。
引っ越しが多い場合と、どうしても置けない場合

引っ越しのたびに供養が必要になるのか
転勤の多い暮らしだと、引っ越しのたびに何か儀式が要るのかが気になるかもしれません。実際、別の家へ仏壇を移すときは、まずは一度「閉眼供養(魂抜き)」を行い、引っ越し先で「開眼供養(魂入れ)」を行うのが原則です。
一方、同じ家の中で置き場所を変えるだけであれば、こうした供養は必要ないとされています。模様替えのたびにお寺へ連絡することにはなりません。
ただ、この考え方は宗派や地域、お寺によって変わってくる場合もありますので、菩提寺があるなら、一度尋ねてみるのがいちばん確実です。
魂抜きと魂入れの流れや、運ぶ時に気をつけたいことは、下記の記事で詳しく解説しています。
- お仏壇の移動 - 引越しや部屋内で移動させる時の注意点とやるべき事
- 一度設置したお仏壇は理想的な事を言えば、移動などせずそこに置いておくのが一番理想でもあり簡単です。 とはいえ、今の現代では色々な理由から、お …
仏壇を置くのが難しいときの選び方
ここまで読んでも、やはり置ける場所が見つからないという方もいらっしゃるかもしれません。そのときは位牌だけを祀る形や、遺骨や遺灰の一部を小さな器に納める「手元供養」という選び方もあります。
形よりも、手を合わせる時間が暮らしの中にあることのほうが大きな意味を持ちます。どの形を選んだとしても、供養として足りないということはありません。
位牌を仏壇以外の場所に祀る方法については、下記にまとめています。
- 位牌の安置場所・置き方 - 仏壇を買わない、処分後に位牌を好きな場所に祀っても大丈夫?
- 位牌と言えば、お仏壇に安置することが長らく当たり前の時代が続いていました。 しかし、価値観の多様化によって、お仏壇の形状も変わり、現代では位 …
まとめ
賃貸マンションに仏壇を置くこと自体に、契約上の問題はありません。
置き場所は部屋ではなく壁面と家具の上から選び、エアコンの風と火災警報器の真下を外しておけば、迷いはだいぶ減ります。
壁にネジを打たなくても、器具を組み合わせれば転倒への備えはできます。
仏壇や仏壇台を置いた床のへこみは貸主の負担側に整理されているので、退去のときに身構える必要もありません。
線香の匂いも香炉の位置と換気で整えられますし、火を使わない線香やろうそくという選択肢もあります。
住まいの条件に合わせて置き方を工夫することは、簡略化でも妥協でもないのです。
手を合わせる場所が暮らしの中にあること、それ自体がいちばんの供養になります。
無理のない置き方から、ゆっくり始めてまいりましょう。





